「古都逍遥 京都・奈良編」「花の詩」「日常のこと」や花や風景写真

 京都・奈良を中心に古刹・名刹や「花の詩」等の紹介。花や風景写真、オリジナルの詩、カラオケ歌唱など掲載しています。

「セールスの極意」

2012年01月18日 23時30分50秒 | 古都逍遥「奈良篇」
 古都逍遥のブログだが、私が講演家として活動していた当時の、講演の原稿を記録保存するため、このページに置く。現在は講演活動は行っていないが、情報紙の編集を執務としている。いろいろなテーマで講演を行ったが、一番多かった保険関係団体での講演内容を留めてみた。


                  「講演内容」
                 神奈川県福祉会館
                 「セールスの極意」
                  ―販売の3原色―

 みなさん、こんにちは。
 ただいまご紹介にあずかりました方城英治(仮名)です。どうぞ宜しくお願いします。
 本日は研修会にお招きをいただき、本当にありがとうございました。
 私、10年ほど前に30年勤めた生命保険会社を脱サラして、著述、講演家の道を志し、生命保険関係各社、各団体の講演活動を行っていたのですが、縁がありまして、7年ほど前、友人が経営する現在の情報紙の編集長としての誘いを受け、報道の道に入りました。以来、あまりこのような壇上に上がることが少なくなり、本日は、せっかくの皆さまの研修会という大事な席でございますので、失礼があってはいけないことから、下書きを見ながらお話を進めさせていただくことをお許しください。

 私は中学生の頃から写真撮影が好きで、趣味としてきました。生命保険会社に勤めていた頃、各地方に転勤し、その地域の風景や風俗を写真に収めることが何よりの楽しみで、今日でも唯一のストレス解消法として続けています。
 風景写真を撮るときなどでは、景色の色彩の調和というものを気にしながらフレミングを考えます。木々の緑、空の青さ、朝日や紅葉の赤、このような色彩の三原色は風景写真に限らず重要なものです。

 販売の世界にも、このような三原色を欠くことができません。では、販売における「赤」と言ったら、どのようなことを意味しているのでしょうか。
販売における「赤」の色彩とは、赤々と燃え立つような「情熱」、「信念」であります。
 セールスは「技術より心」、これは30年のセールスの体験で得た私の持論でした。
 グローバルな大競争時代に入って、その競争に打ち勝っていくために、高度な知識と募集技術の習得が余儀なくされ、皆さまも日々、自己研鑽に励んでおられることでしょう。しかし、そのハイレベルの知識や技術があったとしても、大競争に打ち勝つだけの「気力」と「情熱」がなければ、それを活かすことはできず、絵に描いた餅になりかねません。

 
                   
「一燈をさげて闇夜を行く、闇夜を憂うることなかれ。ただ一燈を頼め」

 明治維新を成し遂げた志士たちの心の支えとなった、この言葉は、佐藤一斎の書いた「言志四録」という本の中に記されている言葉です。
 こんにち、市場のシェア争いも、囲碁の陣取り合戦の様相を呈し、一夜明ければ昨日のお客が、今日はよそのお客に変わっているということも、今後ますます激しさを増して行くことでしょう。このような状況で皆さま方は、いかなる心構えを持って乗り越えて行けばよいのであろうか。
 先行きの見えにくい不透明な時代を憂うることなく、ただ一燈を頼むことです。その一燈とは何か。それは自らの志し、情熱と信念であります。この情熱と信念がある者は、いかなる逆風であろうと、自らの生き残りをかけて、わが道を見失うことはないのです。また、何をすれば良いのか、自ら鮮明に描くことができるのです。

 「風の無い日に凧を揚げる」 皆さん、子供の頃、野原で凧を揚げた経験をお持ちでしょう。そんな時、風が無かったら凧は舞い上がりません。では、「風の無い日に凧を揚げる」としたら、どうしたら天高く舞い上げることができるでしょうか?

