Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(7)ー

2015-05-09 01:00:00 | 河村姉弟2<西条編~おかしな子供>
「あそこにある焼肉屋に来いって、先輩達からメールが来たろ?」



西条と淳がこの会話をした翌日、小さな事件が起こった。

西条が廊下を歩いていた河村亮の足を引っ掛け、「青田の子分野郎」と絡んだのだ。



日頃の鬱憤も相まって亮は切れ、思わず拳を振るった。





翌日。

その日、河村亮は青田淳のことが気になって仕方がなかった。



授業に集中しようとしても、やはり気になってしまう。

亮は何度も前方の席に座る淳の背中に目をやった。

 

先生の声など耳に入って来ない。亮は一人心の中でその疑問を呟いた。

今日って‥その集まる日なんじゃねーのか?



一昨日淳は、確かにこう言っていた。

「ふぅん‥一緒に遊んだらいいじゃないか。

明後日、◯◯区にある店に皆が集まることは知ってるよな?」




そして今日が、その日なのだ。

しかし亮はやはり自分には関係の無いことだと、自らに言い聞かせて心を誤魔化す。







時刻は十一時を指し、体育の時間になった。

淳に変わった様子は無い。






一時。昼食。

亮はやはり淳を度々窺ってみるが、変わった様子は無い。






そして更に時間は流れ、下校前の掃除の時刻になった。

亮はモップの柄にもたれかかりながら、モヤモヤとした思いを抱え続けていた。



自分には関係ない、と何度繰り返してみても、晴れない胸の内‥。



結局亮は意を決して、淳に聞いてみることにした。

「淳ー‥」



するとその亮の声を聞いたクラスメートが、淳の席の辺りを指さしてこう言った。

「青田探してんの?もういねーけど‥」



淳の席は既に空席だった。亮は眉を寄せて不思議に思う。

早くね?掃除もしねーで?



級長の淳が、掃除もせずに下校するなどいつもならあり得ない。

亮の胸中がザワザワと騒ぐ。

そしてその後ろでは傷だらけになった西条(昨日亮にやられた傷だ)が、同じく淳の席を睨んでいた。



西条は意を決したように頷くと、パッと踵を返して何処かへ向かった。

亮は西条の存在に気づき、「あん?」と声を掛ける。



しかし西条は振り向きもせずに歩いて行ってしまった。

亮は舌打ちをしながら「んだぁ?と苛立った。



しかし今は西条を気にしている場合ではない。淳のことを考えるべきだ。

なぜ淳は、掃除もせずに居なくなってしまったのかー‥。



亮の頭の中に、遅咲きの思春期を楽しむ淳の姿が浮かんで来た。

うう‥



飲酒、喫煙、女遊び‥。

いくら遅咲きの思春期といっても、これはちょっといただけない。亮は堪らず駆け出した。

「ったくよぉ!一応ちょっくら探さねーと!いくらなんでもそれはちょっと間違‥」



そう言いながら廊下を走る亮。

しかし角を曲がりかけた時、いきなり探していた人物に出くわした。

「どわああああーっ!」



「な‥なんだぁ?!」



突然亮からそう言われた淳は、キョトンとその場で立ち止まった。

二人は目を丸くして、暫し互いの姿を凝視する。

 

亮は人差し指で淳を指しながら、大きな声でこう問うた。

「お前なんでここにいんの?!」「え?」



淳は不思議そうに小首を傾げながら、自分がここに居る理由を話し出した。

「なんでって‥。雑用に行って、帰る途中だよ。

終わったら帰宅するつもり」
「はぁ?!」



まだその理由が理解しきれていない亮。しかし淳は平然と問い掛ける。

「一緒に行く?これ重くてさ」 「??」



亮の胸中がモヤモヤと曇る。そのまま二人は並んで歩き出した。

「え‥雑用って何の?てか掃除は?」「明日の一限に使う資料だって。今持って行って欲しいって先生が」

「てかなんでそれをお前一人に‥」

「別に俺一人ってわけじゃないさ。もう一人連れて来いって言ってたから、一緒に行こう。

掃除はしなくていいってさ」
 「お?おー‥」



行かねーことにしたってことか?と亮は、その平然とした淳の顔を見ながら考えた。

鼓膜の裏に、一昨日耳にした淳の台詞が過る。

”俺も呼ばれたんだ” ”西条も行く?”



