建築・環境計画研究室 (山田あすか)

東京電機大学未来科学部建築学科

建築・環境計画研究室

この研究室は,2006年4月に立命館大学にて開設され,2009年10月に東京電機大学に移りました.研究テーマは,建築計画,環境行動です. 特に,こどもや高齢者,障碍をもつ人々への環境によるサポートや,都市空間における人々の行動特性などについて,研究をしています.

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学校改修の事例について少し。(@道の駅保田小学校)

2017-11-04 12:31:00 | 【雑感・寄稿文他】建築・都市・環境探訪

ラフなレポートです。

 

廃校舎になった学校,学校の余裕教室(児童・生徒数が設計時点よりも少なく,結果として余っている教室)を活用しようという動き,以前からありますがここ10年くらいで聞く頻度が上がったように思います。

当研究室でもいま,「学校改修型の特別養護老人ホームでは,(もともとそれ用に設計されているわけではないので多少の無理もあって)介護者の負担感は大きいのだろうか?」という検証型研究のテーマが一つ,動いています。

ちょっと面白い学校改修・用途転用事例があると聞くと,「え?じゃ見学に行きます。いつがいいでしょう」状態で過ごしておりますが,先日また一つ拝見したのでそのレポートを。

同行された先生と,道中で建築計画研究はどこに行くのか‥という議論があったのですが,ますます「利用」に向かっていくのでしょう。というのが小職の返答でした。

それは従来の「使い方研究」となにが違うのかということも重ねて議論になりましたが,「新築建築物の検証と,次の新築のための素材集めとしての使い方研究」から,「その(種の)(既存)建物のなかでの使い方≒カスタマイズ,現状をもとにした改良・リカレント」の比重が高くなっていくのかと。

それに対して,「それってインテリアなの?」というご質問もあって,「そもそも,建築とインテリアを分けることはできないのではないですか,少なくとも包含関係で。建築ってソフトからハード,人間の心理・行動デザインからストラクチャーまで複数の軸による幅広いグラデーションの総体だと思いますけど‥」というちょっと曖昧な返答をしました。

 

「それ(利用者と建築物を経時的につなぎつづけるデザイン)ってインテリアなの?」

うーん‥どう考えますか?

 

はい。

今回お邪魔したのはこちらです。「道の駅 保田小学校」。

 

「買う(地場特産物の販売),食べる(飲食施設),泊まる(宿泊+入浴施設),知る(情報発信拠点)」の機能をもつ都市交流施設へと生まれ変わった小学校校舎,です。

 

コンペで早稲田の古谷誠章先生を代表とするN・A・S・A設計共同体が選定されて実施された事例,首都圏大学研究室連携で,多数の研究室・学生さんが関わったようです。

ようこそ鋸南(きょなん)プロジェクト

 

地域の主要道路(内房と外房をつなぐ幹線道路のひとつ)に面した立地だったので,道の駅としての再生が可能であったという,立地特性を活かしたプロジェクトとお見受けしました。

外房の側のエリアでうかがったのですが,この「道の駅 保田小学校」ができたために,バイパス完成で遠のいてしまった人の流れがこの幹線道路にも戻ってきた,とのこと。

 

小学校舎としての外皮に,一皮「まちの縁側(2階)」兼1階の庇の役割の構造体を重ねています。

ここは1階の商店へのアプローチ空間や,外構との緩衝領域になっています。

角度を変えると学校らしい雰囲気にも見えます。

お店のディスプレイに活用されている跳び箱。

「え,備品の除却申請はしてあるよね」などと思う程度には毒されている。

 

おくればせ。全体はこんな感じです。

 

水飲み場がそのまま(周囲はちょっと盛って平らにしてあります)残っていたりはノスタルジーを誘います。

 

旧校舎2階。宿泊施設として使われています。

元々の教室を2つに割って,4人部屋として提供されています。

宿泊施設+入浴施設(日帰りでも利用可!)はオープンにご利用いただけるとのことで,利用者も多いそうです。

建築系大学の方,ゼミ合宿にどうでしょう。

 

教室棟の2階教室群→宿泊室,の南側に増設された箇所には,「まちの縁側」が設けられています。

宿泊室のすぐ外側なので,どうだろう‥というところもあるかもですが,17時までの利用となっています。時間帯で棲み分け作戦です。

進んでいくと,旧校舎の外皮をそのまま活かしていますので,校章が見えたり,時計が見えたりします。

この角度で見ないものなので新鮮。

外皮側に設けられたパネルは可動式で,蓄熱ボードを兼ねているとのこと。

 

ちょっと面白い警告。掲示物は「保田小学校校長」の名前で出されているので。

ブーゲンビリアですね,綺麗な花ですが

確かに痛い。引っかかれました。警告意味なし

 

旧体育館は,物産館に使われています。

中は地産の美味しいもの素敵なもの,の直売所です(お客様が多かったので写真はNG)。

体育館の骨格だけ残してあと改修なので,全く違和感ありません。

 

 

 学校にはつきもの,の金次郎さんがいたり

学校らしさと,また違う場らしさと,共存を感じられる事例でした。

 

 

神戸の北野☆工房のまちでもそうでしたが,

「学校らしい単位空間(教室)」はそのままでも,商業施設の場合はそこからのあふれ出しや開口の雰囲気づくりで感じがかなり変わります。

こちらは中廊下型なので,片廊下型の保田小学校よりも廊下(内観)には商業施設の感じが出しやすいようです。

 

逆に教室らしい雰囲気を活かした利用をしているブースもあります。

歴史を残す観点でも,改修利用らしい意味を強調するという点でも,「学校らしさ」は残したい。けれど残りすぎると新しい用途となじみにくい部分もある場合も。「らしさ」をどこに落とすかは重要ですね。商業施設ではそのあたり,「ノスタルジーをウリにしたテーマ型商業施設」もあるなかで比較的納まりが良さそうです。

生活施設だとどうでしょう? 特別養護老人ホーム,サービス付き高齢者住宅,などに改修される例もありますがそのあたりだと。「学校や病院のよう(な全制的施設)に見える入居型高齢者施設,は新型特養に至る従来型施設への反省の表現としてしばしば用いられてきました。このへんはポイントになりそうです。

 

外観は商業施設にしては開口部が少ない,出入り口が限られる,という点でフラッと入店,を誘いにくいという面はありそうです。北野は。

保田の場合は,入口動線が車出入りに限られる→動線処理がしやすく安全,敷地内では1階店舗への入口を元テラス型だった形状を活かし,外廊下型として再整備したので出入りしやすい,という状況です。

 

一口に学校といっても,構造も立地もそれぞれなので,新しい用途との組み合わせでは考慮すべき点が違いますね。

そんなことを思った見学でした。ありがとうございました。

 

 

 

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