 そうですね、走ればいいんです。これは、経営の神様と言われた松下幸之助さんが、営業の幹部を集めての講演の中で話された質問でした。
 「君たち、風の無い日に凧を揚げるにはどうしたらいいのかね」
こう尋ねた松下幸之助さんは、「自分が走って風を起せばいい」という答えを求めようとしたのです。営業というものは、風が起こるのを待っていてはならない。売れない理由を「不景気だ」「お客が悪い」「地盤が悪い」「上司が優秀でない」、何事も社会や人のせいにする人がいますが、そうではない。自らの心がけ、情熱が足りないのだ。待つのではなく走れ、風を起せと激励したのです。
 皆さんいかがでしょうか、思いあたる節はありませんか。自ら風を起す。
「どうしても」という意志がなければ、何事も成就させることができないのです。
手をこまねいてボヤイテいては、何も解決はいたしません。
                 
 「アラスカで扇風機を売った男」がおりました。アラスカは、ご存知のように大変寒い国です。そんな寒いアラスカでは扇風機など無用のものかも知れません。

 アメリカのある家電販売会社が、かつて新製品の扇風機の拡販キャンペーンを行った。新規開拓を担当した販売4部は、今まで商品を流通させたことがなかったアラスカに販路を広げようと企画し、一部隊をアラスカに送り込んだ。
しかし、販売員たちは一台も売ることができず、根をあげて帰ってきた。
「だいたい、あんな所で扇風機を売るなんて無謀なんだ」
「部長の頭はおかしいんじゃないか。あいつが売ってみればいいんだ」
などと、口々に売れない愚痴を並びたてた。

 ところが、一人の販売員から「扇風機、売上好調」との報告が入った。
 その男は予定の販売台数の数倍の注文を受けて帰ってきた。
 不思議に思った同僚たちは、口を揃えて「どうやって売ったんだ」と質問を浴びせた。
 さて、皆さん、どうやって売ったと思われますか?

 アラスカでは涼を求める扇風機はいらなかった。その男はある事に気がついたのです。
 締め切った部屋の中に洗濯物が干されてあった。
「そうだ、扇風機を循環器として売ってみてはどうだろう」
 この発想は見事に的中したのです。部屋の温度をまんべんなく循環させることによって部屋中が暖かくなる。洗濯物も早く乾くだろう。こう気づいた彼は循環器としての話法展開を始めたのです。
 彼は「どうしても」売ろうという強い情熱があったのです。「どうしても」という情熱があれば、風の無い日でも凧を揚げることができるのであって、不況という中にあっても、保険離れという風潮にあっても、売上を伸ばすことができる人なのです。

 でも、闇雲に動いていても、効率が悪いもので、ここで皆さまに私が行っていた販売方法についてお話いたしましょう。私も成功した方法であり、セールスパーソンたちに指導して、大きな成果を生んだ方法でもあるのです。
 人の心というものは、浜辺に波が打ち寄せては引いて行くような、あの静かな反復作用に心地よさを覚えるものです。催眠術などにも電灯を左右に揺らして、それを見つめさせて催眠状態に誘導する方法もあります。そんな心理を応用したのが、潜在意識を動かす
「緊張緩和方式」の反復訪問という活動方法です。
 これは、第一次反復訪問と第二次反復訪問から構成されます。
 第一次反復訪問で、
Aのパターン 初回訪問で会った人を100%継続訪問する。再訪問の間隔を中1~2日おいて、定期的に5回ほど連続訪問を繰り返した。
Bのパターン 初回訪問で会った人を100%継続訪問するが、再訪問の間隔は1週間に1度とか、2週間に1度というふうに、不定期な間隔をあけて訪問した。
Cのパターン 初回訪問で会った人の中から、断られた人を除いて再訪問した。
       その訪問間隔は、自分の都合に合わせて気が向いたとき訪問した。

 この3パターンの結果は、
Aのパターンを守った人は、1ヶ月平均5件以上を確実に売り上げた。
Bのパターンの人は、1ヶ月平均2件ほどの成果を上げた。
Cのパターンの人は、1ヶ月無成績でおわり、時折、成果を出したが退職した。

