Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

<雪・幼少時>祖母の記憶

2015-06-20 01:00:00 | 雪・幼少時


暗闇の中で、声が聞こえていた。

あれはまだ涙を流すことが出来ていた頃の、幼き自分の泣き声ー‥。




「うぁああん!うぁあああん!」



小さな雪は、声を上げて泣いていた。

しかし泣いているのは雪だけでなく、隣で更に小さな蓮が泣いている。

「雪!あんたがちゃんと見てないから、蓮が怪我しちまったじゃないか!」



膝を擦りむいた蓮を庇いながら、祖母は雪を責め立てた。

雪は嗚咽を漏らしながら、シクシクと涙を流している。

「雪お腹が痛かったの‥お腹痛いんだもん‥」



そう言ってメソメソと言い訳する雪に、祖母からきつい喝が飛ぶ。

「泣くんじゃない!悪い子め!何を偉そうに泣いてるんだい!」



その大きな声に、雪はビクッと身を竦める。

「ご‥ごめんなさい‥」「お義母さん、もう止めて下さいな」「まったくもう‥」



この頃の祖母は、雪に対して厳しかった。

けれどその厳しさを差し引いても、雪はこの祖母が大好きなのであった。


「あたしゃ老人会へ行ってくるよ」

「雪も行く!」



雪は、出て行こうとする祖母の後を追いかけて靴を履く。

「子供が来る所じゃないよ。老人会に行くんだよ。スーパーに行くんじゃないんだ」

「雪も行く!行くの!行くったら!」



迷惑そうにする祖母を押し切って、雪は祖母に付いて行った。

母はそんな娘を見て、不思議そうに一人呟く。

「あの子ったら‥さっきあれだけ叱られたのに、

どうしてあんなに付いて行きたがるのかしら?」









ゆっくりと歩く祖母の後ろを、雪は心底嬉しそうにしながら付いて行った。

ニコニコと自分を見上げる雪を見て、祖母は若干居心地の悪そうな表情を浮かべていた。



「まったく‥どうしてわざわざ老人会なんかについてくるのかね」



そう呟く祖母の隣を、雪はワクワクしながら歩くのだった。

おばあちゃんステキな靴履いてる。かっこいいなぁ!



叱られても、蓮の方が優遇されても、それでも雪はおばあちゃんのことが大好きだった。

あの頃は、夜寝る前に読む絵本だって、強いおばあちゃんが活躍する絵本だった。

 

それは絵本の中のスーパーおばあちゃんが、怖い虎から子供達を守るお話で、

最後、子供達を抱き締めるおばあちゃんの絵を見るたびに、雪も同じように抱っこされているような気になった。

 

絵本の中のおばあちゃんを眺めながら、雪は大好きな自分のおばあちゃんを思い出す。

どのおばあちゃんもみんな優しいなぁ。でもうちのおばあちゃんは、ゴムの靴なんて履かないんだよ。

ステキな靴を履いてるの。おしゃれなんだから!




雪は祖母のことが誇らしく、大好きだった。まるで自身の一部のように、祖母を大切に思っていた。

だから祖母と離れる時が、この世のどんなことより嫌だったのだ。



「それじゃそろそろアンタの兄さんのとこに行こうかね」

「あぁ、そうしようか」



祖母のことは、雪の父の家と雪の父の兄‥つまり雪の伯父の家で、代わる代わる面倒を見ていた。

そして今日は、雪の家から雪の伯父の家へと移動する日なのである。

祖母と父の会話を聞いてしまった雪は血相を変え、祖母の元に駆け寄る。

「行っちゃうの?!」



目を見開いてそう聞いてくる雪に、大人達は何も言えずに押し黙った。

しん‥。



雪は青い顔をしながら、強い力で祖母の手を握る。

「おばあちゃん行っちゃうの?!ねぇ!」



今にも泣きそうな雪。すると横に居た雪の母は穏やかな口調で、娘に優しい嘘を吐いた。

「ううん~おばあちゃんはスーパーに行くだけよ~」

「おばあちゃん、伯父ちゃんのところに行っちゃうんでしょ?」「違うぞ、ほら‥」



しかし大人達の言葉では雪を欺くことは出来ず、雪は祖母が居なくなることが嫌で、涙を溜めて歯を食い縛った。

そしてある作戦を思いついた雪は、玄関まで行くと祖母の靴を手に取ったのだった。



そしてそれを持って部屋に戻ると、ガチャンと音を立てて鍵を締める。



「うわあああああああ!!」



溜めに溜めた、雪の絶叫が響き渡った‥。

「おばあちゃん行かないでー!行っちゃダメー!うわあああ!」



父は「もう行かないと」と言って退室し、祖母は溜息を吐いた。

母は雪の部屋をノックしながら、優しい嘘を続ける。

「雪~おばあちゃんはスーパーでお菓子を買ってくるだけよ~。

靴隠したら行けなくなっちゃうでしょ~?」




その嘘に祖母も乗る。

「そうだよ。おばあちゃんとスーパーに行ってお菓子を買おうか」



母が言っても聞かなかった雪だが、祖母から直接そう言われると心が揺らいだ。

結果、部屋のドアは開き、そこから涙を流しながら靴を抱えた雪が出て来た。



「ほんと?」



母は笑顔で頷くと、雪の手から靴を取り上げる。

「うん、ほんとほんと」



見上げると、そこで祖母が笑っていた。

まったく‥と言いながら息を吐く祖母は、いつものおばあちゃんだ。雪の顔にパッと笑顔が浮かぶ。

 

「それじゃあみんなでスーパーに行こっか!」

「ねぇなんでおばあちゃん大きな鞄持ってるの?」

「お菓子をいっぱい買うためだよ」



祖母は雪達と共に、大きな鞄を持って外へ出た。

そして外で待っていた伯父の車に乗ると、笑顔で手を振ったのだった。



「うわあああん!おばーちゃーん!!」



雪は地面にひっくり返って泣いた。雪の父が手を焼き、母は笑ってそれを見ている。

祖母が伯父の家に行くときは、毎回一苦労だった‥。





季節が一つ流れ、再び祖母が雪の家にやって来た。

祖母はお菓子を食べる雪の頭を撫でてやっている。それに蓮が文句を言った。

「おばあちゃん!俺のお菓子は?!」

「お姉ちゃんが先に食べる日があってもいいじゃないか」



その光景を見ながら、雪の叔父に雪の母がこう説明する。

「あの靴の一件があってから、おばあちゃんてば雪に甘くなっちゃって‥」

「わはは!そりゃー面白いとこ見逃したなぁ」



家父長的な祖母が変わったことに、皆不思議な思いを抱きながらも、微笑ましく見守っていた。

雪は心から笑顔を浮かべ、甘い甘いお菓子を頬張る。



雪の胸の中にある、甘く温かな祖母との思い出。

しかしその記憶を辿れば辿るほど、だんだんと暗い影が落ちて行く‥。


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<雪・幼少時>祖母の記憶 でした。

小さな雪ちゃんかわいい‥ 

本当におばあちゃんのことが大好きだったんですね。

そして絵本の中のおばあちゃんの辺りで出てきた「ゴム靴」とは、

韓国独特の「コムシン」という靴らしいです。



お年寄りは大体これを履くのかな?気になりますね‥。


あとここで出てきた雪の叔父さん(雪のお父さんの弟)は↓



今はカフェをやってるこの人なんですね。



若い頃、結構イケイケですね 笑



次回は<雪・幼少時>冷たい手 です。


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