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Weekend Strummer

ウィークエンド・ストラマー。
世間知らずのオジサンが脈絡無く語る、ギター・アフリカ・自閉症。

エララネのアリ

2022-07-17 03:11:03 | モザンビーク

ニコアダラ郡エララネは、昔ポルトガルが灌漑事業を行っていたおかげで地面がうまく均されており、広々とした眺めが良いところです。なぜか訪れる時にはたいてい気持ちの良い風が吹いていて、それも地面が平らなせいかもしれません。

先日、エララネを訪問した際、不幸にも水田用のブーツを忘れて来たことに気づきました。
エララネは今年初めのサイクロン時に水位が上がった付近の河川から水が流れ込み、多くの畑が水没しました。だいぶ水は退きましたが、それでもそこかしこに滞水が残っています。
忘れちゃったらしょうがない。私の職業は濡れるのを嫌がっていたら仕事になりません。覚悟を決めて、それでも一応チノパンの裾だけは膝下までまくり上げ、ワークブーツを水に浸してズボズボと稲の圃場まで歩きます。

エララネの特色はもう一つ、やたらとアリが多いこと。なんという種類なのか赤っぽい色をしたアリで、塊のような群れを作ることはないのですが、生息している個体の密度がすごく高い。で、奴らが盛んに集(たか)るんです。
滞水している箇所にはもちろん蟻はいませんが、上陸したとたんに一斉にちまちまとヒトの足を駆け上って来ます。

うわぁ、すごい歓迎ぶりだなー。

働きアリはなんてことない。身体を這いまわるので不愉快だけど、ムズムズするだけ。
大きな身体とアゴを持つ兵隊アリに噛まれると痛いんです。しかもきっとフェロモンなどで連絡し合っているんでしょうね、身体のあちこちにたかる兵隊アリがほぼ同時に攻撃してくるので、ちょっとびっくりします。予想外の場所を攻撃される場合もあり、そんな時は小規模なパニックを経験することになります。

パニックを予防するべく、足を登り来るアリたちを振るい落とそうとダンッ!と勢いをつけて足踏みをしていたら、一緒にいた農家のイザベラさんに注意されました。
「そんなに大きな足音を立てたら振動で他のアリまで呼び寄せちゃうわよ。静かにしていたほうがいいわ」
ふーん、そういうものかー。じゃ、仰せの通り、静かにしてます。
………。
いや、静かにしてても来るよー! 俺の足、たかったアリでかなり黒くなっちゃってるよー!
すかさず手で払おうとしたら、
「叩いちゃダメ! 叩くと噛まれるわよ!」
そういえば、アリやハチってつぶすと体内から攻撃フェロモンが飛び散って他の個体から集中攻撃を受けるって聞いたことがあるなー。
じゃ、さらに我慢して動かずに……。

全然ダメ。効果なし。
何度か強めの足踏みをしたせいで、すでに周囲のアリの注目を集めてしまったようです。数十センチしか離れていないのに、イザベラさんには全くアリは来ず、反対に私の身体の上を這いまわるアリの数はどんどん増え、うわー、コレどうなっちゃうんだろう? 映画「黒い絨毯」に出てきた白骨死体が脳裏をよぎり、感じ始めた「不安」が濃厚になって「恐怖」となり、さらにパニックの領域に達し、我慢できなくなった私はダメダーッ! などと叫びつつ、飛び込むように滞水部分に戻ってポロシャツを脱ぎチノパンも膝まで下ろして身体中をはたいてアリを落とし、急に半裸パンイチになった日本人を見たイザベラさんはけしからんことにケラケラといつまでも笑っているのでした。


地平線まで見渡せるエララネの稲圃場

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冬のキリマネ

2022-06-25 15:40:53 | モザンビーク

私のモザンビークでの仕事も、もうすぐ終わり。今回が最後の赴任であります。

キリマネは南緯17度。南半球に位置しておりますので、季節は日本と反対になります。
先日の6月21日は日本では夏至でありましたが、こちらでは冬至。日本ほどではありませんが、体感でわかるほど日長が短くなります。
季節的にはすでに乾季であるはずなのに、どういうわけか今年はまだ降雨が続いております。降雨のせいで畑に水が残り、農家の稲の収穫作業を邪魔します。例年でしたら5月中にはほとんど終了する収穫作業ですが、3月のサイクロン襲来のあとに植え直したので収穫が遅れているんです。
せっせと収穫作業に勤しんでも、日が短くてすぐに暗くなってしまうので、農家が働ける時間もごくわずか。畑によっては膝上まで水が溜まっている箇所もあり、夕方の収穫は身体が冷えてかなり辛い作業となってしまいます。
数か月前の複数のサイクロン上陸に加えて収穫期に長引く季節外れの降雨。

今年のザンベジアはとことんツイてないようです。




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キリマネ市名誉市民

2022-04-01 11:34:28 | モザンビーク

どういう風の吹き回しでしょうか、キリマネ市から私に名誉市民賞が授けられることになりました。先日、勤め先の州農業局の局長に呼ばれ、そういう運びになったから、と伝えられました。
名誉市民だなんて、青天の霹靂であります。今までさほど役に立つ仕事をしてきたわけじゃないのに、こんな風に持ち上げられると、もったいないし照れくさいし恥ずかしい。当然嬉しくもありますが。
市民賞ではありますがザンベジア州知事による授与となるそうです。それというのも、今回の名誉市民にはサイクロンによる州内のダメージを克服して農業復興を果たすための一助となることが求められ、その活動の場をキリマネ市内に限定しないためなんだそうです。
今月17日に市内中央の英雄広場で開かれるイースター・フェスティバルで受賞式が行われるとのこと。残念ながら日本では見られないと思いますが、テレビ中継もあるそうです。
金色の大きな鍵のハリボテが渡され、副賞(と言っていいのかな?)として、市内の一等地にキリマネ市が所有する家屋(邸宅と言ってもいいような規模です)の終身居住権を授かることになりました。私が生きている間はいつまでも住めるけれども所有権はなく、そして一度住み始めたらずっと住み続けなくてはならないのだそうです。国外に出ること叶わず。ということは、日本には帰国できないということになります。