第二次反復訪問は、Aのパターンで第一次反復訪問した後、成果として実ら
なかったお客を見込客リストに載せ、3ヶ月した後、再び第一次反復訪問のパターンで継続訪問を仕掛けることです。この第二次反復訪問でも成果が得られなかった場合、もう一度だけ、保留にして第三次反復訪問を行って見ます。その後、見込客リストから除外するかどうか検討してみるのです。

 とかく、一度訪問して断られたお客を「もうだめだ」と切り捨ててしまう人が多いのですが、それをやってはいけません。訪問したお客のリストを作って、訪問記録として管理しておかねばなりません。
 私はセールスの方々に強く訴えたのが「お客は決してセールスパーソンを見捨てない、セールスパーソンがお客を見捨ててしまう」と。

 ここにデータがあります。
■訪問を初回訪問で断念してしまう人・・・48%
■2回目訪問で断念してしまう人・・・30%
■3~4回目訪問で断念してしまう人・・・17%
■5回目以上継続して訪問する人・・・5%

 今日の市場情勢からいっても、成約に至るまで5回以上の訪問は必須条件であるはずなんですが、78%、約8割の人たちは2回目訪問ぐらいで「見込みがない」と、見捨ててしまうのです。ですから、わずか5%の根気づよいセールスパーソンに契約を持って行かれるというわけです。
 皆さんは是非、「緊張緩和方式」の反復をしっかりと、ご自分の活動方式として身につけられ、この僅かな5%の優秀なセールスパーソンの仲間入りを果たして欲しいものです。
 では次に、確実に目標件数を挙げていくための計画の立て方についてお話しましょう。

 民間生保のセールスパーソンの月売上目標は平均5件です。ですから、これに負けないためにも、皆さまも月5件以上は目標にして欲しいものです。
 月5件を達成させるためには、成約率を平均1/60として考えてみます。つまり、60人の見込客が無ければ1件の契約は挙がらないということにもなるわけです。では60人いれば確実に1件の成約が得られるかというと、そうわ問屋が卸さないわけで、1件60人をベースに考えると、つまり5件を成約する目標は、5×60人=300人以上の見込客をプールしておかねばなりません。見込客リストに300人以上保有されていなければならないのです。
 この300人の見込客を営業日数22日で均等にしてみると、300÷22日=13・6人、ま、14人というところでしょうか。1日14件訪問しなければならないのです。1日14件の訪問は結構しんどい活動です。ですから私たちは土曜・日曜・祝日も返上し、夜8時、9時になっても活動していたわけです。30日働けば1日10件程度の訪問となりますから、比較的消化しやすい結果となります。
 ところが、1日10件訪問でも大変です。仕事にはメンテナンスの仕事もあれば、時には、打ち合わせ会議もあるでしょう。新規契約活動だけではないので、これを最も効率的・効果的にする働きが、さきほど紹介した「緊張緩和方式」の活動ということになります。
 当初、7~8ヶ月ほどは、なかなか効果があがらないでしょう。それを諦めずにやり続けていると、1/60の確率が1/40、1/30の確率まで向上していきます。月産5件の計画でも月あたり150件ほど回れば良くなりますから、月22日として、1日7~8件の訪問となり、ゆとりのある活動となります。
 初めの7~8ヶ月を歯を食いしばって活動するかに、成功の鍵が隠されているのです。キーワードは「お客を見捨てない。5%の情熱と信念のあるセールスパーソンになる」ということです。

