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Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

苦い記憶

2013-07-23 01:00:00 | 雪3年1部(開講~二人の写メ)
今年もまた、球技大会の季節がやって来た。

太一は台無しになった去年のリベンジとして、今年こそ会食費を獲得しようと日々練習に励んでいる。



雪と聡美はそんな太一を前に、生意気だけど面白い彼を微笑ましく思っていた。



そんな折、聡美が太一と横山翔の、去年の球技大会前の一悶着についての話を振ってきた。

雪は二人の間に何か諍いがあったことは知っていたが、その内容については知らなかったのだ。



聡美は思い出すように、太一と横山の一悶着について教えてくれた。



練習の合間に雪たちの所に寄った太一に、聡美が今去年の横山の話をしているんだと言った。



太一がその記憶を辿り出すと、

そこには聡美にストーカーまがいの行為をした横山が、ありありと浮かんでくる。



「‥まさかとは思ってたんスけど、あそこまでとは‥」



太一には去年から心に引っかかっていることがあった。

あの時から横山の性質を知っていたのに、聡美を気遣うあまりそれを雪に知らせなかったこと‥。







練習が終わってから、聡美が席を外したのを見計らって、そのことを太一は雪に告白した。

「今更ですけど、俺、あの時横山先輩がおかしかったこと

雪さんに教えてあげるべきだったのに‥。俺のせいで雪さんが‥」




雪は太一の気遣いに、両手を広げて否定した。

「ちがうちがう!何言ってんの!もう終わったことだし。

それに他のことで頭いっぱいだったし、なんともないよ!」




それならよかった、と太一が言ったので、この話はお終いにした。


雪は帰路に着きながら、あの球技大会前頃は、

平井和美の嫌がらせが続いていた頃だと思い出していた。



あの頃に太一から横山の忠告を受けていたって、きっと何も行動を起こせなかっただろうという気がする。

それよりも気がかりなことが、いくつもあったからだ。

平井和美の嫌がらせもさることながら、何と言っても心にかかっているのは、青田先輩に書類を蹴られた事件‥。


今でも昨日のことのように蘇る、廊下に響く足音。



全身が震えて、生まれて初めて味わった屈辱。




雪は苦い記憶を沈めるように、空を仰いだ。



星は見えない都心の夜。

雪の心の中にも、暗雲が漂っていた。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

太一は球技大会が間近に迫ってくると、ますます練習に精を出した。

美味しいパスタ屋へ行こうという聡美からのミシュレン出陣依頼も、練習があるからと断る始末だった。



その熱血さに聡美が「お前はスラムダンクか!」とツッコむと、

太一はやたら詳しく突っ込み返してくる‥。

「それは人に対してつける名詞じゃありませんヨ。付けるなら桜木花道とか流川楓とか‥」

「ルセー」



太一は去年のリベンジに燃えていた。

パスタ一皿食べる時間があるなら練習し、会食費を取ってみせると意気込んでいる。



コートに向かう太一は、スラムダンクのオープニング曲を力強く口ずさんでいた‥。







そんな今年の球技大会はどうだったかというと‥。

猛特訓、栄養補給(摂り過ぎ)



食あたり


闘病&不参加、勝利


脱出&乱入


・・・・・


病院へ帰還


そして、一日にして回復。


太一の目標は勝つことでは無く、しこたま料理を食べることだった‥。

翌日退院した太一は、

「思い残すことは何もないッス!」と親指を立てた。



呆れる雪の隣で、「やっぱりあんたは最高のバカだ!」と聡美がケラケラ笑っていた‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今回は少し短めです。今年の球技大会もみんなおそろのTシャツで応援したんですかね^^

太一が口ずさんでいた、スラムダンクのOP↓
SLAMDUNK OP


韓国でも人気だったんですね~!


