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Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(1)ー

2013-07-11 01:00:00 | 河村姉弟1<幼少期~本当の家族>
地獄のような幼少期を過ごした二人も、青田淳の父親、青田会長の支援を受けるようになってからは、人並みの生活を送れるようになった。

そして時は流れ、亮、静香、そして淳は高校生になった。

理由は語られていないが、河村静香は一年入学を遅らせたので、三人とも同じ学年として学校に通った。



三人でつるんでいることが多く、校内でも目立つ彼らは皆の注目の的だった。



中でも亮はそのピアノの才能が開花して、天才と謳われていた。

ハーフの顔立ちと高身長で容姿も際立っていたが、

何よりも魂のこもったその演奏は、聴く者全てを虜にした。




一方静香は美術を専攻し、その活動を支援してもらっていた。



しかし思ったほどの成果は無かったばかりか、学内で暴力事件を起こすことも多々あり、悪名の方で話題に登ることの方が多かった。


二人は青田家の近所に住んでおり、ちょくちょく遊びに訪れた。



青田会長は亮の活躍を喜び、静香の天真爛漫なその性格に癒された。

ご飯を食べに連れて行ってとの彼女の願いにも、その多忙を縫って出来るだけ応えた。

彼らが遊びに来ると家の中がパッと明るくなったようだったが、

淳はその様子を一人離れて見ていることが多かった。




亮はそんな彼を見て、この間彼が言っていたことを思い出した。




高校時代の青田淳には、途切れることなく彼女が居た。

告白されるままに受け入れて付き合っていたが、その態度はどちらかというと冷たかった。



この日も、亮と静香と約束しているからと、淳を追ってきた彼女に付いて来るなという態度を取った。

後日、一人で歩いている淳に亮は彼女はどうしたと聞くと、淳はあっけらかんと別れたということを告げた。



付き合いが続いていくと自分への要求が多くなり、それに耐えかねていつも別れを選択する。


「適当な線を越えるから、気に障ったんだ」



亮が見た彼の横顔は、冷淡にも疲労しているようにも見えた。





去って行く淳の後ろ姿を見ながら、彼の言った”線を越える”ことの意味を、亮はまだ計りかねていた。






学校生活は順調だったが、亮には少しストレスになることがあった。



淳と親しいからか、周りの人間がいつも淳とのことを聞いてくるのだ。

この日も仲の良い女の子が淳について聞いてきたので、亮は自分から話しかければいいだろと返した。

しかし女の子は、亮にはよく分からないことを言った。

「だって淳くんってなんか話しかけにくいんだもん」



とっつきにくいと続ける彼女の発言に、亮は疑問を持った。



声をかければニコニコと笑って答える淳の、どこがとっつきにくいんだ?と。





しかし亮にとってはいつも兄弟のように傍にいた淳も、

周りの人間にとってはこの女の子が抱く印象の方が強い場合が多かった。



品行方正、頭脳明晰、容姿端麗。

それに加えて、父親の経営する企業が業績をぐんぐん上げている時期だった。

周りの子達の親や親戚は、淳と上手くやれと子どもたちに吹聴していた。

しかし既に淳の周りにはいつも人が溢れていたので、新しく親しくなろうとする子たちには淳に話しかける事自体が、敷居の高いことだった。


同い年なのに、どこか感じる孤高の威圧感。




その雰囲気を感じた人間はそっと傍を離れたし、それが分からない人間は周りに集い続けた。

しかし中には、あからさまな敵対心を向けてくる人間も現れた。



彼、西条和夫は典型的なそのタイプだった。

淳のやることなすことが気に食わず、聞えよがしに淳に対する不満を述べるのが常だった。


この日も、級長である淳が先生へのプレゼント代を皆から徴収している時、和夫は文句を言った。



級長で贔屓にしてもらっているのに、皆と同じ金額しか出さないことへの不満だった。

ボンボンのくせによぉ、と彼は淳に聞こえるように舌打ちした。

和夫は知らないだろうが、淳は後から個人的にも先生へ贈り物をする。それを知っている亮は、その文句を聞きながら半ば呆れた。




ある時、体育祭の打ち上げで淳が級長として皆にお弁当を奢ったことがあった。



皆喜んでお弁当にありついている中、和夫はやはり不満気だった。

「いい顔しやがってよぉ。ボンボンだからって自慢してんのか?」



そう言いながらも弁当をつつく彼に、今度は亮が文句を言った。

「ったくピーピーうるせぇよ。少なくてもピーピー、多く出してもピーピー」



「どっちかにしやがれってんだ」

それを聞いた和夫は亮に突っかかった。

しかしそれを淳が取り成し、なんとか騒ぎになるのは免れた。




和夫の不満の矛先は亮へと向かった。

ある日亮がウトウトしながら廊下を歩いていると、突然足を引っ掛けられた。



派手に転んだ亮に、和夫は嫌味な言葉をかける。

「青田に媚売りやがって、いい身分だなぁ?子分野郎」



元来短気な亮は、いきなり仕掛けられた悪意にキレた。

「てめー!ナメんじゃねーぞ!」






それから数週間、和夫は学校を休んだ。

亮は手加減したつもりだったが、思いの外重症だったのだろうかと気を揉んだ。

しかし皆が和夫について噂しているのを耳にした。

「西条の奴、入院したらしいよ」

「三年にやられたんだとよ。カツを入れるとかなんとか‥」



「けどなんで急にやられたんだろ?」

「日頃の行いの悪さのせいだろ。生意気な態度取ったとか」

亮はそれを聞いて、自分のせいではなかったとホッとした。



教室は変に皮肉る西条が居ないお陰で静かだった。

そのことをクラスメートが淳に言うと、彼は「そんなこと言うもんじゃない」と苦笑する。



クラスメートの女の子が、級長である淳に、教員室で和夫について何か聞いたかと質問した。


「‥さぁ」



「ただ運が悪かったんじゃない?」



亮はその横顔に、目が離せなくなった。



いつもニコニコしている彼が、ほんの一瞬見せたあの表情に。


あいつ‥今笑ったのか‥?