 では次に「緑」の色彩について話を進めてまいりましょう。
皆さんは、毎月お給料をいただいている職員の一員ですよね。では、いただいているお給料は、どこから毎月いただいているのでしょうか?
 私たちが働いているのは、お客さまあってのことです。どんな製品でも企画でも、サービスでも、それを買ってくれるお客がいなければ企業というのは存続できません。皆さま方でも例外ではありません。
 バブル全盛期の時代は、どのような企業でも、顧客が主役なんて誰も考えていませんでした。企業を創業した創業者たちは、一様に「顧客本位」をモットーとして、創業の精神を貫き成功させました。ところが世代も変わり、いつしか傲慢な企業精神が蔓延し、雪印、日本ハム、そして三菱自動車などに見るごとく、ゆがんだ企業家のために、顧客不在の企業経営がなされ、大きな信用を失うことになってしまいました。
 保険も例外ではなく、保険知識の乏しい顧客相手に、それこそ言いなりの販売を行い、強引、押し売り的な販売までしてしまったのです。そこには「お客さまは神様です。おかげさまで」などという感謝の精神なんてありませんでした。
「働いて手にするお給料は、お客さまから頂いている」。今日は、このような精神がないと、お客さまから見捨てられてしまいます。働いて手にするお金はお客さまからいただいている、というこの精神は、徳川吉宗の時代に民衆学者と言いましょうか、京都の呉服商に丁稚奉公として働き、苦労に苦労を重ねて、「石門心学」を築いた石田梅岩の「都鄙問答」(とひもんどう)の中に記されている言葉です。お給料をお客さまからいただいているという心からの感謝の気持がなければ、本当の意味での「顧客本位」「顧客が主役」という販売理念は生まれません。
 ここで顧客本位というテーマを明確にするために、皆さまに質問をしてみましょう。クイズを出しますので、考えてみてください。では問題です。

 「マンションの18階に住んでいる人が、下りるときは、18階から1階までエレベーターで真っ直ぐ下りていくのですが、上がるときは、いつも13階で下りて、残りの5階は階段を登っていくのです。これは一体なぜなのでしょうか?」
 
 「正解は幼い子供だったのです」
 下りるときは、エレベーターの1階のボタンは下の方に付いていますから、幼い子供でもボタンを押すことができるのですが、上がるときは、18階のボタンに手が届かない。仕方がないから精一杯背伸びをして13階のボタンを押すのです。後はそこで下りて階段を登って行くしか方法がないんです。
 さて、このクイズは何を言おうとしているのか、すでにお気づきの方もいらっしゃるでしょう。エレベーターを設計した人は、幼い子供も生活の中にいることなど考慮に入れていないのです。もちろん幼い子供が一人でエレベーターに乗ることの危険を考えてのことかもしれませんが、特に、障害をお持ちになる車椅子の方々への配慮もなされていない、団地のエレベーターを見ることがあります。
 これらは相手の立場、相手の生活に合わせて設計していないという事なのです。相手、つまりお客の立場に立つということは、エレベーターと子供の関係と同じことを意味しているのです。
 
 配慮の行き届くセールス、お客のライフステージに合わせて、ライフプランを作り、保障診断をして、最適な保険を提供しなければなりません。
 お客さまが必要としている生活保障は、大きく分けると3つになります。
(1) 家族生活資金
(2) 子供の教育・結婚資金
(3) 老後の生活資金
  この3大ニーズの中の「家族生活資金」について、少し触れておきますと、一口に家族生活資金と言っても、必要保障項目は次の3つに区分されます。
(1) 生活建直資金、(2)生活維持資金、(3)緊急予備資金の3つです。
(1) 生活建直資金は、年収の3年分。
(2) 生活維持資金は、年収の10年分。
(3) 緊急予備資金は、年収の1年分(病気・葬儀・クレジットの決済等)
 年収はどれくらい見積もるかということですが、勤労者の平均年収は約500万円、世帯平均年収でみると305万円というところです。
 ライフプランを設計されるときには欠かせないものになりますから、ご記憶なさってください。
 緑の色彩は「顧客本位」そのものであり、顧客のニーズに的確に応えてあげることに他ありません。このことは、つまりお客さまに「安心」を提供するということであるのです。

