福岡発 コリアフリークなBlog

韓国や韓国語に関するオタクの雑学メモ。韓国映画はネタバレあり。 Since 2005/9.14

離見の見

2007年02月14日 |  〇文化・歴史

離見(이견)의 見(견)」(離見の見)なる韓国語の見出しの付いた
コラム記事を読んだ。このブログでも何度か記録したことのある
朝鮮日報の同じ東京特派員の記事だ。

記事の書き出しは日本語の単語で始まっていた。

・・ ・・

離見の見(리켄노켄)’. 일본 전통극 ‘노(能)’에서 연기의
최고 경지를 이르는 말이다.
(「離見の見」。この言葉は日本の伝統芸能である「能」で芸の
最高の境地を表す言葉だ。)

・・ ・・

「離見の見」とは能の大家、世阿弥の残した有名な言葉である。
詳しくは知らないが、客席から見える自分(演技者)の姿を
見る心の目とでも言えばよいのか。簡単に言ってしまえば
「客観的な視点」という意味だろう。

それにしても、まさか、こういう言葉に韓国の新聞紙上(電子版)で
出くわすとは思ってもいなかった。

内容的には、外国人の「ヲタク」ですら襟を正したくなるような
韓国社会への「客観的」かつ辛口の苦言だった。

もしかすると、本国において愛国的な読者から「自虐」的だとの
批判を招くかもしれない。ある意味では勇気のいる「告発」だろう。

朝鮮日報については常々批判的な記事の多い「ヲタク」の
ブログだが、今回ばかりは素直に脱帽した。

--- 朝鮮日報もなかなか奥が深い。

大きなお世話であることは重々、承知はしているが、世阿弥の
「離見の見」という発想を、是非、信頼性の高い紙面づくりに
生かして行って欲しいものだ。

朝鮮日報には、りっぱな日本語版サイトもあるが、この東京
特派員に敬意を表しエールを送る意味で、敢えて全文の翻訳
練習に取り組んでみた。

なお、紙面の都合で韓国語本文の記録は省略した。

・・・・・・・・・・・・・・・

[特派員コラム] 離見の見
(朝鮮日報 2月12日)

「離見の見」。この言葉は日本の伝統芸能である「能」の世界に
おいて芸の最高の境地を指す言葉だ。「心の目」で客席から
自分の姿を見つめる姿勢だと言う。他人の立場に立って他人の
気持ちを推し量る「易地思之」(韓国でよく使われる4字熟語)
よりも一歩先を行く思考法だ。「離見」の姿勢で次のような想像を
してみることも韓国を理解する手助けになるような気がする。

舞台は日本の国会質問。首相と野党議員が日本の国政運営の
あり方をめぐって次のようなやり取りをしたと想像して見よう。

野党議員:「このままでは日本人が韓国人のアカすりをする時代が
やってくるかもしれないと考えています」

首相:「政府が政策をあやまって韓国人の身体を洗ってあげる...
(笑い)何ておっしゃいました?」

野党議員:「『アカすり』ですよ!」

首相:「アカすりをしてやる時代が来るなどという表現は言いすぎ
ではないかと思います」

野党議員:「私もそういう可能性がなければいいと思ってます。
心配だから言っているんですよ!」

首相:「そんな可能性はありません。そうはなりません!」

想像はここまでだ。しかし、実際、多くの日本人が韓国でアカすり
観光を楽しんでいるのは事実だ。だからと言って、もし日本の政府を
批判するために、わざわざ他国の生業を引き合いに出す国会
議員や「そんなこと(日本人が韓国人のアカをすること)にはなら
ない」とむきになって答弁する日本の首相を見たらとしたら、怒りや
屈辱感を感じない韓国人がいるだろうか?

もちろん、この日本での国会論議はあくまで架空の話だ。しかし、
日本の首相を韓国のハン・ミョンスク首相、日本の野党議員を
ハンナラ党のチョン・ドゥオン議員、「アカすりと韓国人」を
「足マッサージと中国人」に置き換えさえすれば、そのまま韓国の
国会の公式議事録に記録された8日のやり取りになってしまう。

チョン議員が「(中国が文化大革命をする間、韓国が経済開発に
取り組んだ)結果、現在、中国に足マッサージ観光に行ける」と
発言するや、ハン首相は「ノ・ムヒョン大統領の失政で、韓国人が
中国人に足マッサージをする時代が来るなどという表現は言い
すぎだ」と反論した。何度繰り返して聞いても、「言いすぎた」のは
中国人に対してではなく、大統領と政府に対して「言いすぎた」と
いう意味にしか取れない。

このやり取りを中国の国民が聞いたと想像して見よう。「離見」の
目で見れば、言葉には尽くせない屈辱感を感じる中国人と、少し
ばかり経済が発展したのをさいわいに、口にしていいことと
悪いこともわきまえない韓国人の歪んだ自画像が鮮明に
浮かび上がって来はしないだろうか?

次にこういう仮定をして見よう。「アカすり発言」の三日後、
今度は日本の不法滞在者収容施設に入っていた韓国人8人が
火災事故で死亡した。犠牲者らは日本政府が管轄する公共
施設の中で、日本語で「鍵を開けてくれ!」と何度叫んでも誰も
助けてくれなかった。火災報知器すら鳴らなかった。もちろん、
これも舞台を韓国に、犠牲者を中国人に変えれば仮定の話では
なく現実だ(※)。

(※)2月11日、全羅南道麗水出入国管理収容所の火災事故で
9人の外国人収容者(うち8人が中国人)が犠牲になるという
惨事が起きた。

現在、日本には約4万人の韓国人が不法滞在している。毎年、
約8000人が収容所を経由して韓国に強制送還されている。
韓国は不法滞在者の数で1位(中国が2位)、強制送還者の数で
2位(中国が1位)。お金を稼ぎに技能・技術ビザで日本に入国する
外国人の中でも、中国、ネパール、インドに次いで韓国は4番目に
多い。依然として多くの韓国人が日本で日本人の足をマッサージし
身体を洗っているのだ。もし、韓国人が中国人労働者を扱うような
やり方で日本人が韓国人を扱ったとしたら、韓国人はどれほどの
悲しみと怒りをおぼえたことだろう。

韓国人は他国の人間を見下す立場にはない。他人を見下せば、
いつでも、どこからでもそれがブーメランとなってわが身に
跳ね返ってくる立場なのだ。しかし、韓国人は自分自身について
あまりに知らなすぎる。韓国人の言動や行いがどんな憎しみを
買い、どんな結果をもたらすのかについて全く無関心だ。客席から
見れば大げさな演技ばかりする大根役者が自分なのかもしれ
ない、などという省察をすることもない。「離見」の目に映る韓国の
姿がだんだん恐ろしくなってくる。

(終わり)

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