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Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

聞きたい言葉と聞きたくない言葉

2016-05-24 01:00:00 | 雪3年4部(虚勢の裏側~魔法の言葉)
翌日。



教室の中で、あの人の後ろ姿を見掛けた。



柳瀬健太。

雪は彼の背中をじっと凝視している。



誰よりも先に連絡が来るべき人からの連絡は、来なかった。



健太は若干挙動不審の体で、コソコソと席へと歩いて行った。

雪と目が合うとギクッと身を揺らし、速攻で顔を背ける。



申し訳なかったとか、大丈夫かとか。



謝罪の言葉も、気遣いの言葉も、あの時口先だけで発せられたあれだけだった。

雪が心から聞きたい言葉は、健太の口から出て来ない。

保健室に行った時も特に連絡は無かった。私が来るなって言ったわけだけど‥

先輩には個別に謝罪しただろうか?してないだろうな。




授業終わったら行ってみるか‥。






前方の席に座る健太。

出来ることならすぐにでも行って問い詰めたい気分だ。

けれどとある考えが、雪を止める。

‥いや、



今回もそうだし、英語塾の時もそうだった。



私が無鉄砲にぶつかって行ったから、

河村氏にも先輩にも結局ケガをさせて‥




雪は思う。

それって突き詰めれば、私のせいなんじゃないのか?



自分の行動のせいで誰かが怪我をすること。

それはどう考えてもよろしくない事態だった。

とりあえず、様子を見よう



雪は一旦時間を置くことに決めた。

だが、胸の中に揺蕩う靄は依然としてそのままだ。

でも様子を見てからどうするの?今回のことは‥

「ねぇ雪にうちらのこといつ言う?」「ハァ‥」「今はちょっと取り込み中だからなぁ~」



ただ水に流すってこと?



靄は胸中に広がり、先が見えない。自身が進むべき方向も、未だ曖昧なままだった‥。


そして雪がそんな考えに頭を悩ましている隣で、聡美は太一と付き合い始めたことに胸を弾ませていたが、

太一はというと‥。



幸せ顔の聡美とは対照的に、青い顔をして口を噤んでいる。

そんな太一を見て、不思議そうな顔をする聡美。

「どしたの?どっか悪いの?」「イッ‥イエ‥」



太一は怯えたようにビクッと身体を強張らせると、

口元を押さえて黙り込んだ。



そして恐る恐る、聡美に向かって話を切り出そうとする。

「あ‥あの‥聡美さん‥」



「ん?」






しかし、嬉しそうに微笑む聡美の顔を見ると、何も言えなくなってしまった。

震えながら後ろを向いて、小さな声でこう口にするのがせいぜいだ。

「あ‥後でちょっと話が‥」「??」



聡美は小首を傾げながら、不思議そうな顔をして太一を見ていた‥。





授業が終わり、学生達は皆退席の準備を始めた。

柳瀬健太はギクシャクしながら急いで立ち上がり、



目にも留まらぬ早さで教室を出て行った。



そんな健太を見て、聡美は「うーわあの人ナイわー」と顔を顰める。

雪は去って行く健太をじっと見つめていた。



このまま雪が何も言い出さなければ、健太からの謝罪は永遠に得られないだろう。

そんなモヤモヤとした考えを胸の中に秘めながら、雪はただその場に立ち尽くしていた‥。








授業後のキャンパス内を、若干険しい表情を浮かべて歩く聡美。

けれど目の前には太一が居て、昨日彼氏となったその人と、聡美は手を繋いで歩いている。



彼の背中を見ながら、聡美の胸の中はモヤモヤと煙った。

何だろ

 

何か変じゃない?



どうしていきなりキョドってんの‥?



今日は終始オドオドしている太一。聡美の脳裏に、ふと昨日の出来事が蘇る。

まさか告白したの後悔してるんじゃ‥



一瞬不安要素が胸を過ぎったが、昨夜鳴り続けた携帯を思い出して、すぐにそれを打ち消した。

‥ないよね、絶対



「聡美さん!映画観に行きましょうこれはデートですネ初デート聡美さ~ん」

嬉しそうなメールが次々と届いた。

そして今繋いでいる手は温かく、太一の手の平にぎゅっと力がこもるのを感じる。





くくく‥と思わず笑いが零れた。

そして太一が立ち止まったその場所を見て、聡美は合点がいったという顔をする。

「あっ!何よも~~」



「ここ告白した場所じゃん?なに~?何の話よぉ~?」



ピアスピアスね と聡美の胸の中はバラ色だ。

以前太一の携帯を見てしまった時に目にしたあのピアスを、

プレゼントしてくれるに違いない‥。



しかし目の前の太一を見上げると、

青い顔しながら聡美と目も合わせない。



一体何があったのだろうか?