 緑の色彩の一つは「安心」を提供する。そして、もう一つは「納得」を提供することです。今日のお客さまは、この「納得」を最大限に評価します。私たちに強く求めているものであります。
 「納得」の最大のキーワードは「サービス」です。
 納得が行くまで懇切丁寧に説明してあげることも重要なサービスです。それから、お客さまが最も我々に求めているのが「すぐ対応してくれる」というサービスです。「売りっぱなし」「生返事の聞きぱなし」では、不親切だと非難されてしまいます。
 かつて、千葉県松戸市の市役所の窓口に「すぐやる課」という市民課ができてずいぶんと話題になりました。このときの市長がマツモト・キヨシさんでした。

 お客さまの不満は「ほったらかし」「後回し」にされている営業姿勢にあります。民間生保も、ようやくそのことに気付き、メンテナンス専門の部隊をつくり対応するようになりました。
 納得のキーワードは「買って安心、任せて安心、私はあなたの掛かりつけ、いつでもいかなる時でも、即時対応いたします。年中無休の方城です」。この精神です。まさしく、コンビニエンスの精神であって、お客さまと常に密着し、年中無休・24時間営業を心がけることです。
 ここで緑の色彩をまとめてみますと、「顧客本位」の方程式というのは、
「良い理念×よいサービス」ということであり、安心と納得を提供する真のサービスを積上げていくことであり、この安心と納得という信用と信頼の「預金口座」の残高を、お客さまの心の中に増やしていけば、お客さまはあなたに好意的となり、かけがえのない関係が築かれることでしょう。

 では、次に「青」の色彩についてお話しましょう。
 かの英雄ナポレオンは「人を動かすテコは恐怖と利益」である、と言っていました。
 保険セールスで言う「恐怖と利益」というのは、お客さまのニーズを発見し、「このままでは安心できませんよ」とアドバイスをしてあげることが善意の恐怖というもので、それをデータやライフプランによって理性的に示してあげる、つまりコンサルティングしてあげることが利益というものにつながります。
 恐怖と利益は「理性」と「感情」によって導いて行くことが販売の秘訣です。データやプランを示しながら、恐怖と利益をイメージさせていくのです。
イメージは色彩で言えばブルーと言えるでしょう。

 私が20代の頃、セールスが苦手で悩んでいる時でした。私の友人でセールスにかけては凄腕で、ブックローンの販売では常にトップの座を誇り、週刊誌にも「華麗なる独身貴族」というタイトルで紹介された男でした。
 その彼にセールスの秘訣を伝授してもらおうと、彼が当時住んでいた茨城県の水戸まではるばる訪ねて行ったのです。その頃、私は秋田県に赴任していました。一晩泊めてもらったのですが、彼は何も教えてはくれませんでした。
 アドバイスしてくれたのは「お前はもっとお客に断られて、お客の真の気持を理解することだ」と、この一言だったのです。つまり、失敗をたくさん経験しろ、失敗の中から発見があるのだという意味だったのです。苦手意識で、失敗を恐れ、地獄を味わうほどの苦労をしていない者に、アイディアなんか浮かぶものではないというのです。
 2日目の朝、彼はセールスに出かけるが、お前も一緒にくればいいと誘われ、同行することにしたのです。

 何軒か飛込みをした先に、タバコ屋がありました。
 ヤマちゃん、ヤマちやんというのは私のことです。
 やまちゃん、ちょっとタバコを買うわ、と言ってそのタバコ屋に寄りました。店番に、女の人が座っていました。
 彼は「おばちゃん、ハイライトちょうだい」と声をかけました。タバコを買うとすぐ立ち去るのかと思っていましたら、「おばちゃんがいつもお店番してるの、大変だね~」と話しかけたのでした。「おばちゃんは美人だから、タバコ屋の看板娘だね」
 すると女将さん、何だろね、この人はと思いながらも美人と言われたものだから「いやだね、もう若くないんだからね」と照れているのです。彼はその反応を見て取って、さらに声を掛けて「今日はいいお天気なのに、お店の中にいるのがもったいないくらいでしょう。お子様は幼稚園くらいですか」、すると女将さん「中学生と小学生の子供がいるんですよ」と返事をしてくれた。「イャー
そうなんですか、奥様があまりお若いので、小さなお子様かと思いましたよ」。女将さんだいぶご機嫌になったようでした。
 そして彼は、突然にこんな質問を浴びせたのです。
 「奥さん、どうして空は青いのでしょう」、藪から棒の質問に、女将さんはキョトンとしているのです。続け様に「どうしてお星さまは光るんでしょう、どうして海の水は塩辛いのでしょう? そうお子様から聞かれたら、奥さんどうお答えになりますか」。もうおばちゃんから奥様という言葉に変わっていました。女将さん黙って彼の顔を見てました。「何を言い出すのかね、この馬鹿は」なんて顔をしてました。
 「もし答えられたら凄いよね、お子様はきっと学校に行って、うちのお母さんは凄いんだぜ、博士みたいだぜって、得意になってお母様のことを自慢するでしょうね。そうなれたら素敵だと思いませんか。きっとお母さん、お子様にますます尊敬されますよ。奥さん、博士みたいになれる方法があるんです。お店番をしながら、お子様に凄いって言われるようになってみませんか」。

