Weekend Strummer

ウィークエンド・ストラマー。
世間知らずのオジサンが脈絡無く語る、ギター・アフリカ・自閉症。

プリズムメガネ

2023-01-31 10:50:02 | その他

時々目が痛みます。
根を詰めて長時間本を読んだりパソコン仕事をした後に頻発する痛みで、発生したら最後、視線を動かすたびにズキン!と痛むので何もできなくなります。しばらく目を閉じて休ませないと復活できません。
この痛みは二十代の若き日に発症し、三十代で決定的になりました。
三十代の当時、仕事で実体顕微鏡を使っておりました。実体顕微鏡は両目で覗くタイプの顕微鏡で、立体視が可能です。立体視するためには当然、左右の視軸が一致する必要があります。
私の場合、左眼の視軸が斜め上を向いていて、うまく一致していないらしい。そのままだと物が二つに見えてしまいますが、目の筋肉が無意識のうちに働いて眼球を正面に向け、また、左右の眼から送られてくる視覚情報を脳が調整して一つの像として認識しているんですって。ところが、作業に熱中してその能力を使いすぎると矯正能力が限界を超え、目に激しい痛みを感じるようになる、と。これは当時診察してもらった眼科医による説明。
濡らしたハンカチを目に当てて休ませ、痛みが和らいだら仕事を続行する「だましだまし作戦」もいつか効果がなくなり、そのうち目に激痛を感じるだけでなく実体顕微鏡を覗いても左右の焦点が合わなくなり、気が付けば顕微鏡だけでなく遠くを見るための双眼鏡も使えなくなっていました。
歳を取るにつれて症状が悪化し、最近は普通にものを見ると二つに見えるようになってます。ただ、ありがたいことに近距離では一つに見えるのでパソコン仕事には特に不自由がない。しかしパソコンを離れた途端に世界がダブって見え始めるので、普段はたいてい目を細めてのシワクチャ顔。クルマを運転するときも視界が狭くなっているようで、かなり緊張します。また、流行りのVR(バーチャル・リアリティ)ゴーグルも私には使えず、残念に感じております。
眼科医によると「今後も症状は徐々に進行し、最終的には手術することになる」そうです。
どうせいつか経験することになるのであれば、とっとと手術を済ませて見通し改善するべきではないかと思うのですが、なかなか決心がつきません。ネットで体験談などを調べると手術後にかなり痛むらしく、また、何より大事な眼球に外科手術を施すことが恐ろしくてしょうがない。

数か月前に遠近両用のメガネを新調しました。検眼時に視軸がずれていることを相談しましたら、プリズムレンズ(偏心レンズ)を勧められ、試してみるとこれが大正解。今まで二つに見えていた世の中が一つに像が結ばれ、すべてきれいに見えるようになったのです。
驚きでありました。急に若返ったように感じて、検眼用のメガネをかけたまま店頭で思わず声を上げるほど嬉しかった。
以来、ムービーナイトの映画も無理なく楽しめるようになりましたし、クルマの運転も以前のような疲れを感じなくなりました。

さて、新しいメガネは別の視感覚ももたらしてくれました。
違う色が隣接して配置された場合、濃度がほぼ同じであれば接している部分の境界線があいまいになることがあります。色によって異なる距離感があるそうで、私の場合、赤地に青が配置されていると、赤い部分に深みが生じ、青い部分が浮いて立体的に見えるんです。リープマン効果というそうです。
これはきっと各色が持つ波長が関係しているんだと思います。赤と青を比較すると赤の波長は長く、逆に青は短い。新調したメガネはプリズムレンズを使っています。プリズムとは分光器ですから、私のメガネは視軸を矯正すると同時に入ってくる光を分析し、各色の特徴を強調しているようなのです。
ただ、赤い色ならどんなものでも遠く見える(奥まって見える)というわけではありません。これは相対的なものなので、他の色との配置のされ方によって、その効果の出方は様々です。
おかげで、今まで何気なく目にしていたものが思いがけなく新鮮に美しく見えるようになりました。
最近の楽しみは街の建造物の古い鉄骨を見ること。鉄骨一面に浮いた赤錆に立体的グラデーションが見えることがあり、その美しさは思わず立ち止まって見とれてしまうほど。
赤錆は単色ではなく、その酸化程度により鉄骨上に複雑な色合いを見せてくれます。錆止め塗料が雑に塗られた部分では一部が黒錆となり、赤い塗料を背景に静かに盛り上がって見える。刷毛で描かれた細かい筋は山稜の等高線のように見えたりする。まるで美術品を鑑賞するように色んな角度から鉄骨を愛でる私です。
というわけで、最近の趣味は赤錆鑑賞。

 

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