淳は確かにそう言った。亮はその意味を考え直して合点が行く。

そっか‥自分が「行く」とは言ってねーわけだ



そんじゃアイツが一方的にムカついてたってワケか。

くく‥ウケるww
 



淳の巧みな言い回しに、西条も亮も勘違いをさせられていた。

亮は含み笑いを漏らしながら、淳の持っていた資料を半分持ってやる。

「手伝ったら何か奢ってくれるか~?」「分かったよ」



そうして二人は雑用を済ませ、共に帰宅した。



そして翌日、教室に西条の姿は無かった。










その時の淳の横顔を、亮はハッキリとその眼で見ていた。



そしてその眼を疑ったのだ。



亮は淳から目を逸らすと、一人思案に耽った。

いや‥元々仲悪かったんだから、嘲笑もあり得るか‥。

西条のことだから、あの性格のせいで三年をムカつかせて殴られたんだろうし‥。

それでも先輩達を裏切るってのは予想外だったな




周りではクラスメートが各々好きなようにお喋りを続けている。

「青田にも無駄に突っかかってたもんなー」「いつかこんなことになると思ってたよ」



亮は再び、淳の方へと視線を送った。

現在の亮はこの時のことを思い出し、こう回想している。

<あの時、気づくべきだったんだ>と。


「まーアイツ元から性格悪かったからなぁ」「何かやらかすと思ってたよ」



淳は何も言わずに前を向いていた。

その後姿を見ながら、亮はとあることに思い至る。

そういやあの先輩、仁の兄貴じゃなかったっけ?



そして亮は友人らと共に、城崎仁の嘆きを聞くことになるのだった。




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<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(7)ーでした。

日本語版では切れ切れにしか分からなかった西条事件が、今回時系列で描いてあるのでようやく流れが掴めた感じですね。

あと、ブログ記事を本家版と日本語版を混ぜて構成してみました。ちょっと読みにくいかな~^^;


次回は<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(8)ーです。

ようやく西条編、ラストです!


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<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(6)ー

2015-05-07 01:00:00 | 河村姉弟2<西条編~おかしな子供>


西条和夫はその日も、苛立ちながら廊下を歩いていた。

あの宿敵、青田淳のことを考えながら。

まぁ良いさ‥。いくら青田といっても、先輩達にまで手は出せねーだろ。

どうにかして俺も‥


 

先日見掛けた、淳と城崎が親しそうに会話をしていた場面‥。

そのことを考える度に、西条の心は焦りと苛立ちに歪んだ。



どうにかして青田淳を出し抜ける方法はないものか‥。

そんなことを考えている最中、西条は後ろから声を掛けられる。

「西条」



気配もなく名を呼ばれ、西条は思わずビクッと震えた。

振り返ると、あの男が自分の方を見ている。



西条はジャケットを整えると、眉を寄せて淳と相対した。

「何だよ?」

「担任の先生から雑用言い渡されたんだ。行こう」

「はぁ?」



突然の淳の申し入れに、西条は顔を顰めて言い返した。

「んだよ、何で俺がお前と?」

「さぁな。お前と俺の仲が良くないってこと、知ってるんじゃない」



淳はそっけなくそう言って、そのままスタスタと歩いて行った。

西条はその疎ましい背中を、煩わしさと共に睨んでいる。



「その前にお前に話がある」と西条は淳に言った。

淳は頷いて、二人はそのまま外へ歩いて行く。



河村亮は淳に声を掛けようと片手を上げかけたのだが、

西条が一緒に歩いているのを見てそれを止めた。

「あれ?」



なんだ?どうして二人が‥雑用?つーかなんでよりによって西条?

