ヒトリシズカは、日本に滞在していたシーボルトによって1828 年に新種として発表されたもので、その学名はChloranthus japonicus Sieboldです。 しかし最近の研究で、どうやらシーボルトはヒトリシズカとフタリシズカを混同していたらしいことがわかりました。
オランダのライデン大学にはシーボルトが日本で採集した標本がありこれらを検討したところ、シーボルトがヒトリシズカとして採集した標本にはフタリシズカとヒトリシズカが混じっていて、主体はフタリシズカであることが判明しました。 さらにヒトリシズカについてはその変種ではないかとシーボルトは考えていたこともわかりました。
したがって、ヒトリシズカにつけられた学名 C. japonicus はフタリシズカに対してのものとなるのですが、フタリシズカには1818年にすでに別の学者によってC. serratusという学名が発表されているため優先権があり、シーボルトの1828年の学名は使われず現行のままです。
ではヒトリシズカの学名はどうなるのでしょう。
これはシーボルトが発表した以後の学名のなかから最も古いものが正名として浮上します。1857年に、Asa Gray により記載された Tricerandra quadrifolia がそうですが、現在 Tricerandra は使われていないので 新しい組み合わせとして Chloranthus quadrifolius (A.Gray) H.Ohba&S.Akiyama の学名が与えられました。
今年の春はヒトリシズカとフタリシズカをあらためて見直してシーボルトに思いを馳せてみたいと考えています。