Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

影響ー受けるー

2015-06-16 01:00:00 | 雪3年3部(夜更けの治療~影響)


秋空の裾野が、橙色に染まる時刻。

雪は病院のベッドに横たわりながら、ぼんやりと天井を眺めていた。



白い壁と白い天井の境目が曖昧にぼやけ、意識まで曖昧になってしまいそうだ。

何やってんだろ私‥



雪は窓から見える夕焼け空を眺めながら、今の自分の状況を思った。

かなり退屈だわ‥。真っ昼間から寝たから、これ以上寝るのも疲れるし‥

携帯見るのも飽きたし‥


  

はぁ、と大きな息を吐く。もう何度目の溜息だろう。

時間がなかなか過ぎて行かない‥



普段忙しい毎日を送っている雪には、今の状況がこの上なく退屈に感じられた。

しかし頭の中とは裏腹に、身体は正直に反応する。

ううっ‥。それでもさっきよりはマシか‥

 

ストレス性胃腸炎。

雪は両指をお腹の上で組みながら、同じ痛みを味わった去年のことに思いを馳せた。

去年もそうだった。ストレスの絶頂‥とはまさにこのこと‥



そして脳裏には、今年に入ってから体験したあらゆることが浮かんでは消えて行く。



一難去ってまた一難‥まさにそんな言葉が相応しい一年だった。

そして昨年の初め頃、占い師に掛けられた言葉が脳裏をよぎる。

「男に気をつけなさい!この悪運は年を越すよ!」



五百円で占ってもらった運勢だったが、それは確かに当たっていた。

だから二年連続で倒れたのか‥



一体誰のせいなのか?

雪は思い当たる男性陣の顔を脳裏に浮かべ始めた。

‥先輩?河村氏?健太先輩?横山?蓮‥

隣のおじさん?遠藤さん?下着泥棒?




彼氏の顔から以前隣に住んでいた秀紀の顔まで、思い当たる人物は次々と浮かんだ。

途中「何やってるんだろう‥」と我にかえりつつ、溜息を吐いて結論をまとめる。

とにかく私が巻き込まれてるって意味でしょ‥迷信のせいじゃなく‥



様々な人を介して、あらゆる災難に巻き込まれ続けた一年だった。

そして雪の脳裏には、先程新たな災難の匂いを嗅ぎ取った出来事が浮かぶ。

そういえば倒れる前‥

明らかに河村氏が誰かを避けてるみたいだったけど‥あれ何だったんだろ?




誰かを見て血相を変えた亮に引き摺られ陰に隠れ、大きな手の平で口を塞がれた。

あれはどういうことだったのだろう。雪は一人思案に耽る。

どう考えても誰かに追われてたみたいだけど‥あの人、一体何やらかしたの?

いつも蓮と二人でコソコソしてるから私が知る由もないし‥。

大学に通ってるってことはピアノは弾いてるみたいだけど‥高卒認定試験の勉強は?ちゃんとしてるの?

てかあんな風に追われててすぐに病院を飛び出すって‥。あの人のプライベートってどういう感じなんだろ‥謎‥




モヤモヤと色々な考えが頭に浮かぶけれど、真実はまだ何一つ分からない。

雪は傍らに置いてあった携帯電話に手を伸ばす。



画面を見ていると、ふと先輩の声が聞きたくなった。

発信ボタンに指が伸びかけるが、彼の今の状況を思い出してそれを止める。

先輩は今会社で仕事してるよね‥すごく忙しいよね‥



そして彼の顔を思い浮かべると、今は傷だらけということも思い出した。

てかあの顔はどうするつもりなのか‥あれで出勤したんかい



高校時代からの因縁が元で、幼馴染と喧嘩した彼。けれど会社で正直にそれを言う訳にはいかないだろう。

インターンだから周りに調子合わせなきゃいけないだろうし‥お父さんの会社だから大丈夫なのか?



頭の中で、”会社の中の彼”を想像してみる。

けれどどんな風に働いているのか、どんな気持ちで日々を送っているのか、

どんな表情を浮かべているのかは、想像できなかった。浮かんで来るのは後ろ姿ばかりだ。



どんな仕事をしているんだろう。どんな人の下で働いているんだろう。

彼より優秀な人は居るのだろうか?そして彼の周りに、綺麗な人はいるのだろうか‥?