暫し固まっていた太一だが、覚悟を決めると、ようやく話を切り出した。

「聡美さん‥俺‥実は‥」「ん?」「俺‥」



次の瞬間太一の口から飛び出したのは、

聡美が世界で最も聞きたくない類の言葉だった。

「軍隊に行くことになりまシタ」






え‥



え‥



え‥



兵役の期間は約二年。

ようやくカップルになった二人の元に、最大の試練がやって来たー‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<聞きたい言葉と聞きたくない言葉>でした。

さ、聡美‥



ようやく上手く行ったと思ったのに‥。また一波乱ですね

韓国のカップルは兵役で引き裂かれ破局するケースが多いらしいですが、

この二人にはぜひともそれに打ち勝ってもらいたいですね。

そして健太‥。安定のダメ男
本当終わってますね‥。どうなることやら‥。


さて次回はとりあえず4部34話の最後まで記事アップします。

また35話が更新され次第、記事に追加しますのでよろしくお願いします~。


次回は<白紙の準備>です。


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彼女の確信

2016-05-22 01:00:00 | 雪3年4部(虚勢の裏側~魔法の言葉)
その日の夜、雪はベッドに寝転びながら携帯電話を眺めていた。



身体は疲れているが、考えることがありすぎてなかなか眠気がやって来ない。

とりわけ気になるのは、手を怪我してしまった先輩のことだった。



ポチポチとメッセージを打ち始める。

「先輩、手はどうですか?痛みは‥」



けれどその途中で、とあることに気が付いた。

「あ、ケガしてるんだった。返事ダメだ



それなら‥と、

次は通話ボタンに指を伸ばしてみるが、



「いやもう寝てるよね‥むしろ寝てなきゃ



そう思い直して、携帯を枕元に置く。







雪の脳裏に、昼間の光景が蘇って来た。

バランスを崩した雪を庇って、共に倒れた先輩の姿が‥。

「‥‥‥‥」



先輩が私の為にあんな行動に出るなんて‥



去年からは考えられなかったな、本当‥



たった一年で、彼と自身との関係は180度変わった。

けれど雪は気が付いていたのだ。

それは自然に変わって行ったのではなく、彼が意識的に変えたということに。

「俺しか居ない」



彼しか居ない領域の中に、雪を招き入れたということに。

「だろう?」






夏のボランティアの時、自身が問うた質問が蘇る。

「どうして私に告白したんですか?」



平井和美との一件があって、彼に疑心が募っていた最中のことだった。

どうしてあれほどまでに雪のことを嫌っていたのに、彼は告白して来たのか。

「あ‥それは‥」



「好きだから‥」



あの時彼は、雪からの質問に即答出来なかった。

本当に単純に好きだったから近づいたんだとしたら、あれほど戸惑いはしなかっただろう。


「あまり関わるなと言ったじゃないか」



あれは河村亮に家まで送ってもらった時、先輩と鉢合わせしてしまった時のことだった。

きつく抱き締められた背中越しに伝わって来た、彼の静かな怒り。

自身の手元に置いたはずの雪が、思い通りにならないことへの憤り‥。


「俺ら互いに気づいて、互いを見抜いたよね?