次回は<日常の中の波乱>です。

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課外課題

2013-07-22 01:00:00 | 雪3年1部(開講~二人の写メ)
雪は夢の中を漂うように、過去の記憶を辿っていた。

中でも”課題”によって引き出された記憶は、青田淳を訝しがっていた過去をまざまざと思い出させた。

平井和美によって徹夜で課題をせざるを得なくなった雪に、青田淳はあの見せかけの笑顔で言ったんだっけ‥。

後でもし必要なら連絡くれていいから。課題手伝うよ



雪はこう思ったはずだ。

心にも無いことを言うなと。誰のせいでこうなったと思っているんだと‥。





「え?何か言った?」



白昼夢から醒めた雪の目の前に、キョトンとした顔の彼が居た。



雪と先輩は、中庭のベンチで共に課題に取り組んでいるところだったのだ。

春のせいかぼーっとするんですと慌てて言い訳する雪に、青田先輩は「疲れてるんだな」とその身を案じた。



先輩は資料の調査状況とレポートの作成予定表を見合わせながら、

ある所まで雪が調べてくれたら後は自分が何とかするからと言った。



常々課題に追われ、全部一人で背負い込んできた雪には衝撃的な成り行きである。

純粋にお礼の言葉が出てくるが‥



途中でハッと我に返ると、雪は今までの事情もあり自分を戒める。



彼からこんなに親切にされたことが無かったからか、つい感動してしまったようだ。

いつも皆が彼の周りに集っているのが、分かるような気がしなくもない‥。


時間はお昼時。

ふと先輩が、鞄からビニール袋を取り出した。

「この間一緒に食べたの思い出してさ」



彼はそう言うと、おにぎりとジュースをテーブルの上に置いた。



その中に、レアな爆弾が入っているのを見た雪は固唾を飲んだ。

彼女の大好物だ。

「雪ちゃん雪ちゃん」



見て見て、と先輩は雪の前でおにぎりを剥き始めた。

「キレイに剥けただろ?」



嬉しそうに言う彼に、彼女は拍手を送った。

なぜこんなこと自慢するんだろと少し疑問に思いながら‥。



だけど本当に彼は嬉しそうだし、

照れて頭を掻きながら「実は練習したんだ」なんて言った。



雪の脳裏に、この間おにぎりが上手く剥けなくてやたら謝っていた彼の姿が思い浮かんだ。



あの時の名誉挽回? まさかね‥。

雪は先輩にお礼を言うと、爆弾を手に取った。



その姿を見て笑う彼に、



とても無邪気な、良い意味でバカみたいな面があるんだと知った。




二人を包む空気は、春の暖かさを含んだものだった。

春先の突風は、向かいに座っている彼の髪をさらさらと揺らす。



日差しは暖かく、新緑に木漏れ日がキラキラと潤んでいた。

雪はそんな空気の中で、何かとときめいてしまう‥



勿論すぐ、何考えてんのと自分を諌めたけれど。








「あれー?なになに、二人付き合ってんの?え?え?」



なんとも脳天気な顔をした健太先輩が、通りがかりに声を掛けてきた。

課題に取り組んでいることが分かると、青田先輩の隣に座った。



ふいに青田先輩の携帯が鳴り、彼は「失礼~」と言うと電話に出た。



彼の仕草はスマートだったが、真似した健太先輩のそれはどこか滑稽だ。

「もしもし?うん。身体の具合はどう?え?今日?」



通話をしている先輩の横顔を、雪はじっと見ていた。



その顔が、表情が、微かに変化する様子を。



彼はそんな雪の視線に気がつくと、ちょっと電話してくると席を外した。



そんな青田淳の行動に、健太先輩はあれは確実に女だと断定し、雪に耳打ちする。

「俺らの知らない女だから、席外したんだよ」と。



雪は「分かりませんけどね」と言葉を濁したが、頭は先ほど見た青田先輩の表情の方が気になっていた。

一瞬見せたあの表情。



にこやかだった彼が刹那に見せた、険しさが。




「そうだ、お前最近俺のメール無視してるだろ」



いきなり痛いところを突かれた雪は、思わずギクッとした。

雪は言い訳として、最近課題が溜まってて集中するために電源を切っていたと言った。

携帯が古くて調子悪いんです、とも。

しかし健太先輩は怯むことなく、それなら恵の携帯番号を教えてくれと迫って来る。



雪は断る理由を必死に考えた。

「あ‥あの子人づてに番号が伝わるの好きじゃないんで‥!