 それから会話のやりとりをしてましたが、その間10分も経たなかったでしょうか、目の玉が飛び出るような高価な大百科事典を、ものの見事に売ったのです。私は余りの手際良さに唖然としてしまいました。
 私にはとても真似ができないように思えましたが、秋田に帰る途中の汽車の中で、彼が使った話法イメージを、保険セールスに活かすことはできないものだろうかと、考えていたのです。成功の秘訣は商品を売るのではなく、イメージを売るのだと気がついたのです。

 現代の販売戦略に欠くことができないのが、パッケージデザインとキャッチコピーだと言われています。特に若者たちは、このパッケージとキャッチコピーをどうとらえるかと申しますと、「おしゃれ」とか「超おもれぇー」、「かわいい」、「かっこいい」、「ダサい」、「いけてるジャン」など、その商品を評価する傾向があります。商品の内容も当然追求される要素なんですが、商品の持つ本来の機能や中身に加え、まず「見た目」「言葉」のイメージに関心を示し、購買意欲を起すのです。その最たるものが、「青汁」のCMで、「まずい、もう一杯」、これのイメージで爆発的なヒット商品となりましたね。
 生命保険の場合は、商品が無形であるために、商品の持つ効用を納得してもらうためには、商品の特性である効用を、より鮮明にイメージさせてあげる事が、売上を伸ばす要因につながるのです。
 
 「蒲焼を売るな、その匂いを売れ」
あのニョロニョロとした蛇みたいな鰻を食べたくなりますか。嫌ですよね。第一気持悪いですよね。鰻の腹を割き、ミリン醤油をつけて炭火でパタパタと煽ぐ、絵にも言われぬうまそうな匂いが辺り一面にプーンと漂う。腹がググググと鳴ってくる。あの匂いに誘われて食べたくなるんですよね。その匂いが商品の一つになっているんです。