けど、最近は俺のこと見てくれないよね?もう冷めちゃった?」




秋の夜、今までに無いくらい酔っ払った時の彼が思い浮かんだ。

あの時口にしたその言葉は、本心だったのだろう。

互いに気付いて、互いを見抜いた、それが二人の始まりだった。


「もしかしたら俺は、君のことが怖かったのかもしれない。

最終的には俺のことを、侵害するんじゃないかと思って‥。

俺はそれが‥すごく嫌で。本当にすごく‥嫌なんだ‥」




”取って食われる”と、去年の雪が彼に感じていたのと同じ思いを、実は彼も感じていたのだ。

自身を奪い行くその存在へと向けられる、例えようのない恐怖心‥。








あの時、彼は最後にこう口にした。

「好きだと言ってくれて、ありがとう」と。







雪の心の中に、確信が浮かぶ。

もう確実に分かった。



地面にばら撒かれた書類。

かつて足蹴にしたそれを、あの時彼は差し出した。



あの人が、私に何を望んでいるのかが。



単純に好きだから、で告白して来たわけじゃない。

彼は自分を理解してくれる唯一無二の存在を、雪に求めて近付いて来た。

一度は蹴られたその書類が、再び拾い上げられて差し出されたように。






枕元に置いた携帯が震えた。

聡美からメッセージが届いている。

雪、大丈夫?先輩はどう?心配でさ



雪はすぐに返信を打った。

「うん、大丈夫だよ。

聡美も太一と早く仲直りするんだよ」




打ち終えた後メールフォルダをスライドすると、

佐藤と柳からメッセージが届いていることに気が付いた。

大したケガじゃなくて良かった。ゆっくり休んでくれ



赤山ちゃん、超驚いたっしょ。大丈夫かー?

柳瀬健太、マジ何なんだアイツ!




二人共、雪を心配し親身になってくれている。

「はい、ありがとうございます‥」と呟きながら、雪は二人にも返信する。






暗闇の中でほのかに光る携帯を眺めながら、雪は自身の確信を少し持て余していた。

彼との関係性、彼の真意、全てが明らかになった今、

雪は自身の進むべき道をぼんやりと思い描く‥。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<彼女の確信>でした。

やはり保健室での雪のあの表情は‥



彼の思惑に気付いてしまった表情だったのですね。

淳が自身の理解者を求めて近付いて来たことが分かった今、

以前雪が思っていた自身へのこの問いに↓



答えが出る日も近いんじゃないでしょうか。
(というかここのばら撒かれた書類のシーン、今回の回想シーンへと繋がりますね)


次回は<聞きたい言葉と聞きたくない言葉>です。

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虚勢の裏側

2016-05-20 01:00:00 | 雪3年4部(虚勢の裏側~魔法の言葉)


繁華街から少し離れた住宅街。

その端っこで、一人の男が自身の手を眺めていた。



男の名は河村亮。

階段に座りながら、昔故障したその左手をじっと眺め続ける。



一度ぐっと握って、



ゆっくりと開いた。

手は動く。あの時のように震えることなく。







亮は昼間目にした、淳と雪のことを思い出していた。

負傷し血が滲む淳の右手が、いつまでも瞼の裏に焼き付いている。



昔味わったあの感情が、指の先から熱を奪って行った。

今まではただ忌々しかったあの事件。けれど今は、少し違った意味合いで亮を縛る。



あの事件を引き起こしたのは自分自身だった。

そのことを亮に知らしめるように、あの時、ずっと震えが止まらなかった‥。







帰路を歩いていた河村静香は、家が近づいて来たので道端に煙草を投げ捨てた。

すると数メートル先に弟の姿の姿が見える。彼女は怪訝な顔をした。

「は?何なの?」

 

亮が開いているその本に見憶えがあった。

というか、それは静香自身の物なのだ。

何なのぉ?!