ほらあの子可愛いし、こういうこと前にも結構あってですね‥」




高速回転する脳みそが、ペラペラと言い訳を口にする。

しかし健太先輩は野生の勘が働いたのか、雪に向かって懐疑な目を向けた。

「おい、お前まさかわざと避けてんじゃねーだろうな?」



そう言って凄んでくる健太先輩に、雪は二の句が継げなかった。

猛獣に睨まれたウサギ‥まさにこんな気分だ。



雪が動揺のあまり固まっていると、健太先輩は豪快に笑って肩を叩いた。

冗談だよ冗談!と。



今は恵ちゃんも忙しいだろうし、また落ち着いたらよろしく頼むと健太先輩は言った。

ビクついて損した‥。思ったより興味無いのだろうか‥。



雪がとりあえず安堵の溜息を吐いていると、青田先輩が帰ってきた。

健太先輩はその後、青田先輩のしているブルガリの時計の値段を聞きたがったり、

それを腕にはめたいと言ってみたりと、相変わらずの暴走ぶりを発揮する。



雪はそんな二人を見ながら、頬杖をついた。



春の風は三人の傍を、颯爽と吹き抜けて行った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<課外課題>でした。

過去のゴタゴタ抜きにすると、とっても爽やかかつときめく回でした。
健太先輩はアレですが‥。

おにぎりを上手く剥けるようになった先輩ですが、実は人知れず努力してましたw



家政婦さんに剥き方を教わる先輩‥。

口でむしるとか斜め上すぎて‥笑


次回は<苦い記憶>です。


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恋心(2)

2013-07-21 01:00:00 | 雪3年1部(開講~二人の写メ)