そう考えた時、先輩の近くに居るとびきりの美人のことが思い浮かんだ。

そういえば河村氏のお姉さん‥静香さんだっけか

あの人は資格の勉強するだけであの会社に入れるんだっけ。そして先輩と一緒に‥




いつか見た、先輩と静香が腕を組んでいる写メを思い出す。

自由奔放なあの調子で、静香は淳に接近中‥?



あああああああああ だっから何考えてんの私はーーーーっ!!



親密な二人を想像すると、予想以上にダメージが大きかった。

雪はくしゃくしゃと頭を掻きながら、以前静香から言われた言葉を思い起こす。

アンタ、あたしの弟とあたしの幼馴染み、

あの二人と上手くいってると思ってるみたいだけど、いつまでそうしていられると思ってるワケ?




てかアンタ達付き合ってどのくらいなのよ。長くて半年ってとこ?

それじゃああたしとはどのくらいの付き合いだと思う?




ハスキーな静香の声が、鼓膜の裏で再生される。

雪は夕焼け空を眺めながら、あの美しく獰猛な彼女の顔を思い出す。



身体の中がチクチクと痛み出す。

静香の言葉は、雪の身体にじわじわと痛みを広げていく。



雪は寝返りを打つと、お腹を抱えるような格好で寝転んだ。

頭の中に、去年静香に電話をしていた先輩の声が蘇る。「風邪引くなよ」と、まるで彼女に囁くような声で言っていた。

そりゃそうよ。私より遥かに長い付き合いでしょうよ。

知ってるって。河村氏と長い付き合いなのは言うまでもないし‥お姉さんだもん




静香は淳と亮、二人の歴史を知っている。

いや知っているだけではなく、彼らは三人で一緒に長い時間を共有して来たのだ。

アンタは、互いの何をどのくらい分かってるっていうの?

人と人との関係ってさぁ、浮き沈みはあるとしても、

長続きするのはマジ並大抵なことじゃないじゃん




アンタは、それを始めることすらしなかったじゃない



雪は携帯電話を置いて、ぼんやりと窓の外を眺めてみる。

長い間点滴を打っているお陰かよく眠れたお陰か、頭の中はいつもよりクリアだ。



夕暮れに輝く金色の陽が、紅葉の葉を橙に染める。

なんか‥ううん、



いつも‥すごく距離があるように感じてた



私はいつも彼らを遠巻きに眺めて‥それ以上の行動が出来なくて



結果的に‥どこへ動くことも出来ずに、ただ影響だけを受けている



陽の光を受けて染まる紅葉のように、雪は常に周りに影響されて来た。

だけどそれに抗う術はなく、それがどうしようもないことだということを知っている。

悔しいけど、河村氏のお姉さんの言う通りだ。私が彼らと同じ日々を過ごして来たわけじゃないし、

分かったような顔をして溶けこむことも出来ない。無理矢理割り込むなんて冗談じゃないし‥




私達は互いに経験して来たことが違う



脳裏に浮かぶのは、高校時代の自分。

そして、同じ時間を過ごして来たであろう三人の姿‥。



目を閉じると、目の前に深い溝があった。

その亀裂の向こうで、彼ら三人が笑い合っている。

彼らと私の人生の間にある狭間は、あまりに広い‥



彼らはこちらを振り向かずに、楽しそうに遠くへと歩いて行く。

そんな三人の背中を見つめながら、だんだんと意識が薄れて行く‥。


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<影響ー受けるー>でした。

今回の話は、本家版では「特別編」になってます。

進行するストーリーとは別に、登場人物の心情がそれぞれ描かれていますね。


自身が曖昧で、常に周りに影響され様々な災難に巻き込まれ‥。

2部35話のモノローグで、「曖昧な私」と自身を省みる雪ちゃんを思い出します。



この「自身が曖昧」という点は淳にも当てはまりますよね。

そして今まで自分の生き方を持っていた亮も、雪に出会って揺らいで来ている。

しかし静香はブレないので、曖昧な彼らはもれなく彼女に振り回されます^^;





次回は<影響ー与えるー>です。


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