 商品そのものではなく、その商品から生まれ出てくる効用、つまり、安心、豊かさ、満足感、愛情をイメージさせるのです。
 イメージを別の角度から例えてみますと。
「今、あなたの妻が事故にあい、救急車で病院に担ぎこまれた」、知らせを聞いたあなたは息せき切って駆けつけた。まさに、あなたの妻は手術室に入ろうとしている。あなたは、先生をつかまえて何といいますか?
 「先生、妻は大丈夫でしょうか、何とか命だけは救ってください。命だけは・・・」、そう言うはずです。きっとそう言います。でも、先生が大変な守銭奴で金の亡者だったとしましょう。
 「う~~~ん、何とか努力はしてみるがね、これがかかるぞ、これが。金は大丈夫かね、金は」、そう冷たく言われたとしましょう。あなたならどうなさいますか? 
 「どうせ、口うるさい妻だし、先生チャンスだから、ほっといていただけますか」って言いますか。「お金なら何とかいたします、どうぞ命だけは救ってください」、こう言うはずです。それが人情ですよね、それが愛というものです。
 「妻の命が救われるのならば、お金なんか惜しくはない」
「何なにのためだったら」、この「何なにのためだったら」、つまり、「残された家族に辛い思いをさせないためだったら」、「可愛い子供のためだったら」「手術をして生きれるものだったら」「豊な老後が送れるものならば」、そういうイメージを描かせることが大切なのです。
 例えばこんなことです。
 私がセールスをしていた頃の名刺に、このような数字を印刷しておりました。
「あなたにとって大切なヒント1095」
 何の数字だかお分かりになるでしょうか?
 初めてお目にかかるお客様に、名刺を差し出して、方城でございます。宜しくお願いします。そして、やんわりと「これ何の数字だかお分かりになりますか?」と尋ねるのです。
 失礼ですが佐藤さん、チョッとその辺でお昼の食事をされるときに、いくらぐらいの物を召し上がられますか? と尋ねることにしていたのです。
 今ですと、700~800円というところでしょうか。朝食は100円か200円、夕食は贅沢したり質素にしたり。
 おおよそ、1食あたり500円としてみましょう。そうしますと、ちょっとこちらをご覧ください、といって電卓を出します。
 500円で3食ですから1500円になりますね。365日食べますから、1500円×365日で547、500円となります。これを20年間食べるとして、20年×547、500円で1095万円になってしまうです。一般的に残される家族3人の食費は、この3倍ですから、3285万円ということになります。一家の大黒柱として、せめて家族が飢えをしのぐだけの保障は最低でも必要なのではありませんか。それにお子様の養育費、教育費、結婚資金、加えて日々の生活の諸々の費用を考えますと、ざっと8000万円は必要になります。
 佐藤様の責任として、お子様にひもじい思いをさせない「お母さん、お腹すいたよ~~」って、泣きじゃくるお子様の姿を思い浮かべてみてください。そんな可愛そうな事を想像れるだけでも、背筋が寒くなられるのではありませんか。そんなお子様がふびんだと思われるのでしたら、私に佐藤さんのライフプランを是非設計させていただけませんか。
 
 1枚の名刺から、ニーズを掘り起こし、ニーズを喚起していく、イメージ手法をとったわけです。名刺から印象を高め、訪問を重ねることによって随分と売れました。
 1枚の名刺から、夢の花咲く事があるかもしれません。
 
 これから街を歩いている時、信号機を見られましたら、赤は止まれではなく、「アッ、情熱だ信念だ」、「緑」でしら「安心だ、納得だ、サービスだ」と言い聞かせ、また青空を仰いでは「イメージだ、蒲焼だ」と思い起してください。きっと素晴らしい自己啓発になることでしょう。

 さて、時間が気になる頃になってまいりましたが、最後にプレゼンテーション5つの基本法則を、かいつまんでお話しておきましょう。
(1)蒲焼を売るな、その匂いを売れ 
さきほども申し上げましたように、一般的な顧客ニーズ「何々のためだったら」というイメージを描かせながら保険設計書・プランの説明をすることです。どんな優秀な商品でも先に値札を見せられたら、尻込みされてしまうことがあります。十分に保険の必要性をイメージさせてから、具体的な詰めに入りましょう。

(2)花を添えて話せ
  花という意味は資料やデータを示しながら、表情、言葉づかい、ジェスチャーをまじえて話せということです。人の話はなかなか記憶に残りにくいものですが、印象というイメージの残存率は70%もあるとのことです。あなたの印象と同時に、あなたが何を話したかという印象を相手の脳裏にしっかりと残すことが大切です。そのためには、資料などを提示しながら、あなた自身を鮮明に記憶させることです。そういう意味ではセールスパーソンというのは演出者であり役者であらねばならないのです。
  駅のホームでとても好みにあった女性に出会った。お付き合いしたいと思った。そこで勇気をもって女性の前に進み、「私、○○大学を出て、一流会社に勤めてます。給料は○○円頂いていて、人柄はヨン様みたいに優しくて、食べ物はピーマンが嫌いです。お付き合いしてください」、なんて言ったら、「あんたアホとチャウカ」ってバカにされてしまいますよね。やはり、冬のソナタみたいな雰囲気づくりが必要で、その雰囲気づくりを行うと、お客の心をとらえることができるものです。