てか外出の許可取ったってこと?


 

亮の頭の中に、こんな方程式が思い浮かんだ。

先生からの用事で外出



トッポギ食べに行ける




亮の頭に浮かんだ、そんなサボリの方程式。

亮は淳を追いかけながら、一目散に駆けて行った‥。

「おいっ!一緒に行くっ!てかソイツじゃなくてオレを連れてけっつーの!」








西条と淳を追いかけて、亮は裏口の近くまで走り出た。

やがて彼らの背中を見つけた亮であったが、一つの疑問が頭の中に湧く。

あれ?何でそっちに?裏口もう過ぎてっぞ?

 

あちらの方向には特に何も無いはずだ。

なぜあんな所へ二人して消えて行くんだろう‥。



すると二人が向かった辺りから、何やら言い争う声が聞こえて来た。



亮はハッと思い当たる。

ケンカか?!



亮は、西条を殴る淳の姿を想像した。

だよな、淳もいい加減我慢の限界‥



そう思いながら亮は、踵を返そうとした。

我慢を重ねた幼馴染の爆発を、そっと知らぬふりしてやろうと。

しかし次の瞬間、ハッキリと西条の声が聞こえてきたのだった。

「お前一体何企んでんだよ?!」



亮は建物の陰から、二人の会話にそっと耳をそばだてる。

「ガキみてぇな真似は止めろ!男のくせによぉ、人をからかってー‥」



「どういうこと?」



西条の主張に、淳はまるで身に覚えがないというかの様な態度でそう返した。

西条は続ける。

「お前がわざと俺の前で先輩達と仲良さそうにしてっこと、

気づかないとでも思ったんか?」




ムカつく、と言いながら西条はずっと思っていたことを口に出した。

しかし淳はそれを聞いて動揺することなく、ケロッとした顔でこう聞き返す。

「ダメなのか?」



「俺が先輩達と親しくしたらダメなのか?皆で仲良くした方が良いじゃないか」

「お、俺とお前が?!頭大丈夫か?!



淳のその言葉に、むしろ西条の方が動揺してしまった。

淳はケロリとした体で、小首を傾げながら言葉を続ける。

「ふぅん‥一緒に遊んだらいいじゃないか。

明後日、◯◯区にある店に皆が集まることは知ってるよな?」


「◯◯区‥?明後日‥?」



淳の口から出たどこか聞き覚えのあるそのワードを、西条は反復した。

淳は西条のことを真っ直ぐ見つめながら言う。

「あれ?知らない?」



「あそこにある焼肉屋に来いって、先輩達からメールが来たろ?」



西条の鼓膜の裏に蘇るのは、つい先日その話をしていた城崎達の会話だった。

んじゃ◯◯区の店行くか。 いつにする? 後で決めよーぜ。 誰呼ぼっかなー。



決まったら連絡下さいねと、西条はあの日城崎達にそう言ってその場を後にした。

けれど今現在、彼らから連絡はまだ来ていない‥。


「西条は呼ばれてないの?」



思わず絶句した西条に向かって、淳は核心を突く言葉を無邪気なトーンで続けてくる。

「それじゃあ、西条も行く?行きたいならさ」



ピキ‥



まるで誘われなかった自分を憐れむかのようなその淳の態度に、西条は苛立った。

ふざけるなと声を上げながら、思わず淳の肩を強く叩く。

「んな汚ねぇ手に乗るかよ!お前何様のつもりだ?!」

「どうしたの?気を使ってあげたのに怒るなんて」



西条の口元がヒクヒクと引き攣った。

「は?怒る?誰が?



西条からの質問に、「あ、そうだ」と言って淳が切り返す。

「どうやらお前は口が軽いらしいから言っとくけど」



「はぁ?!

