「古都逍遥 京都・奈良編」「花の詩」「日常のこと」や花や風景写真

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「吉田寺」(きちでんじ)

2010年04月06日 07時46分16秒 | 古都逍遥「奈良篇」
 清水山吉田寺は大和路斑鳩にある浄土宗の寺院で、俗に「ぽっくり往生寺」の名で親しまれている。創建は、天智天皇(626~671)の勅願といわれているが、平安時代中期の天台僧、恵心僧都源信(942~1017)によって永延元年(987)に開山したと伝えられており、竹やぶや林に囲まれて、ひっそりとし佇んでいる姿は、いかにも斑鳩の古寺の情緒を漂わせている。

 本尊の「阿弥陀如来座像」(丈六尺/約4.85㍍<重要文化財>)は、恵心僧都が境内の栗の大木に感得され、一刀三礼の念仏の中で造ったという。奈良県最大で「大和のおおぼとけ」と呼ばれている。千体仏光背を背負って上品上生印を結ぶ端正無比の霊仏、金色に輝く尊像の前で念仏を称え、祈祷を受けた肌着(衣服)を身に付けると、長く病み患うこと無く、シモ(排便等)の世話にも掛からず、病み苦しみも無く、安らかな往生が叶い、霊験にあらたかとか。ぽっくり往生寺」として信仰されるようになったのは、孝心の厚かった恵心僧都が母の臨終に際し、除魔の祈祷をした衣服を母に着させた所、何の苦しみも無く、母が称名念仏の中に安楽往生の素懐をとげられた故事に由来している。

 重要文化財の多宝塔は大和路で数少ない最古の塔で、高欄のない縁をめぐらし、中央間板唐戸、脇間連子窓、中備えは中央間のみ蟇股。上重は高欄と四手先組物、下重は組物(出組)と軒〈二軒繁垂木)の構成、方三間、二層、本瓦葺、高さ四〇尺(12㍍)あり、遠くからでもこんもりとした森の中に塔の先端が見える。建立は寛正4年(1463)で、内部に恵心僧都が父ト部正親の菩提追善の為と伝える秘仏「大日如来坐像」が安置され、毎年9月1日~2日と、11月1日~3日に開扉し一般公開される。また、境内に腰付き「鐘楼」も在り、石仏「慈母観音像」なども祀られている。本堂は江戸時代に再建された重厚なもので、拝観料300円を支払って中に入ると、座布団と木魚がズラリと並び目を奪われる。

 当寺の最大の行事は、9月1日に行われる「放生会」(ほうじょうえ)という、生き物を殺してはいけないという仏教の戒めに基づき、命を大切にし、感謝する儀式で数百羽の鳩と数千匹の魚に南無阿弥陀仏の念仏を授けたあと、境内と放生池に放つ。別名「鳩逃がし法要」、「魚逃がし法要」ともいわれている。

所在地:奈良県生駒郡斑鳩町小吉田一丁目1番23号。
 交通:JR大和路線・近鉄生駒線王寺駅より奈良交通バス「龍田神社前」下車、徒歩すぐ。
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