僕と猫のブルーズ

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大林宣彦「海辺の映画館-キネマの玉手箱」

2020年08月16日 | Art・本・映画
昨日の終戦記念日。銀座に大林宣彦監督の遺作「海辺の映画館-キネマの玉手箱」を観に行った。
大林監督の映画を見るのは「ふたり」以来、実に20年ぶり。
ただ、事前に監督のインタビューを各所で読んだり観たりしていてこの作品が
反戦へのメッセージを色濃く反映した作品であることは知っていた。


以下、感想を。唯、オレ如きが感想を上手く書ける作品じゃありません。
この映画、トンデモないです(^_^; 未見の人、読んでネタバレになっても何の問題もありません。


(物語)
尾道の海辺の旧い映画館が閉館となるため、最後に戦争映画特集を上映。
多くの映画ファンが集まる。楽団やダンサーも入れてイベントは華やかに進む。
ただし、ダンサーの少女が映画の世界に入り込んでしまう。「助けて」という言葉を残して。
知人の若者3人が彼女を助けようと追っかけて映画の世界に入るが・・・
そこで彼等が見たのは日本の過去の戦争史だった。


映画の色彩は戦争を描いてるのに、ひたすらポップでカラフル。
あれ、大林監督の作品ってもっとセピアでダークじゃなかったっけ?意外だった。
物語はハッキリ言ってハチャメチャ。
イメージが奔放に広がりスピーディーに展開し、時勢も登場人物の感情の流れも滅茶苦茶。
同じ俳優で複数の登場人物を演じて、前半は正直ついていけなかった(笑)
これ、ホントに80過ぎの老人が撮った映画か?
アートでパンクで・・・よーワカラン。なんだ?これ?

後半は前半より戦争をじっくりと描き、落着いて見れた。
沖縄と広島のシーンは痛くて見てて苦しかった。
女性が受ける惨い仕打ちは丸で自分が受けているかの様な痛みを感じた。

戦争を描く中で、主人公たちは平和へのメッセージ、戦争への怒りが何度も叫ぶ。
正直しつこいな、くどいなと感じた。
勿論大切な事だが、だからこそもっと簡潔にまとめた方が良いのではと思った。
しかし、演じる若い役者(特に細田善彦!成海璃子!)が素晴らしく、
彼等の叫び・涙と共にストレートなメッセージも真っ直ぐ届いた。
この映画全編に若者に対する優しい視線が貫かれていた。
それは、そのまま大林監督の若者への視線だと思う。
若者の言葉として平和へのメッセージが叫ばれることで説教臭さが消えてたと思う。

映画を観終わったとき、涙が滂沱と流れていた。自席で小さく拍手をした。
今日という日に、この映画を見れてよかった。
オレ、この映画大好きだ。

映画を観終わって、1日経っても余韻が残ってる。
愉しい映画だったが・・・モヤモヤした感じが残ってる。
大林さんは都度言ってた
「戦争を描く映画は見る人にカタルシスを感じさせてはいけない」と。
この映画、見てカタルシスは無い。映画館を出てスッキリして忘れる。
それを許さない映画だ。

今年、各所で「戦後75年」と言われ同時に「戦争の記憶の風化」も言われている。
今後、戦争が起きないとは言い切れない。
自分たちがいつまでも「戦後」でいられるか。
「戦前」にならないように何をすべきか。
考えつづけよう。自分(テメェ)の流儀で、やり方で。

それにしても・・みずみずしく過激な映画だった。同時に何とも愛すべき映画だった。
これが遺作だって?冗談でしょ?次回作見たい!
それが出来ないのが・・・・唯々・・・悲しい。。


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