X字形雄しべの葯のくびれた部分からは、つぶれた形の小型の花粉を出しています。
このX字形雄しべの花粉に、水を吸わせると膨らんで丸みをおびた楕円形の花粉になります。 どうやらこの花粉は、花粉の中に細胞質をもたない、外壁だけの空っぽの花粉だと考えられます。
X字形雄しべの花粉が細胞質をもたない外壁だけの空っぽの花粉ならば、当然、雄の機能は無いことになります。 このX字形雄しべの花粉は、今のところ昆虫の食用として提供されているのではないかと推測されているそうです。
・・・昨日の続きです。
ツユクサの“仮雄しべ” と呼ばれているY字形雄しべの花粉は、種子を作ることができないのでしょうか?
受粉に成功した2日後、ツユクサの花柄は反曲し子房が大きくなってきました。
6日後、子房がかなり大きくなり、果実の形をしてきました。
花を15個ほど調べましたが、なんと15個のうち14個がY字形雄しべの花粉で結実しました。 つまり、Y字形雄しべは“仮雄しべ”ではなく、『正常な雄しべ』ということになります。
ツユクサのY字形雄しべと、 3本のX字形雄しべは“仮雄しべ” と呼ばれていて、「花粉を出していない雄しべである」と書かれている図鑑などもあります。 しかし、実際に観察してみると、どちらの雄しべからも花粉を出しています。
もしかしたら、このY字形雄しべの花粉は、雄としての機能が無いために”仮雄しべ”とされているのかもしれません。 そこで、この花粉が種子を作ることができるのかどうか調べてみました。
前日の午後に、明日咲くつぼみがついているツユクサを集め、X字形雄しべ3個とO字形雄しべ2個を取り除きます。
翌朝、ツユクサの花が開きます。(上の写真) 花には雌しべとY字形雄しべだけがあり、雌しべの柱頭には、まだ花粉が着いていません。
この花の雌しべに、同様に処理した花のY字形雄しべの花粉を着け、花粉管が伸びるかどうか見てみますと、
みごとに、Y字形雄しべの花粉は花粉管を伸ばしていました。
次は、果実ができるかどうかです。(・・・続きます)
ヤナギバルイラソウの種子を観察していましたところ、面白い特徴を発見しました!!
ヤナギバルイラソウは果実が裂けて種子を飛ばしますが、飛ばされていった種子が水分に触れると、一気に水分を吸い取って何倍にもふくれあがります。
*詳しく知りたい方は、「ヤナギバルイラソウの種子」をご覧下さい。 驚きですよ。
ヤナギバルイラソウはメキシコ原産の外来植物で、まだ帰化植物図鑑にも載っていない植物のようです。
果実は、完全に熟すとパチンと音をたてて、縦に真っ二つに割れて、平べったい種子をはじき飛ばします。 開いた果実にはトゲのようなものが見られます。 これは胚珠の柄が発達した弾力性のある刺状の「射出器」で、果実が裂けると同時に種子をはじきとばす働きを持っています。
観察中にちょうど果実が裂けて種子が顔に当たり、痛いくらいの勢いでした。 すぐに飛んだ種子を探すと、約2mほど先まで飛んでいた種子もありました。
裂けた果実のようすは、まるで映画のジョーズが口を大きく開いたようですね。
ツユクサの気孔のようす
ツユクサとケツユクサは、毛以外にも、花弁や苞のようすが異なっています。さらに、 「ツユクサの庭」さんのHPには、ツユクサとケツユクサは、両者は気孔の大きさが違うという興味深い論文のことが書かれていました。
ケツユクサの気孔のようす
私もそれぞれの気孔を観察しましたところ、ケツユクサの方が気孔がかなり小さいことが観察されました。 (2つの写真は同じ倍率で撮影しています)
ツユクサに毛があるタイプは、最近の研究では、ツユクサの有毛型は「2n=44または46」だそうです。 一方、普通に多く見られるツユクサの無毛型は「2n=88」の倍数異数体だそうです。(藤島弘純・橘伸一1973遺伝)
学名は、
Commelina communis L.・・・ツユクサ (無毛型 2n=88)
Commelina communis L. f. ciliata Pennell・・・ ケツユクサ (有毛型 2n=44または46)
と、ケツユクサはツユクサの1品種に位置づけられています。