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Weekend Strummer

ウィークエンド・ストラマー。
世間知らずのオジサンが脈絡無く語る、ギター・アフリカ・自閉症。

殺されるかもしれない3

2016-11-13 01:36:14 | その他の国々

ガーナで葬儀に参加した私が経験した話、続編です。

「村はずれに知り合いがやっている店があるんだけど、一緒に行かないか?」

と誘ってくれたのは、私と同年配のオジサン。やはり私のクルマの後部座席に乗って来たヒトです。

「野辺送りの連中はまだ帰って来ないよ。暇つぶしにちょっと顔を出して来たいんだけど付き合わないか?」

実際、埋葬には少々時間がかかるようですし、だからと言って葬儀終了前にランチを済ませるわけにもいかない。他にやることも無い身の上でお誘いを断る理由もなく、そしてまたガーナ人とお付き合いするうえで一番大事なのは「軽いノリ」であります。

そんじゃ、行ってみようか。

どうでもいいような話題でおしゃべりしながら、村の中心地を離れ、田舎道を進んで行きます。すぐに道は狭くなり、森が触手を伸ばすように木々の枝が歩行者に迫ってくるようです。隣国トーゴとの境である絶壁も迫っており、雰囲気も暗くなってきました。
さすがに少々不安を感じ、先を行くオジサンの背中に尋ねました。

こんなところにお店があるのかい? 

「あるんだ。もうすぐだから」

こんなところで何を商っているの?

「いや、普通の食堂だよ。もうすぐだから」

お昼ならみんなの分を持って来ているからいらないんだけどな。

「まぁ、行くだけ行ってみようよ。もうすぐだから」

もうすぐ、もうすぐ、と繰り返すオジサン。なんか胡散臭いなー。
その時、背後から声をかけられました。

「よぉ、二人でどこへ行くんだい?」

私の同僚でありました。

いや、このヒトが知り合いの店を紹介してくれるというもんだから。

「もうすぐ野辺送りも帰って来るし、そろそろ戻らないか? すぐ食事になるよ」

同僚の提案にオジサンもあっさり承諾し、今来た道を三人で戻りました。
ほどなく帰ってきた野辺送りのメンバーを迎え、お弔いプログラムの残りの部分も終わり、みんなで昼食をすませて帰路に着き、夕方にはアクラに戻って来ることができました。
翌週、件の同僚と職場で顔を合わせたとき、 

「あの時、危なかったね。あのまま行ってたらきっと殺されてたよ」

えっ? うそ? 確かに雰囲気はおかしかったけど、まさかー。

「あのオトコ、たぶんそのつもりだったよ。あなたを見る目つきが怪しかったので注意して後をつけたんだ」

そうだったのか。気がつかなかったよ。じゃ、助けてくれたんだね。ありがとね。

 しかし、同じクルマで移動してきて、更に直前まで一緒にいたことを多数の人間に目撃されている状況で、しかも軽装で多額の現金も貴重品も身に着けていない外国人を、特に躊躇なく殺害するのでしょうか?
…するんですね、きっと。人目が無い場所での犯行は、どうとでも誤魔化せる。

「知らないヒトについて行っちゃいけないよ」というのは幼少時に両親から言い聞かせられていた、当時の人生の基本事項の一つでありました。幼少時だけじゃない。齢重ねたオジサンになっても大事なことなんだと再認識した出来事でありました。

コメント
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