「あそこは先輩達が前から飲酒してた店だから、無闇に人に喋るんじゃないぞ。

どうせお前も後で遊びたくなるだろうしな。変に口を滑らせたら店も営業停止になっちゃうし、

良いことなんて何も無いだろう?」




淳はそう一息で言うと、サッと西条に背中を向けた。

「雑用、行きたくないんなら一人で行くよ。それじゃな」

 

そして淳は去って行った。

西条は今起こった出来事を思い返し、腸が煮えくり返る思いがする。



「クソがっ!!」



その一連のやりとりを、河村亮は建物の陰から全て見聞きしていた。

しかし胸中はモヤモヤと曇り、どこか腑に落ちない思いでいっぱいだった。

んだぁ?三年のヤンキー達と仲良くねーんじゃなかったのか?



亮は一人思案に暮れる。

ぜってーそんなとこに行くようなヤツじゃねーのに‥

今になって遅咲きの思春期突入?あ、でも親同士が知り合いなんだっけ?




フム、と考えてみる亮。

しかしやはり考え直し、そのままくるりと背を向けた。

まぁ‥オレが口出す問題じゃねーわな。

自分で決めたらいいさ。会長には内緒にしといてやんよ




頭ではそう決めたものの、やはり気になるのが人の常‥。

亮は何か割り切れない思いを抱えていた。

いやでも‥うーん‥



暫くその場でもう一度考えたが、考えれば考える程まとまらない。

最後には亮の大きな声が、木々の間に響いて消えた。

「あーもう!知るかっ!」





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<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(6)ーでした。

少し長めの文量になりました。

着々と淳が西条を罠に嵌めていきますね。

しかし亮さん、サボってトッポギ食べに行くとか‥笑

韓国の高校生の間では買い食い=トッポギなんでしょうかね。

日本で言うとなんだろう‥屋台で買い食い‥たこ焼き的な?

文化の違いが面白いですね^^


次回は<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(7)ーです。

西条のエピソード、いつまで続くのか‥。



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<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(5)ー