雪と恵は昼食を取りながら、大学生活のことについて話していた。

雪は恵が学科は違えど同じ大学に入学してきたことが嬉しくて、

つい色々アドバイスをしてしまう。

それに対して恵はニコニコと応えてくれるので、雪は嬉しかった。



するとふいに恵が、一昨日構内で健太先輩に会ったと言い出した。


恵の姿を見ると声を掛けてきた健太先輩は、案の定馴れ馴れしい態度で彼女に接して来たと言う。



自分のことは健太さんと呼んでほしいと言い、これからお互いをもっと知っていこうと言うとほくそ笑んだ、と。

例の脳内暴走列車・柳瀬健太である。



途中佐藤広隆が通りかかった際、ノートを借りようと健太先輩は彼を呼び止めたが、

佐藤は無視して立ち去った。



恵に携帯番号を聞こうとしていた健太先輩だったが、

結局そのまま佐藤広隆を追いかけてその場を後にしたと言う‥。



雪は予想通りの健太先輩の暴走ぶりに打ちひしがれた。



恵には経営学科の近くに来る時は必ず連絡することと、

また迫ってこられたら彼氏が居ると言うようにと注意した。



すると恵は何か言いたげに、視線を空に彷徨わせた。

おずおずと、聞きたかったことを口にする。

「ねぇ、ゆき姉‥さっきの先輩って‥人気あるんでしょ?」



恵の脳裏に、爽やかな笑顔を浮かべる青田先輩の姿が蘇った。

雪は彼女の興味津々な視線を感じて、「やっぱりこの話題がキター!」と身構える。



「まぁ‥ね。見ての通り、あの人はもう芸能人みたいなもんだから!あははは‥」



嘘では無かったが、青田先輩は雲の上の人だという雰囲気を醸し出しながら雪は彼についての見解を述べた。

すると恵は、その表情を曇らせながら多少自虐的にこう言う。

「そうだよね‥当然モテるよね‥かっこいいもん‥」



その表情を前にして、雪はなんだか悪いことをしたようで良心がチクチクと痛む。

続いて恵は、青田先輩の名前を聞いてきた。

”青田淳”と彼のフルネームを口にすると、恵は「名前までかっこいい」と頬を染めた。



その天使のような可愛さビームに、雪はやられっぱなしだ。



恵の心から恋心が生まれるのを、ひしひしと感じながら‥。





別の日、雪と聡美と太一は、三人でスーパーに来ていた。

今日は同じ学科の直美さんの誕生日。直美さんは同期だが、二歳年上のお姉さん的存在だ。

同学科の女の子たちで寄り合って、誕生祝いをすることになったのだった。

ケーキはもう他の子達が調達したということで、雪達三人はお菓子を買っていくことになった。



店内のパネルを見てお菓子コーナーはあっちだよと言う雪に対して、太一は野生の勘で違う方向へ歩いて行く。

その間にも彼は試食を食べまくり、店員に注意されていた‥ww

お菓子の棚を見て何がいいかと迷っていると、ふいに聡美が全然関係ないことを言い出した。

「ねぇ雪、とりあえず合コンしよーよ」



いきなり何を言い出すのかと雪は困惑したが、聡美はこの間合コンしたメンバーと意気投合したので、

今度は雪も一緒にどうかと誘ってきた。



いつ合コンなんかしたんだろう‥。

そう雪が問うと、ふいに太一がお菓子を落とした。



呆気に取られた表情でこちらを見つめる太一は、

明らかに動揺していた。



その不自然な態度を見て、雪は太一の抱いた恋心を確信する。



脳裏には去年の夏、

横山を殴った時に聡美に嫌われるんじゃないかと泣いていた太一が思い浮かんだ‥。





しばしぼんやりしていた雪だが、聡美に髪を弄られると我に返った。



聡美は合コンに行ったことを事前に雪に言わなかったため、

それを気にしてぼんやりしてるのかと気を揉んでいた。



雪が否定すると、聡美は「次からは何でも雪に話すから」と肩を抱いた。

再び合コンに行くかどうか聞いてきた聡美に、雪は合コンなど考えたことも無かったし、

あまりにも急すぎると難色を示した。

