知的障害者(自閉症)の役が登場する映画にはやはり興味があり、割と積極的に見ています。 現在までに見た映画で特に強く共感できたものは「マーキュリー・ライジング」。 ブルース・ウィリスが主演する1998年に作られたサスペンス映画で、自閉症児(少年)がストーリーの要(かなめ)になっています。
注目すべきは映画の冒頭シーン。
主人公の少年が、勤めから帰宅する父親を夜遅くまで寝ずに待っています。
落ち着いた照明の子供部屋。すでにパジャマに着替えた少年は、独り静かにジグソー・パズルに取り組んでいます。
少年は父が恋しくてその帰宅を待っているわけではありません。父に抱かれて眠ることが習慣となっているため、今夜もその就寝パターンに固執しているだけなのです(そのパターンでなければ眠りにつくことが出来ないのですから、固執、というのは適当な言葉ではないかもしれません)。
父親の腕の中でしか安眠しないとは、親からすれば、はっきり言って不便でメンドクサイ子です。
ですが、自閉症児の親はそんな我が子を疎ましく思ったりしません。普段あまり濃密なコミュニケーションを交わせない相手が自分を必要としているんですから、父親としてはかなり嬉しいシチュエーションではないかと、私は想像します。
劇中、ようやく帰宅した父親は、案の定、負担を感じさせることなく、むしろ使命感に嬉々とした様子で真っ直ぐに子供部屋に向かいます。早速横抱きにした息子にやさしく低い声で子守唄など歌いかけ、すでにいつもの就寝時間を過ぎていた少年は安心して眠りに就くのでした。
我が子の自閉症という障害を受け入れて静かに生活を営む家族の姿がよく描けており、感心するほどリアルな演出でありました。
この後、幸せな親子の平和な夜はハリウッドお得意のスリルとバイオレンスによって無残にも破壊され、ブルース・ウィリスが登場して更に派手なアクションを見せるという、お馴染みの展開になります。
というわけで、その後の解説は無し。
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