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劇作家・小説家木下順二(代表作「夕鶴」)の忌日

2007-10-30 | 人物
今日(10月30日)は劇作家・小説家木下順二(代表作「夕鶴」)の2006年の忌日。
新聞などの木下順二 評には、”民話劇の無垢(むく)な魂をうたい、戦争責任と人間のモラルを厳しく問い、天空から人の営みと運命を見つめる壮大な叙事詩劇に到達した、戦後新劇の良心だった。 ”(朝日)などと有るが、私は、余り難しいことを題材とした文学は好みではないので、よく知らないが、各地に伝わる民話の「鶴の恩返し」や「彦市ばなし」、「三年寝太郎」などを題材とした劇作家としては知っている。
第二次世界大戦中に、明治大学講師を務めるかたわら、『彦市ばなし』などの民話劇を書きはじめ、その中の1編「鶴女房」が戦後改稿され1949(昭和24)年「婦人公論」に『夕鶴』として発表した。戯曲「夕鶴」の原型は「鶴の恩返し」として現在も親しまれる佐渡島の民話「鶴女房」であり、木下が主催した劇団『ぶどうの会』が、主演山本安英で戯曲夕鶴」を初演したのはこの年のことであった。山本は、初演以来、1986(昭和61)年まで37年間、公演数1037回主役・つうを演じた。山本存命中は、他のプロへの上演許可を出さなかったといわれている。山本は 初演から2年後の1950(昭和25)年には『ゆうづる』つうの演技で、第1回芸能選奨文部大臣賞を受賞している。山本逝去(1993年10月20日)後、プロの国内上演を断っていたが、1997(平成 9)年に、坂東玉三郎がつう、渡辺徹が与ひょうを演じた舞台も話題を呼び好評を得た。また、 團伊玖磨によって、オペラ化(夕鶴 オペラ)もされたが、この作品は、一言一句戯曲を変更してはならないという木下からの承諾条件の下に作曲されたという。
この作品は最初から山本安英に演じさせる為に書き、原稿を書き終えるとすぐ俳優山本の家に行き、朗読してもらった。そして、その時の感想を、山本は、「深い美しさが胸にしみ入るようだと書いていると言う。また、木下は「国家が絶叫する日本ではない日本を描きたかった。昔話に隠された日本的なものの本来の美しさを描きたかったと言っていたそうだ。(朝日クロニクル「週刊20世紀」)
あるとき与ひょうは傷ついた鶴を助ける。数日後、美しい女つうが女房にして欲しいとやってくる。つうは、与ひょうの喜ぶ顔を見たくて鶴の千羽織といわれる世にも美しい布を織った。噂を聞きつけた惣どと運ずが一儲けしようと与ひょうをそそのかす。つうは不安を抱きながらも与ひょうのために布を織ることにするが・・・。
つうの夫、与ひょうはカネの誘惑に勝てず、鶴の化身であるつうに布を織らせカネにに代えようとする。その背後には夫を操る2人の男がいることに気付いたつうは叫ぶ。「ねえ、どこにいるの?あんた方は」。『おかね』って、そんなにほしいものなの」「あんたはだんだんに変わっていく(略)。あの恐ろしい人たちとおんなじになっていってしまう」。・・・お金の魔力に心を奪われた与ひょうに驚愕(きょうがく)するつうの叫びは、戦後のモノ・カネへの執着が化け物化してきた現状への、木下のヒロインつうを通じての鮮烈なメッセージでもあったのだが・・・。
因みに、人間と違った種類の存在と人間とが結婚する説話異類婚姻譚という。世界的に分布し、日本においても多く見られる説話類型で、様々な角度から分析することが出来るようであるが、民俗学者、文化人類学者の関敬吾説によると、異類女房 つまり、人間の男と動物の婚姻のものは、見るなのタブーを犯すことで最後には離別する話になっているものが多く、鶴女房 (例:鶴の恩返し、木下順二の『夕鶴』 )もその中の1つと見られていようだ。
(画像は、木下順二作、坂東弥十郎演出、『夕鶴』。つう:坂東玉三郎、与ひょう:渡辺徹。これは、1998年11月9日、大阪・梅田「シアター・ドラマシティー」での公演のもの。コレクションのチラシより)
参考:
木下順二 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%A8%E4%B8%8B%E9%A0%86%E4%BA%8C
記憶の森/鶴女房
http://www.h4.dion.ne.jp/~sa-ya/html/mukashi/kaisetsu/tsuru.html
團伊玖磨「パイプのけむり」全仕事/「夕鶴」年度別演奏回数記録
http://www.tasc.or.jp/~pipedan/other/newpage9003yuuduru%20kouenkiroku2.htm
木下順二集
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/09/4/091351+.html
芸術選奨 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%B8%E8%A1%93%E9%81%B8%E5%A5%A8
彦一 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BD%A6%E4%B8%80
三年寝太郎 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%B9%B4%E5%AF%9D%E5%A4%AA%E9%83%8E
異類婚姻譚 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%95%B0%E9%A1%9E%E5%A9%9A%E5%A7%BB%E8%AD%9A

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2 コメント

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夕鶴の公演について (早崎日出太)
2008-02-14 12:32:37
團伊玖磨パイプのけむり全仕事をリンクしていただき有難うございます。近日中にオペラの詳細全データをUpするつもリでいます。山本さんの舞台と團伊玖磨さんのお芝居は、今の世の中を予言したようで競うように上演されたステージをどれだけの人がみたのでしょう。でも、日本の今は全国民与ひょうじゃないでしょうか。後の祭り鶴はすでに天空に帰ってしまいましたね。團伊玖磨さんのパイプのけむりが中国訳本が2007年度中国でもっとも美しい本に選ばれ世界でもっとも美しい本にもノミネートされています。
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夕鶴 (よーさん)
2008-02-15 09:49:37
早崎さん、書き込み有り難う!團伊玖磨パイプのけむり全仕事かってにリンクさせてもらってすみません。山本さんの夕鶴の舞台は本当に長く続いたがそれは、演技力だけでなく夕鶴の内容が今の時代を予言したいいものだったからでしょう。團伊玖磨さんのパイプのけむりも楽しく読ませてもらいましたが、良い舞台、良い本はずっと誰かが受け継いでゆかなければいけませんよね。それにしても、今の時代、厭な時代になってしまいましたね。
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