「エグザイル/絆」 2006年 香港
監督 ジョニー・トー
出演 アンソニー・ウォン フランシス・ン ニック・チョン
ラム・シュー ロイ・チョン ジョシー・ホー
リッチー・レン サイモン・ヤム ラム・カートン
エレン・チャン エディー・チョン ホイ・シウホン
ストーリー
中国返還間近のマカオ。
乳飲み子を抱えた妻が夫の帰りを待つとある家。
同じように4人の男が1人の男を待っていた。
2人は男を殺すために、2人は男を守るために。
かつて香港の組織にいたウーはボスのフェイを狙撃し逃亡していた。
そのウーの殺害をフェイから命じられたやってきたのが、ブレイズとファット。
一方、タイとキャットは、ウーを守るためにやってきた。
5人は一緒に育った間柄で強い絆で結ばれていたが、今は立場を変えていた。
ウーが帰って来て激しい銃撃戦が起こるが、彼等はウーの赤ん坊の泣き声を合図のように銃を下ろす。
それが、かつて幼友達だった彼等の絆だった。
その夜、男たちはウーの妻もまじえて夕餉を楽しむ。
そして、生後1カ月の赤ん坊も含めた7人で記念写真を撮った。
やがては命を落とす身で、殺される前に「妻子に金を遺したい」というウーの為に5人は仲介屋に出向き仕事を斡旋してもらう。
選んだのは、マカオノボス、キョンの殺害。
ブレイズは、この仕事で金を得たらカタをつけるとウーに伝える。
5人はキョンを呼び出したレストランに向かう。
しかし何の策略家、その場にブレイズたちのボス、フェイが現れた。
ウーがまだ生きていることを知り激昂するフェイがブレイズの胸に弾丸を撃ち込み銃撃戦が幕を開ける。
そして運命は思いもよらぬ方向へと男たちを導くのだった・・・。
寸評
若者でもない中高年でもないその間の男たちが見せるアンバランスな行為が不思議と引き付ける。
クールなギャングの姿を見せたかと思うと、子供のようなバカ騒ぎをやらかす。
彼等の世代あるいは年齢を感じさせて微妙なアクセントをもたらしていた。
そのような彼等の描き方に加えてスタイリッシュなカメラワークが不思議な雰囲気を醸し出す。
冒頭のモノローグは少し長いような気がしたが、食事場面に至るまでのその長さが彼等の絆の深さを描くアプローチになっていたのかもしれない。
あれだけの銃撃戦をやりながら誰も死なないのに疑問を持っていたし、警察がなぜ来ないのかの疑問もあったのだが、返還直前というマカオの時代背景があって、問題を起こしたくないという官憲の官僚的なことも描かれているので説得されたような気分。
官憲といえば金塊輸送車を襲った時の護衛官のクールさも彼等に通じるところがあって、妙にかっこよかった。
最後に女二人がどうやら金塊の分け前にありつけそうなのは、やたら強かった男どもに比べて、弱かった女が実はしたたかであり強い存在のようでもありエピローグとしてはまとまっていた。
全編に流れる音楽と音響の効果はこの映画の盛り上げに一役買っていた。
女子供を犠牲にしない武士道精神に充ちあふれた作品で、僕にとっての香港映画のイメージを一変させた。
劇終(The END)