母国に帰れないのはちょっと寂しいですが、せっかくの申し出なのでありがたく受けることにしました。日本で所属している会社を辞め、今後はザンベジア州農業局からお給金をいただく身となります。仕事そのものは今までとさほど変わりませんが、残念ながら収入面は少々寂しくなります。
でもキリマネだったらあまりお金の使い道もないし、日々食べるものは郊外に小さめの農園を借りれば自給自足できるでしょうし、邸宅の管理をするために市に雇われているヒトは身の回りの細かい仕事も請け負ってくれるそうですし、この先大きな出費もなく、特に苦労せずに生きていけそうです。

近いうちに日本から家族を呼ぶつもりです。妻も娘も熱帯国の暮らしには慣れておりますし、久しぶりの海外での生活を楽しみにしているようです。
愛犬バタコにとっては2度目のアフリカ生活です。犬の寿命を考えれば、彼女はここで生涯を終えることになるでしょう。そして私も死後は彼女のそばに埋葬してもらおうと思います。ずっと一緒だよパトラッシュ。

日本でお世話になった皆様には今後は直接お会いする機会は激減するでしょうが、リモート生活が普及している昨今、時差のタイミングさえ克服できればいつでもおしゃべりは楽しめましょう。また、何かの機会にモザンビークにお越しの際はぜひ拙宅にお立ち寄りください。
皆さんどうぞお元気で。

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アナ、デュマコ、ゴンベ

2022-03-25 22:47:56 | モザンビーク

昨年の暮れ、隣国南ア共和国で発見されたオミクロン株の拡散に追われるようにモザンビークを出国。およそ三か月半を日本で過ごして、またもキリマネに帰ってきました。
私の留守中、モザンビークは複数回に及ぶサイクロンの襲来を受けました。1月に「アナ」、2月には「デュマコ」、そして今月11日には最大瞬間風速50mを超える強力なサイクロン「ゴンベ」が上陸しました。

画像はウィキペディアより。2022年3月10日のゴンベ

画像はウィキペディアより。2022年3月10日のゴンベ

特にゴンベは強風だけでなく大雨の被害著しく、多くの河川が氾濫したことで20年に一度の大洪水が発生したとのこと。実際、キリマネ空港に着陸するため低空飛行に入った機窓からは、普段でしたら青々と茂る稲が見えるはずなのに、地表の大半は水面に覆われておりました。仮にすぐに水が引いたとしても稲の生育への影響は大きく、ただでさえ高くない収量が更にガタ落ちすることは火を見るよりも明らかです。
加えて道路や橋などのインフラ設備が破壊されておりますので流通状況も悪化し、各地での食糧不足の発生が心配されています。

州全体を見れば心配は山積みですが、幸いにも被害を免れたキリマネ市内は今日も晴れ、行きかうヒトも笑顔を見せているのでした。のほほん。

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水色のワゴン

2022-01-23 15:56:29 | モザンビーク

娘の最近のお気に入りの楽曲の一つがハイ・ファイ・セットの「水色のワゴン」です。
高めの音域で伸びやかに歌われる曲が好きなので、サビでメロディーラインが高くリズミカルになる「水色のワゴン」はきっと気に入るだろうな、と思って歌って聴かせたらやっぱり気に入って、それから頻繁にせがまれるようになりました。

海への行楽から帰る多くのクルマが走る夏の高速道路。傍らを追い越していく水色のワゴンが故郷のナンバープレートを付けているのに気付き、若い頃のいろんな想い出がよぎる。このままずっと追いかけて行けば、懐かしいあの街角に帰って行けるかも。

途上国で生活していると日本から輸入された中古車をよく見かけます。商用で使われた過去のあるクルマには車体に社名や広告が日本語で書かれており、途上国の新オーナーはそれを残したまま使っていることが多いです。日本で使われていた日本製のクルマは、もともとのクオリティが高いことに加えて日本の厳しい車検制度の下で定期的なメンテナンスがなされていたわけで、車体に書かれた日本語はその証として一種のステイタスにもなっているようです。
なので、車体に書かれているのは日本語であればなんでもよくて、オーナーやドライバーはその意味を知らないまま使用しているケースが多い。
昔、スリランカの田舎町をクルマで走行中、側面に大きく「昭和女子大」と書かれたバスを見かけて、ついフラフラと追跡してしまった経験があります。次の停留所でぞろぞろとスリランカ人男性が下りてきたのを見て我に返り、すぐにUターンして、来た道を帰った私です。我ながらいったい何を期待していたのか?

何らかの理由で車体を塗りなおす必要が生じた場合も、せっかく書かれていた日本語の文字は消したくない、と思うヒトも多いようです。
下の画像はモザンビークのキリマネからニコアダラに向かう国道を走行中、前を走っていた乗り合いバス。塗りなおした後、しかたなく元の文字を真似て自分で無理やり書いたのでしょう、どこか幼さを感じさせる筆跡が可愛かったりします。
でも「ドメンテナンス」って…。

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