2015-05-05 01:00:00 | 河村姉弟2<西条編~おかしな子供>
その日河村亮は青田淳に、気になっていたことをさりげなく聞いた。

「お前、仁の兄貴達と仲良いの?」 「ううん。なんで?」



二人は並んで歩きながら会話を続ける。

「いや、この前見かけた時仲良さそうに見えたからよ。仁は良いヤツだけど、兄貴達はタチ悪そうじゃんか~」

「仁の兄貴だから挨拶しただけだよ。親同士も知り合いだし」



その淳からの返答は、あらまし亮が予想していたものだったが、一応軽く釘を刺しておくことにした。

「仲良くしてんじゃねーぞ?」「してないってば」



そして亮は、ぶっきらぼうに話を終わらせる。

「ならいーや。売店いこーぜ」



亮はブツブツと西条和夫についての文句を言いながら、淳の隣を歩いた。

「てか西条のヤツひつけーんだよなぁ。

まるで夏の蚊みてーにプンプンプンプン‥。なんとか駆除出来ねーかな」


「気にしないのが一番だよ」



二人は西条について話をしながら、売店へと歩を進める。


そして同じ頃、城崎兄のグループと西条和夫は、いつもの場所にたむろって会話していた。

「クソ、センター試験前なのに担任が遊ばしてくんねー」



彼らの足元に落ちた、幾本もの煙草の吸殻。

煙と共に不満も吐き出しながら、彼らは窮屈な今を嘆く。

「担任の野郎、ネカフェにまで押しかけて来やがって‥」「マジうぜー」



「センターだからって縛り付けたら逆にストレス溜まるっつーのによ!」「なー」「ですよね!」

「ストレス発散する場所作ってくれるわけじゃねーのに、うっせーよ」



そのグループの中で、一番ストレス過多なのはやはり城崎仁の兄のようだった。

素行の悪さによる担任からのマークに加え、厳格な父からの目もあるらしい。

「前にクラブ行ったのオヤジにバレてクッソ困ったっつーの。今度捕まえたら24時間監視するってよ」

「あ、そういや◯◯区にある飯屋、超良いってよ。中坊にも酒売るって」「え?あそこまだ捕まってねーの?」

「卒業前に焼き肉でお祝いっしょ」「それいいっすね!」



「てか正直、ワインより焼酎じゃね?はー‥先公ども、酒飲んだらピーチクパーチク‥」

「もーいーや。女の子達呼ぼーぜ」「もうとっくに連絡つけたっつーの」



酒に煙草に女の子‥。西条は相槌を打つしか出来ない。

するとそんな西条に向かって、城崎が言葉を掛ける。

「てかお前なんで教室帰んねーんだよ。長居しすぎじゃね?」

「ああ、帰るッス帰るッス!」



城崎はすぐに仲間の方に向き直ると、会合の計画の続きを進めた。

「んじゃその◯◯区の店行くか」「いつにする?」「後で決めよーぜ」「誰呼ぼっかなー」

「決まったら連絡下さいね!」



西条は去り際にそう約束を取り付けると、教室へ帰る為その場に立ち上がった。

城崎達は会話を続けている。



ようやく自分もこの先輩達の仲間になることが出来たと、西条の胸は充足感でいっぱいだった。

青田淳に対抗出来る後ろ盾が、今度こそ手に入るのだと。




西条は上機嫌で廊下を歩いた。

これよこれ♪こういうこと♪



そんな西条の姿を見た河村亮は、隣に居る副級長の仁に話し掛ける。

「アイツ最近あんま教室に居なくね?」

「兄貴が結構アイツにかまってやってるらしい。

ずっとツルンでんのかな?分かんねーけど」




二人は怪訝そうな面持ちのまま、その場を後にした。

城崎達を探す西条は笑顔を浮かべながら、廊下の角を曲がる。



するとそこに、城崎と青田淳の姿があった。二人は親しげに会話する。

「よぉ!淳!CD、サンキューな。お前んちには何でもあんのなー」「いえいえ」

 

親密そうな二人の姿を見て、西条は思わず口をあんぐりと開けて固まった。

彼にとっては想定外の現状だ。



すると淳は廊下の角に西条の姿を見つけ、ニコリと微笑む。



淳と城崎は会話を続けている。

西条はすぐに踵を返し、二人の元から立ち去った。

「あ、そういや仁から聞いたけど、お前一年の◯◯から

告られたらしーな?あの子可愛いよなー」
「仁がそんなことを?」



西条の心は苛立った。

中庭に転がっていた空き缶を蹴飛ばし、大きな声で叫ぶ。

「クソッ!!」





それからというもの、西条和夫は常に淳のことを睨んでは苛立っていた。

そんな西条の姿を、亮はじっと観察している。

わざと見せつけやがって‥!あの野郎‥!



ウッゼェ‥



ウゼェんだよ!



見かねた亮が、西条と淳の間に割って出てサインを送る。

見てんぞコラ



西条は舌打ちをしながら、

アイツもムカつく!と顔を顰める。




西条和夫と青田淳の間には、常に小さなさざ波が立っていた。

そして彼がその侵食に耐えかねた頃、一つの事件が起こる。


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<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(5)ーでした。

酒に煙草に女に‥絵に書いたようなヤンチャですね‥仁のお兄さんたちは‥

そして淳が城崎に何のCDを貸したのか気になるところです。


次回は<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(6)ーです。


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<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(4)ー