(3)同意を求める
  さきほど1枚の名刺の話のところで触れましたが、ニーズ話法のキーポイントになるところで必ず同意を求めます。人はプラスイメージを積み重ねていくと、不思議に前向きになるものです。お客さまに「イエス」「イエス」という同意を求めるような話法を展開していくのです。
 例えば、お客さんが「保険は嫌いだ」と言って断ったとしましょう。これに対しては反論さけます。
 「ごもっともなことですね。保険が好きと言われるお客さまがおりましたら、私どもも警戒してしまいます。ところで鈴木さまはお嬢様がいらっしゃいましたね。おいくつになられます」「4歳だよ」「そうですか、可愛いさかりですね」、お客「イエス」、「お子様のすこやかなご成長は親の願いですよね」、お客「イエス」、「お子様がご立派に成人なさるまで、お父様、元気で頑張らなくてはなりませんね」、お客「イエス」、「お父様にもし万一のことがあって、可愛いお嬢様に辛い思いをさせたくはありませんよね」、お客「イエス」。「それが親心というものでしょうね。可愛いお嬢様に辛い思いをさせないためには、保険は必要ことだと思われませんか」。お客「必要だねー」。
 保険は嫌いだと言っていたお客さまが、「イエス」という言葉を引き出しながら話を進めていくと、「嫌い」が「必要だ」という気持に変化させてしまう効果があるんです。これを私流に「イメージ誘導法による同意話法」と称しています。どうぞご研究してみてください。

(4)アナウンサーになるな―インタビュアになれ
  同意を求めるで触れましたように、簡単な質問しながらこちらのペースに引き込んでいくことが大切です。保険パンフレットや生活設計プランに書かれてあることに沿って、間違いなく説明していくのはラジオのアナウンサーみたいなもので、お客さまには馬耳東風、心に留めることができません。的確でソフトな質問を投げかけながら、ステップ方式で、あるいはチャート方式で話を展開していくことが望ましいのです。喋り過ぎず、その場を盛り上げるインタビューアとなってプレゼンテーションをしてみましょう。

(5)笑顔で接する
  人は元来、明るくて快活な人を好むものです。陰気で死神にでも取りつかれたような人には近づきたくないものです。笑顔はセールスそのもの、いわゆる人間関係づくりに絶大な効果を発揮させてくれます。
「元手がいらない、しかも利益は膨大、与えても減らず、与えられた者は豊になる。家庭には幸せを、商売には善意をもたらす。それは笑顔です」
 良い笑顔をつくるには、口の両端の広角筋を耳のほうに、ニィーッと引き上げます。それだけでいい笑顔になります。現代の笑顔は「ラッキー」の笑顔です。「チーズ」は明治時代の笑顔ですよ。毎日、鏡を見られ、ニコニコトレーニングをしましょう。ヨン様の笑顔をお客さまに向けてあげましょう。

 いかがでしたでしょうか、足早に話してまいりましたが、ご理解していただけたでしょうか。なるほどと感じられるところがありましたら、実行に移して試してみてください。解ったと納得しても、毎日歯を磨くように、心構えも磨かなければ身につくものではありません。
 「私はやる、私はやる、私はやる、私はできる」毎朝、毎朝、毎朝、毎朝、毎朝、心に言って聞かせましょう。あなたはきっとその通りになります。毎月、毎月ゼロから始まる営業成績、毎日、毎日、毎日、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツと努力しない者は、決して勝利者にはなれません。心に気力を持って「お客のためだ強くなれ」、今やるべきことを今やり、戦わねば脱落者になるだけです。積極的に前向きに、今、何をすべきか、今から始まるチャンスを一瞬たりとも疎かにせず、一瞬懸命に「よし!やろう」、その決意で初動を開始しよう。
 
 そろそろ時間がまいりました。ご清聴ありがとうございました。

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