すると聡美は「青田先輩のことがあるからでしょー?」とからかってきた。



二人に進展があったら絶対話してね、と言う聡美に、雪は乾いた笑いを立てるしか無かった‥。









学校に着くと、早速直美さんの誕生日パーティーが始まった。

同期、先輩、後輩と女の子達が集まって、彼女の誕生日を祝う。彼女は誕生日ハットもかぶり、嬉しそうだった。



ただ一人の男子、太一は机に並べられた沢山のお菓子とケーキにがっついていたが‥。


ふいに同期の女の子が、雪の友達ですごく可愛い子がいると聞いたと言ってきた。



「健太先輩に紹介することになったんでしょ?超自慢してたよ」

雪は誇張された真実に驚きを隠せない。

「ちょっとぉぉ!なんでそんな話になってるの!彼氏持ちって言ったのに‥。

あまりにもしつこいから聞いてみるって言って流しただけだったのに‥!」




隣で聡美が「ハメられたわね‥」とお気の毒モードで言った‥。

女子たちの話題は、そのまま健太先輩の暴走機関車ぶりについてに移っていった。



~語られた暴走っぷり一覧~

・基本ホラ吹きだ。

・頼んでもないのにイッキした挙句、外で吐いていた。

・ご飯を奢ると言っときながら途中で姿をくらます。

雪はその話題を黙って聞いていたが、なぜかそこから話は横山翔についての話題に移った。



去年横山と一悶着あった雪と聡美は、その名前が出るとビクッと動きを止めたが、

学科の子たちは内情を知らないため、横山についての噂を続けた。



可愛い子なら誰にでも声を掛ける横山。その軽率な態度に皆が辟易していた。

中でも平井和美にまとわりついていた時は、その激しいバトルは凄かったと皆笑っていた。

しかし去年の秋学期から、なぜ彼が急に休学したかについては、誰も知らないでいた。



雪はささやかれる話題、久々に出てきた名前を聞いて、ぼんやりと去年のことを思い出していた。


すると携帯が鳴って、メールが一通入ってきた。



一緒にやろうって言ってた課題だけど、ちゃんとやってる? 

来週にでも会ってお互い確認し合おう。^^




雪は青田淳からのメールに顔をしかめた。

”課題”という単語に目が留まる。

去年、平井和美が故意にプリントをすり替え、徹夜で課題に追われた記憶が蘇った。

懐かしい名前たちは苦い記憶を思い出させる。

雪は、心がズキズキと痛むのを感じていた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<恋心2>でした。

今回も日本語版でカットされた内容が殆どでした。確かになきゃないで話は通じますが‥。

個人的にはスーパーで太一が試食しまくって店員さんに注意されてるのとか、なんでカットした!という感じですww

次回は<課外課題>です!

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恋心(1)

2013-07-20 01:00:00 | 雪3年1部(開講~二人の写メ)
朝。

雪の携帯から目覚まし代わりの着信メロディーが大音量で流れる。

目覚ましとしてセットされているのは、歌手フィソンの”不眠症”という曲だ。

♪針のような悩みも全部 切り裂いて明日へ♪



雪は手探りで携帯を探し、音楽を止めた。

まだ眠気の残る頭でご飯を炊いてないことに気がつく。朝ごはん無しである‥。



二回セットされたアラームからは、もう一度着メロが大音量で響いた。

♪夢よりもずっと君のことを思い夜を更かし~Feels like..♪



その大きなボリュームに、隣の浪人生は壁をバンバン叩いて来た。

「あんた二回もアラームセットしとんじゃないわよ!あんたのせいであたしゃ不眠症よぉぉ!」



外に出ると、暗いオーラを背負った彼に案の定注意された‥。



浪人生だからなのか、ちょっぴり神経質らしい。

ふと雪の携帯が鳴った。恵からのメールである。

ゆき姉!今日のご飯の約束忘れてないよね?