2015-05-03 01:00:00 | 河村姉弟2<西条編~おかしな子供>
西条和夫の欲しいもの。

それは青田淳に対抗できる、強力な後ろ盾だった。

「くっそ体操服ねーよ」「ニコリンまた超怒んじゃね?」



体育教師のアダ名を口に出しつつ、城崎達は舌打ちをして顔を顰めた。

そんな彼らを見て、すかさず西条が声を掛ける。

「あ、俺の貸しましょうか?」「お?マジ?」

「ちょ、待ってて下さい!」



「どうぞ!」「これM?」「そうっす!」



「コイツいい奴じゃねーか」「ハハハ」



西条はその後ろ盾を手に入れるべく、城崎仁の兄のグループと、接点をとり続ける。



「てかなんでお前俺らとつるんでんの?お前まだ二年だろ?」



煙草の煙を燻らせながら、城崎は西条に向かってそう言った。

西条は頭に手をやりながら、自分がここに居る理由を話し出す。

「あ‥それは‥」



「最近ムカつく奴がいて‥なんか色々ウゼーんすよね。

ムカつくからクラスにも居たくねーし、クラスメートも皆ガキくせーし‥」




それを聞いた城崎は、西条に向かってこう言った。

「シメっか?」



願ってもない展開に、西条は思わず生唾を飲み込んだ。

巨大な後ろ盾が、ようやく手に入るかもしれないー‥。

「マジすか?」「おお。一体誰がー‥」

「こんにちは、先輩方」



しかし彼らが会話を続けるより先に、その人物は彼らに声を掛けてきた。

皆その声のする方を、一斉に振り返る。



彼は、城崎達に向かって鉄壁の笑顔を浮かべ、言葉を続けた。

「うちのクラスの仁の、お兄さんですよね?俺、仁のクラスメートなんです」







突如現れた青田淳。西条は目を丸くして彼を見ていた。

城崎は立ち上がりながら、淳を友好的なムードで迎える。

「おお!えっと‥青田淳‥だよな?名前合ってっか?」「はい、以前集会の時にお会いしましたよね」

「あーそうだそうだ、仁が副級長でコイツが級長」「へ~マジか!ハハハ!」



淳の登場で、皆はワイワイと盛り上がった。

暫し目を丸くしていた西条は、堪らず城崎に声を掛ける。

「あ、あのっ‥」



しかし城崎は西条の方を見もしないまま、

手をシッシッと軽く振って西条をいなした。



城崎は淳にばかり声を掛け続ける。

「お前背ぇ高ぇなー」



彼らとやり取りを重ねる淳が、不意に西条の方を向いた。

意味深で曖昧な笑顔を浮かべながら。



西条は淳のその表情を見て、思わず顔を顰めた。

あと一歩のところで後ろ盾を手に入れ損なったことを、見透かされたような気がするー‥。









河村亮はヘッドホンで音楽を聴きながら、ゴキゲンで中庭を歩いていた。

するとそんな彼の背後から、一人の男がドンとぶつかる。

「うおっ!ビビった!!」



亮はヘッドホンを外すと、西条に向かってギャンギャンとがなり立てた。

「テメェ!目ン玉ついてねーのか?!

オレの存在に気づかんとは‥シックスセンス皆無かよ!」




しかし西条は振り向きもせず、そのままスタスタと歩いて行ってしまった。

無視かよ‥と呟きながら亮は、額に青筋を浮かべる。







するとふと、目に留まる光景があった。

亮は眉を寄せながら、見覚えのある人物の背中をそこに見つける。

「あっれー?」



三年のヤンキー御一行‥と、淳?

 

優等生の淳には、まるで似つかわしくない不良グループ。

なぜ淳がそこにいるのか、亮には全く分からない。



なんでまたあんな奴らと?タチ悪ぃのに‥。アイツが付き合うタイプじゃなくねぇ?



友人も、彼女だって、淳はいつも同じような優等生タイプとばかり付き合っている。

そんな淳がどうして三年の不良グループと‥?



