
ようやく日が暮れ始め、街に明かりが灯り始めた。
穏やかな街並みとは裏腹に、痺れを切らした吉川は静香に向かって大声を上げる。
「なんでこんなに遅ぇんだよ!!!」

「おい!もっかい掛けてみろ!
お前変な小細工したんじゃねーだろうな?!」

吉川は静香が呼び出した”金持ちの友達”がなかなか現れないことに焦れていた。
静香はビクビクしながらもう一度携帯を確認する。
「し‥してないってば!携帯が壊れてておかしくて‥」

「ん?」

すると吉川は窓の下にそれらしき人物が立っているのに気が付いた。
静香に呼び掛けてみる。
「おい、あの女じゃねーか?」

「見てみろ」

そこには確かに雪の姿があった。
携帯を片手にキョロキョロと辺りを窺っている。
「そ‥そうです‥」

静香の返答を聞いた吉川はニヤリと笑う。
「中まで連れて来い。逃げられるわきゃねぇぞ、分かってるな?」

コクリ‥


静香は頷くと、震える足で玄関に向かって歩いて行った。
吉川は首を傾げながら窓の下に立っている雪の姿を見て違和感を口にする。
「つーかあの女本当に金持ちなのか?そんな風に見えねぇが‥」
「おっ‥お金持ちよ!!」

「あの子の店も知ってるわ!この辺りじゃ大きくて有名よ‥!」

「と‥とにかく連れて来るから‥!」

静香は上ずる声を震わせながらどうにかドアの外へと出た。
遠出出来ないようスリッパを履いたまま。


胸が、足が重たかった。
まるで足枷が付けられているかのように。


ゆっくりと階段を下りながら、静香は一人呟き始める。
「最低‥最悪‥」

「今日は河村静香の人生の中で史上最悪の日だわ‥」

足が重い。身体が重い。
そして何より、心が重くて仕方がない‥。
「最低‥最悪‥」

「最低‥」

真っ暗になった心の中で、静香は呪いを唱える。
亮のせいであたしまでこんな有様‥
淳のせいで‥ 会長のせいで‥ ババアのせいで‥ 祖父さんのせいで‥

ううん、もとはと言えば早死にした両親のせいよ‥!

全部アイツらのせいでー‥

いつか亮が言った。「頼むから人間らしく生きてくれ」と。
淳は言った。
「お前だったらその話信じるか?」と。

雪もこう言った。
「ずっとこんな風に過ごしてたって何も変わらないって思いませんか?」と。


静香は自分の身体を腕で抱きながら、一人階段を下り続ける。
気を抜くと暗闇から穴に落ち、奈落の底へと引き摺り下ろされてしまいそうだ。
あたしだって分かってる。
考えたことくらいあるわよ、これからの自分の人生のこと‥。
ただ考えない様にしてただけ

落ちぶれた空っぽな女になるかもしれないという恐怖心を、
分からないとでも思うのか

誰よりもよく分かってるわよ‥

ガラス戸の向こう側に、佇む彼女の姿が見えた。
雪も同時に、ドアの向こうにいる静香の姿を確認する。

生き残るためには、赤山雪、アンタをー‥!

暗闇に飲み込まれないように、静香は光に向かって手を伸ばす。
「静香さん!」

「本当に金持ちなのか?」

アンタを道連れにー‥

囚われた静香はドアの内側で、外界に佇む雪に向かって足を踏み出すー‥。
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<囚われた虎(3)ー史上最悪の日ー>でした。
とうとう雪ちゃんが駆け付けましたね〜。
自分の人生を他人のせいにする静香の性格を、雪ちゃんがどうにか変えてくれることを信じて!
次回<囚われた虎(4)ー道連れー>へと続きます。
そして本日3月20日は、雪ちゃんの誕生日ですー


淳のお祝いの時と同じ画像でお祝い‥

おめでとう雪ちゃん

幸せなラストを迎えられますように!!祈ってるわー!!

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