今日はこの間一緒出来なかった分、ランチに行く約束をしてあるのだ。



雪が恵からのメールに癒されていると、続いてもう一度メールを知らせる音が鳴った。

恵ちゃんの件どうなった?!上手いこと言ってくれたか?!



健太先輩からのメールだったが、雪は見ないフリして携帯を閉じた‥。




季節は三月といえど、まだ冷たい風が身に染みる。



雪が信号待ちをしていると、また携帯が鳴った。

授業の課題一緒にやらない?あとEメールアドレス教えて



雪はそのメールを見て、思わず顔をしかめた。

青田先輩は、この頃ずっとこんな感じだ。


携帯からは大音量の着メロが流れた。

♪どうして~悲しい予感は外れやしないの~♪



なにこのタイミング‥。



雪の大学生活が、また大きく変わろうとしていた。




「疲れた‥」



ゲッソリとそう漏らす雪に、そんな彼女を心配した聡美が声を掛ける。

「五月病とか?」「ううん、なんか‥甘いもの食べたいー」



二人はそのまま何気ない会話を重ねた。

「あれ?聡美、その携帯ストラップの人形って新しく買ったやつ?かわいいじゃん」

「でしょ?」



そして話題は今日のランチについてへと移り、二人はプリントアウトした地図片手に熱弁する。

「最近新しくオープンしたカレー屋さん、超人気らしいっすよ!」

「またインテリアがブログに上げたくなるほど素敵だって!」



雪、聡美、太一の三人は、実は三人だけのサークルを作っていて、その名も「味趣連(ミシュレン)」といった。

昼休みの度に大学の近くの美味しい店へ出陣するサークルだが、

太一が「味」担当、聡美が「趣(おもむき)」担当、雪が「連(つれ)」担当でミシュレンとは、上手く言ったもんである。



どうやら今日はカレー屋に出陣することになったらしく、聡美は前方の席に座っている青田先輩に話しかけた。

「先輩はそのカレー屋さん、行ったことありますか?」



青田先輩は、一年生たちを連れて行ってみたけど悪くなかったよと言った。

聡美が自分たちも年はイッてるけど後輩ですよとその身を乗り出す。



先輩は笑いながら、じゃあ今度なと言った。

雪はなるべく関わりを持たないようにと黙っていたのだが、今度は青田先輩の方から声を掛けてきた。

「雪ちゃん、悪いんだけどペン借りてもいいかな?」「あ‥はい!」



雪がペンケースの中からボールペンを探っていると、聡美と太一がグフグフと笑って雪の方を窺った‥。



その後、太一が青田先輩と世間話を始めた。健太先輩の姿が見えないのはインフルエンザだからだとか、

他の先輩達はみんな二日酔いで授業に来てないとか‥。そして最後には服の話題で盛り上がっていた。

楽しそうな会話をする二人を見て、雪は複雑な気持ちがした‥。





授業が終わって、聡美と太一は青田先輩と話せるのも雪のお陰だと喜んだ。



当然雪は釈然としない。

「あんた達が話しかけたはずなのに、なんで私がペンを貸さなくちゃならないの?」



すると二人はバカじゃないのと言った空気で雪にダメ出しだ。

「わかってないすね~!わざと雪さんの前に座ったんじゃないっすか!」

「うちらはあんたのダチだからよくしてくれるだけ!どんだけ鈍感よ?」



すると建物の影から、恵が雪を見つけて出て来た。

「ゆき姉!さっきからずっと向こうで待ってたんだよ!」



雪は辺りを見回して、健太先輩のことがあるからこっちの建物に近づいちゃダメ!とがなる。



その後恵を聡美と太一に紹介すると、雪はお昼は恵と食べるから先行ってと、二人を見送った。



雪と恵がランチは何を食べようかと話していると、後ろから聞き覚えのある声が掛かる。

「雪ちゃん!ペン返すの忘れてた」



ペンを受け取って雪がお礼を言うと、先輩がお礼は俺が言うべきでしょと笑った。

恵を見て雪の友達かと問う彼に、雪は互いを紹介する。



爽やかな笑顔で挨拶をする青田先輩を見て、恵は頬を赤らめた。



その後、恵は自分から自己紹介を始めて‥。



その積極的な態度と、上気した頬を横目で見ながら、雪は恵の感情に気がついてしまっていた。



誰からか、また携帯からは着メロが大音量で流れ始める。

♪どうして~悲しい予感は~外れたことがないの~♪





色々なことが、変わり始めていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<恋心>でした。

雪の朝の目覚まし着メロはこれのようです↓

不眠症(Insomnia) Wheesung


隣人の「あたしゃあんたのせいで不眠症よぉ!」という可笑しみがようやく分かりました‥。


どうして悲しい予感は~♪
というのはこれのようです。↓

ひとりのための心 Kim Jeong Hoon


色々なサウンドが携帯に入ってるみたいですね!テンボルも然りね!(やはりしつこい)

次回は<恋心(2)>です。

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一緒の授業

2013-07-19 01:00:00 | 雪3年1部(開講~二人の写メ)
雪は教室に着いてからも、恵への健太先輩からのアタックを阻止する方法を考えていた。



険しい顔をしながら座っている雪。

そんな折、いきなり声を掛けられた。

「あれ?雪ちゃんもこの授業聞いてたんだね」「はい、先輩」



健太のことで頭がいっぱいだったので、雪は考える前に応答した。

その声の主が誰かということに気が回る前に。

ハッ!



思わず雪は自分の目を疑った。

なんと隣に、にこやかな青田先輩が座っているのだ。

「良かった。俺一人かと思ってたんだ。一緒に頑張ろうな!」



一難去ってまた一難‥。

ど‥どういうこと?!



