「忍びの国」 2017年 日本

監督 中村義洋
出演 大野智 / 石原さとみ / 鈴木亮平
知念侑李 / マキタスポーツ / でんでん
満島真之介 / きたろう / 少路勇介
上田耕一 / 平祐奈 / 北畠凛
立川談春 / 國村隼 / 伊勢谷友介
ストーリー
時は戦国、破竹の勢いで天下統一に突き進む織田信長。
次男の信雄(知念侑李)も伊勢国を掌握し、その隣国・伊賀に次なる狙いを定めていた。
しかし、そこに住んでいたのは人を人とも思わぬ人でなしの忍者衆。
中でも無門(大野智)という男は、伊賀一の凄腕にして、どこまでも非情な忍びだった。
ところが普段は無類の怠け者で、女房のお国(石原さとみ)にはまるで頭が上がらず、尻に敷かれる毎日を送っていた。
北畠信雄は家臣の長野左京亮(マキタスポーツ)、日置大膳(伊勢谷友介)と共に義父で元伊勢国司の北畠具教(國村隼)を討った。
同じ頃、伊賀国では国人の百地三太夫(立川談春)と下山甲斐(でんでん)の小競り合いの最中であり、絶人の忍びと謳われる無門が甲斐の次男である次郎兵衛(満島真之介)を討ち果たしていた。
伊勢を落とした織田家と境を接することとなった伊賀は評定の末に織田家の軍門に下ることを決め、その決定を信雄に伝える使者として下山甲斐の長男平兵衛(鈴木亮平)が選ばれた。
身内の死にさえ冷淡な伊賀の気質に疑問を抱いた平兵衛は織田軍に寝返り、彼らを伊賀へと手引きして信雄に伊賀攻めを進言する。
信雄は伊賀攻めを決め、手がかりとして伊賀の丸山城の築城を提案し、そこに兵を置き伊賀を滅ぼす策略だった。
信雄が抱える最大の戦力である大膳は旧主である具教を弑した事で信雄との間に遺恨があり参戦を拒む。
平兵衛は銭に目がなく情のない伊賀者の習性を利用し、織田方が供出した大金に三太夫たちが飛びつくと思っていた。
計画通り織田方の資金で城が出来たが、織田方の策略を見抜いた三太夫は城を焼き払い織田方に痛撃を与えた。
そのため織田方が攻めてくることになったが、自衛のための戦なので銭は出ないということに下人たちは反発し、半数が逃散すると決めた。
不参戦を決め込んでいた大膳は信雄と和解し参戦に転じた。
1万余の軍勢での伊賀攻めが始まり、数の上でも装備の上でも劣るうえに大膳の剛勇も加わり、伊賀者は劣勢に立たされる。
そのころ他の下人と一緒に伊賀を出ようとしていた無門はお国に意見され、ひょんなことで入手した北畠家の家宝の茶入「小茄子」を元手に「雑兵首には十文、兜首には十貫、信雄が首には五千貫を払う」と逃亡中の下人たちに伝えて形勢逆転をはかった。
銭が出るとわかった下人たちの勢いはすさまじく、なりふり構わない戦いぶりに織田軍は総崩れとなり伊勢へと敗走した。
田丸城に侵入して信雄を討とうとした無門だったが、平兵衛に阻まれる。
「川」という伊賀の決闘手段で平兵衛を倒したが、決闘の前に平兵衛が語った話で十二家評定衆への怒りを募らせていた無門は、信雄のことはいったん置いて伊賀に取って返した。
そして十二家評定衆を糾弾し刃を向けた。
無門は下人たちに囲まれたが、その時お国が無門をかばって命を落とし、自らの愚かさに気づいた無門は伊賀から姿を消した。
三太夫の思惑通り、天下の織田軍に勝利したということで下人の雇い口は増え価値も高騰した。
だがそれも長くは続かず、2年後織田信長は4万の軍勢で伊賀に攻め寄せ、伊賀の国は壊滅した。
寸評
物語は第一次天正伊賀の乱を背景としている。
北畠家の養子となっていた織田信長の次男織田信雄は、天正4年(1576年)に北畠具教ら北畠一族を三瀬の変で暗殺し伊勢国を掌握した。
信雄は伊賀国の郷士の日奈知城主・下山平兵衛から伊賀国への手引きを申し出られ、北畠具教が隠居城として築城した丸山城の修築を命じた。
これを知った伊賀衆は不意を突いて総攻撃を開始し丸山城を落城させた。
信雄は信長に相談もせず独断で伊賀国に3方から侵攻したが大敗を喫して伊勢国に敗走した。
敗戦したことを知った信長は激怒して信雄を大いに叱責したらしい。
やがて第二次天正伊賀の乱が起きて伊賀は信長の軍門に下る。
映画はこの事実を脚色しながら進んでいく。
中身は滑稽なので歴史絵巻としての重みはない。
アイドル映画なのかと思ってしまう。
無門とお国のラブストーリーでもあるのだが、大野智と石原さとみの関係が物足りない。
当初、大野智は石原さとみの尻にひかれて家にも入れてもらえない。
ところが、最後には大野智を助けるために石原さとみが死んでいく。
石原さとみの心の変化がなぜ起きたのかよく分からない。
女心と秋の空だったのか。
無門はねずみを育てることになるが、それはお国に教えられた愛の為だったのだろう。
伊賀者は全国に散って脈々と生き続けると大膳が言い、伊賀者の集団が一瞬現代人になる。
引き継がれたものは、金に目がなく自分さえよければ良いとする負の習性なのか、それとも無門が感じた愛なのか。
キネマ旬報の読者投票では2位にランクされていたが、僕はこの作品の良さが理解できなかった。