色々合点のいかないことばかりだったが、とりあえず亮は彼らから視線を外した。

再びヘッドホンを付け直す。

ま‥親同士が知り合いなのかもしんねーし、オレが口出すことじゃねーか‥



そして亮はそのまま、その場を後にした。

微かな閊えを心の中に抱えながらも。





そしてその後、西条和夫は事あるごとに淳に突っかかり続ける。







そしていつだって淳は言い返さず、亮は西条に楯突いた。


現在の亮は淳に、あの頃のことをこう続ける。


そして アイツはずっとお前の気に障り続けた




さざ波は幾度も打ち寄せ、淳をすり減らす。

徐々に彼の侵してはならない領域まで、波は侵食して行った。





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<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(4)ーでした。


西条が淳の名前を出す前に、城崎の前に姿を現すお化け淳‥。

この頃から間の良さはピカイチのようですね。


この西条編は淳と亮が高校二年の時の出来事なので、

西条編が終わり次第記事をそちらの順番に置き換えます。ですのでブログトップからは見れず、

<河村姉弟>カテゴリに時系列順で入りますので、よろしくお願いします。


次回は<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(5)ーです。

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<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(3)ー

2015-05-01 01:00:00 | 河村姉弟2<西条編~おかしな子供>
淳は廊下を歩いて行く西条の後ろ姿をじっと見ていた。

まるでこれから起こる様々な出来事を、見通すかのような眼差しでー‥。








教室にて着席していた淳に向かって、西条は開口一番こう言った。

「おい。明日担任の誕生日だよな?領収書見せろよ」



西条は以前淳が口にした”領収書を見せる”約束を守ってもらうべく、領収書の開示を要求する。

しかし淳はキョトンとした顔でこう返した。「悪い、まだ買ってないんだ」と。



その返事を聞いた西条は、あからさまに顔を曇らせた。

淳は彼を見上げながら、その表情の意味を図りかねる。西条は不満げに口を開いた。

「おいおい、金ちょろまかすつもりじゃねーだろうな?」

「まさか。昨日行ったんだけど、店が定休日だったんだ」



淳はそう真実を告げた。

しかし西条は到底納得出来ないといった表情を浮かべながら、

フンと息を吐き捨てて淳の元を去る。









そして数時間後、淳は職員室にて、担任の教師に尋問されることとなる。

「あなた、クラスの皆からお金を集めてるんですって?」



担任教師は柔らかな、それでいて厳しさを含んだ口調で淳に問い掛けた。

「どんな理由でかしら?」



キョトンとした表情で「はい?」と聞き返す淳に、

担任はまさかと思いつつも、その真実の追及を続けた。

「あなたが横領してるって聞いて‥」「横‥」



突然降って湧いた横領疑惑‥。淳は脱力しながら質問する。

「誰がそんなことを‥」

「それは聞かないでちょうだい。それで‥事実なの?」



担任は居心地悪そうにしながらも、慎重に言葉を続けた。

「淳君、あなたがそんな子じゃないってことは分かってるけど、確認はしとかなくてはいけないの。

特に校内で行事があるわけじゃないし‥あなたがお金を集める理由が分からないわ」




こんな密告をする人間は一人しか居ない。

淳は頭の中に西条の姿を思い浮かべながらも、素直に真実を打ち明けることにした。

「‥実は先生の誕生日に、プレゼントをあげようって話になってて‥」

「えぇっ?私の誕生日?!」



担任は驚いて声を上げた後、口をつぐんで俯いた。

なんとも気まずい空気が、二人の間に立ち込める。



淳はその真実の詳細を、幾分申し訳無さそうな態度で説明した。

「もともと今日までには買ってくる予定だったんですけど、予定してたお店が定休日だったんで、遅くなってしまって‥。

まさか横領だなんて‥そんなことを考える人がいるなんて思いもしませんでした。お騒がせしてしまってすみません」


「ううん!いいのよ」



真実の在処を耳にした担任は胸を撫で下ろしながら、ようやく口元に微笑みを浮かべた。

そして淳に向かって、担任教師として思う所を口にする。

「そっか、淳君も皆も先生の誕生日のことまで考えてくれてたなんて、嬉しいわ。

今日はまだ誕生日ではないし、当日までに買って来れるなら大事にはならないでしょう。

それでも皆への約束の日に間に合わなかったから、抗議する子が出たのでしょうね。

友達からお金を集めるっていうのはデリケートな問題だから、級長である淳君から、

説明はして然るべきだったんじゃないかな」


 