目を剥く雪にはお構いなしに、先輩はにこやかにこの授業を取った経緯を話し始めた。


「俺、もう授業あんまり取らなくてもいいんだけど、

この授業は人も少ないし課題もそんなに難しそうじゃなかったから、受講してみたんだ」




「だから雪ちゃんもこれ取ったの?」「ソウデス。グウゼンデスネ」



先輩の質問にまだ頭の整理がついてない雪は、ロボットの如くそう答えた。

瞳は猛スピードで教室に居る学生を見回し、知った顔が居ないと分かるとほくそ笑む。

よし!授業終わったらソッコー家帰って、オンデマンド受講に切り替え‥



「今回オンデマンド廃止されたってね。もう殆ど閉鎖してるみたいだよ」



心の中を読まれたかのようなタイミングに、雪はぶふーっと吹き出した。

慌てふためく雪を見て、青田先輩は真剣な口調でこう言う。

「雪ちゃん、俺が居ると気まずい?」



雪は口元を押さえながら、その言葉の真意を探った。

本心で言ってる?じゃなきゃ、分かって聞いてるのか。



彼の、雪を気遣う表情は真剣に見える。



こんな表情をされては、私の方が悪者みたいじゃないかと思い、雪はイラついた。

答えようと口を開いた瞬間、教授から声を掛けられた。

「そこ!学生二人!」



授業が始まったのに、あまりにも二人向き合いすぎですよと教授はからかうような口調で言った。

そして淳に目を留めると、その印象を正直に述べる。

「あら?あなたひょっとして芸能人?ドラマか何かに出ていなかった?」



教授はそういった事情を抱えた学生が受講するなんて聞いていないけど‥と続けると、

青田淳はその爽やかな笑顔でこう答えた。

「いえ、ただの学生です」

「ほほほ‥実はそうだと知っていたけど、あまりにも素敵だから一度話しかけてみたかったのよ」



その教授の言葉に対し、青田淳はニッコリと微笑んで返答する。

「ありがとうございます。教授もお綺麗ですよ^^」「まっ!お世辞まで上手ね」



そのおべっかにまんざらでもない教授、にこやかな先輩、そして集まってくる皆の痛いほどの視線。

雪は勘弁してくれと、教科書で顔を隠すように丸まった。



周りからのヒソヒソ話が聞こえる。

え?なになに、芸能人? マジイケメンじゃん。 隣の女が彼女? まっさかぁ。

ただの知り合いだろ。女の方が言い寄ってるとかね。キャハハ


雪は苛立っていた。



ただ授業を聞きに来ただけなのに、どうして自分の悪口みたいなことを聞かされなければならないんだ。

これもそれも青田淳のせいだ。

青田め~~~~



怒り心頭の雪。

しかし不意に、顔を隠すように持っていた教科書が外された。



どうしてこうしてるの?と青田淳が外したのだ。

「なんか気にさせちゃったみたいだな。ごめんね」



先輩の言葉に、雪は溜息を吐きながらも、「先輩のせいじゃないですから」と答えた。

すると先輩は、雪の方を見ながら真摯な表情でこう言う。

「雪ちゃん。俺のこと先輩だからって気張らずに、気楽に接してな」



雪は、これが本心なのかそうでないのか、本当に判別出来なかった。

にこやかに笑う彼は、去年の彼とは明らかに違う。



新歓飲みの時、雪のことを汚らしいとまで言っていたじゃないか。

雪が書類を落とした時も、あれほどの冷淡さを見せたじゃないか。


同一人物じゃないみたいだ‥。



雪はあの疎ましく感じていた後ろ姿が、瞼の裏に映るのを見た。

しばし封じ込めたはずの去年の記憶の海を、揺蕩っているような感覚で。








目を覚ますと、ヨダレで教科書が顔に引っ付いていた。

辺りは席を立つ為に椅子を引く音や、学生たちの歓談の声でざわざわと騒がしかった。

「大丈夫?あまりにもよく寝てたから起こさなかったんだ」



まだ起き抜けで状況が理解出来ない雪に、

先輩は「今日はオリエンテーションだし大したことは言ってなかったよ」と言いながら、

取っておいてくれたプリントを手渡してくれた。

「あ、ヨダレまだついてるよ」



あまりの恥ずかしさにそそくさとこの場から去ろうとした雪だが、

先輩はどこか嬉しそうな口調で言った。

「知らなかったなー、雪ちゃんがこんなに面白い子だったとは」



行こっか、と彼は言った。

呆気に取られたような雪は、共に教室を出るしかなかった。





なんでこの人と一緒に帰ってるんだろう‥。

雪は何もかもが甚だ疑問だったが、とりあえずは正門まで彼と一緒に歩いた。

すると先輩は、夕飯を一緒にどうかと誘ってきた。

「いえ!お断りします!」



あまりにも早い返答、そしてちょっと先輩に対しては失礼なくらいきつい口調になってしまった。

ポカンとした表情で、青田淳が自分を見つめている‥。



雪は弁解するように、彼と夕飯を取れない理由をペラペラと喋り始めた。

「い‥家の掃除をしなきゃならないんです!荷物段ボールに入ったままで!

テレビ電話というものが発明されたお陰で大変なんですよ!先輩は掃除とかしないんですか?!」




キョトンとしている先輩。

雪はしどろもどろになりながら説明を続ける。

「‥えーとだから‥掃除をしないと母に怒られてしまう‥。

私の精神の健康と鼓膜の安全のために‥」




そこまで喋ると、先輩は豪快に笑った。

「プハハハハ!」



は‥?



予想外の反応に、思わず目を丸くする雪。

先輩は雪を見て微笑むと、こう優しく言ったのだった。

「分かったよ。それは早く帰らなきゃな」



固まった雪を見て、「本当に面白い子だな」と付け加えて。




雪は物凄い勢いで帰宅した。



隣人の浪人生が「ドア壊れちゃうじゃない!」と文句を言うのも気にならなかった。

~誰よりも早く個性的に~



くつ!ふく!かばん!パソコン!

雪はオンライン授業登録の画面を前に、頭を抱えた。

「しまったぁぁ!他の授業全部埋まってる!」



単位の都合からいって、もうあの授業を取るしか無い。

青田先輩とこれから一学期間、一緒の授業を‥。

うわあああああ!ムリムリムリムリ!




雪は家の中をゴロゴロと転がった。

その間ずっと隣人は、ガンガンと壁を叩いていた‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<一緒の授業>でした♪

今回の話の中盤部分は、日本語版webtoonではカットされた部分です。なんでカットされたのかは謎ですが、

記事にしてみました。楽しんで頂けたら幸いです。



雪が家に帰ってからの「誰よりも早く個性的に」は、

最速ラップと呼ばれる韓国の歌手アウトサイダーのキャッチコピーだそうです。

Outsider - Hero (ft. LMNOP)


雪の素早い仕草、確かに個性的‥笑

次回は<恋心(1)>です。


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