これはグーグルアースからモザンビーク・ザンベジア州の一部を切り取った画像です。画像の中心から右斜め上の方向が北になります。左上に「ケリマネ」という地名が映っています。通常私が「キリマネ」と呼んでいる町です。画面下部に見える青みがかった部分は海です。
画面上部から海岸まで、海岸と並行するように櫛でひっかいたような細かい線が何本も見えますよね。これ、何でしょう?
この画像はキリマネの飛行場に着陸する寸前の飛行機の中から撮りました。帯状に群生するヤシの木が見えますね。グーグルアースの画像で見えた細かい線は全て帯状に育ったヤシの木の林なんです。
思うに、ずっと昔、海退(海の水位が徐々に下降する)していた頃、海岸線が後退するにつれて海辺に打ち寄せられたヤシの実が密生して、かつての海岸線を描くように残っているのではないか、と。
海退は海水が南極や北極で冷えて凍っていくために海全体の水位が下降していく現象です。ヤシ林が帯状に形成されていることから、海退が段階的に起こっていることがわかります。
帯状にヤシ林が形成されるということは、寒冷化には急激に進む時期と停滞する時期があり、それが繰り返されてきたのでは、と想像できます。寒冷化停滞期に、波で打ち寄せられるヤシの実の密度が高まり、それが発芽して育ち、林が形成される。その後、寒冷化が再開されて海退することで砂浜が成長し、ある程度の時間が経過した後にまた寒冷化が落ち着いてヤシ林が形成される。
ヤシ林の帯の間隔を測ってみると、短いもので100m以下、長いもので500mくらいあります。間隔が長いところが陸地となった時期には、急激に寒冷化が進んだ、もしくは寒冷化が落ち着かず比較的長期間に及んだ時期なのでしょう。
地質学関係の某ウェブサイトによると、水位が1m下降するのに500年間かかる時期もあったり、またある時期には250年間で5mも下降する時期があったりするらしい。
ヤシ林の幅も一定ではなく、太いものや細いものがあります。太い部分は寒冷化が停止したわけではなく、非常に緩慢な速度で海退した時代の跡でしょうし、細い部分は停滞期が短かった時期ではないかと思います。
かつて海だった陸地、というのは世界各所に存在するようですが、海退によって陸地になった経過をこれほどわかりやすく想像できる場所はそうないのではないでしょうか?
キリマネの中心地から最寄りの海岸まで、直線距離でだいたい18キロくらいあります。
海底だった部分がどんどん陸地となっていき、露わになった地面が乾燥して固くしまり、そこにヒトが集まって集落が形成されて街になってゆくまで、どのくらいの時間がかかったのだろう。
現在は温暖化している時期なので、海退とは逆の現象である「海進」が起こっているようです。想像できないほど長い時間をかけた陸地の侵攻機会が終了し、また気の遠くなるような長い時間をかけて海が陸地を吞み込んでゆく。
非常に大きなスケールで地球が深呼吸しているようなイメージを持ちました。