亮は淳の言った、”線を越える”という言葉を、ぼんやりと思い出していた。



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<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(2)ーへ続きます。


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<亮と静香>幼少期ー彼等のコアー

2013-07-10 01:00:00 | 河村姉弟1<幼少期~本当の家族>
雪と淳の、波乱に富んだ1年が終わった。

ステージは次の学年へと移り変わるのだが、その前に紹介しなければならない人物が居る。


河村亮 24歳



河村静香 25歳





さて、「河村」という苗字に聞き覚えはないだろうか。


そう、淳の幼少期、その性格に苦言を呈したあの河村教授と同じ名字だ。




河村兄弟とはこの河村教授の孫であり、幼くして青田淳の父親がその身柄を引き取った二人である。




この二人の存在無しでは次の話は始められない。

亮と静香のことをこれから、紹介したいと思う。

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彼らの祖父、河村教授は帰化した外国人だった。そのため亮と静香は混血の顔をしている。

幼少期に両親を事故で亡くし、それ以来二人は祖父に育てられた。

しかしその祖父も亡くなると、二人は祖父の遺言通り叔母の家へ預けられることになる。



この叔母は、河村教授の二人目の奥さんとの間に儲けられた娘だった。

第一夫人(若くして死別)と血縁関係にあった亮と静香は、彼女にとっては遺産相続の条件でついてきたお荷物であり、また二人が原因で夫とも離婚してしまう。

毎日酒を喰らい、人生を悲観して生きていた叔母は、いつの日からか静香のことが憎くて堪らなくなった。

「静香‥お前は大人を見下しやがって‥」



酔っ払っては、静香の何もかもに文句をつけ、虐待を繰り返した。

毎日毎日、お前はどうしようもないクズだと言われ続けて、静香は気が狂いそうだった。



亮にこの家を出ようと訴えたが、彼は耐えることを選択した。

彼はピアノの才能があり、叔母はそれをとても買っていたからだ。




静香は、ことあるごとに叔母に反抗した。




しかしその度に暴力はエスカレートした。腹を蹴られ、頬を張られ、そして何よりも心が踏みにじられた。


「お前みたいな子、捨ててくればよかったよ!」

「いらないよ!何の取り柄も無いお前なんか!」



「亮はお前と違ってピアノの才能があるから、後々恩返しもするだろうが、お前はただの用無しだ!」

容赦も心も無い言葉と暴力の隙間から、静香は亮を探した。

たった一人の弟。

たった一人の彼女の味方。

頭を抱え込むようにした姿勢から、ようやく彼の姿が見えた。



アパートのドアの外側で、彼は傷だらけの身体で震えながら様子を窺っていたが、やがて姉を見捨てて逃げ去った。

静香は下を向き、矢のように降ってくる暴力に耐えた。



才能のある弟は、ピアノの塾に行ったよと叔母が意地悪く言う。

静香はその幼心に絶望を知った。

ここには、私を守ってくれる人は誰も居ないと。











その日家を訪ねてきたのは、青田淳の父親だった。



そして彼女は自分の運命をかけて、大きな賭けに出る。


「おじさん」

「あたしを連れて行って!」



脱いだ服の下には、無数の痣が至る所にあった。

慌てる叔母と驚く弟をも構わず、静香は淳の父親に叫び訴えた。

「叔母さんはおじいちゃんの遺産目当てで私達を引き取っただけなんですって!」



「ここにはあたしを守ってくれる人は一人も居ない!」



亮はその言葉にギクリとした。

あの時逃げたことへの罪悪感が、心の底にこびり付いていた。


青田淳の父親は、血を吐くような静香の願いを聞いた。


「‥じゃあ、おじさんと一緒に行こう。」



サングラスのせいでその表情を窺い知ることは出来なかったが、

何かを決意している口調だった。





そうして二人は、青田淳の父親が用意した家に住み、学校へ通い、様々な支援を受けるようになる。



息子の本当の友人になってほしいという彼の小さな希望達は、ちょくちょく青田家に遊びに来ては彼の息子と親しくなっていった。



そうして時は流れ、三人は高校生になった。






ここである大きな事件が起こるのだが、そのためにはまだ語らなければならないことが沢山ある。


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<亮と静香>幼少期、でした。

河村姉弟編に入りましたー!いかがでしたでしょうか?

チーズインザトラップの三大柱の一つである、河村姉弟と青田淳の関係ですが、その顛末は未だベールに隠れたままです。

ですので今明らかになっている所のみを時系列で追って行き、本家版で追加されればまた折を見て記事にしていきます。

カテゴリー分けしましたので、雪が3年生の話を記事にし始めても、河村姉弟の話はそちらのカテゴリにupするようにしたいと思います。

さて、次は三人の高校時代の話を始めたいと思います。



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