教師の話を聞いた淳は、言い返すこと無く素直に頭を下げた。

「はい。すみませんでした」



教師は気まずそうにしながら、淳の気持ちを慮って口を開く。

「嫌な気持ちになっちゃったかしら?

それでも問題になった以上、先生としては確認しなくちゃいけないから‥」


「いえ、大丈夫ですよ」



「皆に聞いて回ったり喧嘩したりしちゃダメよ。

そんな疑惑がわくこともあるんだってことを、分かってちょうだいね」


「はい。勿論です」



少し説教じみた教師の言葉を受けても、淳は微笑みを絶やさず頷いた。

担任はホッとした顔をしながら、いい子ねと口に出す。



その後は友好的なムードだった。淳と担任教師は笑いを交えながら二言三言会話する。

「とにかくありがとうね。サプライズにはならなくなっちゃったけど‥」

「それでもまだどんなプレゼントかは知らないでしょう?楽しみにしていて下さいね」

「あらあら‥ふふふ」







西条が教師に密告した事実は、すぐに教室の皆に知れ渡った。

「おい!西条!お前なんだろ?!」



教室にて、西条を追及する荒い声が響く。しかし西条は、ゲーム片手に知らん顔だ。

「ちげーよ」「何がちげーよだよ!俺職員室でお前のこと見たぞ!

サプライズの意味知ってっか?!しらばっくれてんじゃねーよ!つーか青田が金踏み倒すような真似するわけねーし!」




西条はゲームをしながら、ブツブツと彼らに向かって口を開く。もう教室は大騒ぎだ。

「おいおいそりゃちげーだろ、金持ちの奴らの方がその辺ケチくさいんじゃないかってこと。

まぁ青田がそういう奴だって言ってるわけじゃねーけど」
「コイツマジ‥

「とにかくこんなことになって‥皆ごめんな。俺が買いそびれたのは事実なんだし‥」



淳は皆に向かって場を治める言葉を掛ける。

「それでもせっかくの先生のバースデーなんだからさ、皆嫌な気持ちは忘れて準備しようよ」



級長の淳に言われては仕方が無いと、皆は溜息を吐きながら三々五々解散した。

その中で河村亮は、淳の姿を探す。



「おい、担任何だって?」「ん?」



亮からの問いに、淳は口を開こうとした。

「ただ‥」



しかしすぐに口を噤む。

「何でもないよ」



淳のその返答を聞いた亮は、軽く舌打ちした。

そして西条和夫の方を向きながら、中指を立てて見せる。

「あのクソ野郎‥F◯CK食らえ!」



聞こえよがしに発された亮の言葉を聞き、西条もまた顔を顰めた。

けれどあの当時、クラスメート全員が同じような感情を西条に抱いていたに違いない。


亮はあの頃を思い出して、現在の淳にこう問い掛ける。


そんでまた、”適当な線”を超えたんだろ




淳の心の前にある、一つのボーダー。

彼が標的を排除する、一つの指標。

”Across the line.”


西条は確かにそれを侵した。

河村亮の、回想は続く。



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<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(3)ーでした。

皆様、お久しぶりです

出産報告の記事に沢山の温かいコメント、ありがとうございました

今は日々の育児に奮闘している毎日です


ブログの方ですが、これから一日おきにアップしていく予定です♪

またこれからよろしくお願いします!


次回は<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(4)ー。

西条編、まだまだ続きます‥。



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