静香は怒りの形相で、亮の手からそれを奪い取る。

「なんでアンタがそれ持ってんのよ!バカにすんのもいい加減に‥」

「染み、キレイになってんじゃんか」



以前、その本にはコーヒーの染みがついていた。

赤山雪と言い争いになった時、アクシデントでぶちまけられたものだ。



けれど今それは丹念に拭き取られ、染みが付いた当初よりは大分マシになっていた。

本を握る静香の手に力がこもる。亮はそんな姉を見て、こう言葉を掛けた。

「いつもショボいのはヤダってボロクソ言うくせに、

この本のことは大事にしてんじゃん。オレが新しいヤツ買ってやろうか?」


「はぁ?」



その亮の言葉に、思わず高笑いする静香。

「ぷはははっ!ちょっと、マジウケんだけど!今日一でウケたわ!」

「今日は何してたんだよ」



くすりとも笑わずにそう言う亮に、静香は心外な顔をした。

「はー?人が何してようが‥」

「お前」



「この先ずっとここで今みたいに暮らして行くわけ?」



突然そう切り出した弟に、静香はキョトンと目を丸くする。



そして面倒臭そうに、息をハッと吐き捨てた。亮は静かな口調で、姉に向かって言葉を紡ぐ。

「はー‥まーた説教タイムかよ‥」

「お前もオレも、見栄張ってばっかの人生じゃんか」



「愚痴言ったり虚勢張ったり、オレらの行動なんて全部中身は空っぽだ。

あの頃に戻りたくないって、足掻いてるだけで」







上辺だけのその鎧を脱ぎ捨てたら、高校時代の自分が叫んでいる。

それは静香もそうなのだろう。

もしかしたら彼女は、もっと幼い自身の叫びしか聞こえないかもしれない‥。





亮は静香が握り締めた美術の本を見つめながら、低いトーンでこう続けた。

「でもそれが本心なら‥」



「誰かに焚き付けられたとかバカにされたからとかじゃなくて、

お前が心から望んでることならよ、オレはもう口出ししねぇよ」




「お前の好きにすりゃいいさ」



「‥何なのよ」

 

俯き加減でそう言った弟の言葉の真意を、静香は分かりかねた。

けれど亮は彼女の内側を見透かすかのように、その虚勢の裏側を指摘する。

「あたしはいつもやりたいように生きて来たわよ?金が問題なだけ」

「いつも美術をやるのやらねぇだの言うけど、口先だけだろ。実際に始めもしねーでよ。

そういう人の顔色窺うような真似止めろよ」


「はぁ?スポンサーは当然必要‥」



「素直になれって」



諭すようにそう言った亮に、静香の顔がピクリと引き攣った。

「は?このガキ‥」



「ちょっと!自分は今までやりたいように生きて来たこと棚に上げて、

よく平気な顔してそんなこと言えるわね!」




そう言って静香はブンブンと拳を振り上げた。

しかし目の前の弟は姉に食って掛かることなく、まるで予想外の言葉を口にしたのだった。

「だよな。すまん」







突然発せられた謝罪に、静香は驚いた。

いつもなら再び言い返して来るのが常だというのに。



張っていた虚勢が、ぐらりと揺れた。

静香の表情に、切なさと弱さが僅かに入り込む。



「アンタのせいで‥」と、掠れた声が口から漏れた。

それを聞いている亮は、姉の感情を全て受け入れるかのように沈黙している。



静香は剥がれかけた虚勢を、再び背負い直した。

目の前に居る弟に、怒りをぶつけて誤魔化しながら。

「アンタのせいで!!」



「あたしがこうなったの、アンタのせいだから!

明日アンタが出てったら楽譜全部燃やして、物干しに吊るして晒してやる!」




静香の怒号は続いていたが、おもむろに亮は立ち上がった。

静香は一瞬怯んだが、すぐにまた暴言を浴びせ始める。

「ちょ、聞いてんのかよ!コンクールにも出れないように、寝てる時アンタの指を全部‥」



「虚勢しか残ってねぇか」

「はぁ?」



亮はキャップを目深にかぶり直しながら、そうポツリと口にした。

そして家とは反対方向へと歩いて行く。



「どこ行くのよ!」



そう声を荒げる静香に、亮は振り返りもせずにそっけなく返答した。

「先寝てろ」



小さくなる背中。

まるで今にも消えてしまいそうな‥。



「‥‥‥‥」



静香は顔を顰めながら、去って行く弟の後ろ姿をじっと見つめていた。

まるで何かを悟ったような、いや、諦めたようなその口調が、

いつまでも鼓膜の裏にこびりついていた‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<虚勢の裏側>でした。

ようやく時間軸が元に戻りましたね。

そして久しぶりの亮さん登場!実に三ヶ月弱ぶりの登場です。

だんだんと皆の前から去って行く覚悟を決めているかのような亮さんが切ない‥!

(聡美のように号泣して引き止め隊)


亮さんが謝った直後の、ふと弱さが見える静香の表情も印象的でした。

スンキさん‥!この姉弟を幸せにしてあげて下さい‥!(T T)


次回は<彼女の確信>です。


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