シャーマンがくれた油でランプを灯すことで、霊の気配が消えました。
こういうのはお礼参りが肝心。きちんとお礼しとこう。
妻と二人で例のシャーマンを訪ね、頭を下げました。
頂いた油で三週間、灯を点しました。おかげさまで気持ちよく生活できるようになりました。
と言ったところ、件のシャーマンは怪訝そうな顔で我々の顔を見比べ、
「旦那さんの家? いーえ、私が感じたのはあなたが住んでいる家にいる霊のことよ・・・」
と、妻を指差したのです。
うっそーん! キャンディにもいるのー?
顔を見合わせて驚く我々にシャーマンは新たな油をもう一瓶渡し、
「もう三週間、今度はあなた(妻)の家で同じようにランプに灯を点しなさい。前にも言ったようになるべく家の中心に近いところにランプを置くこと。いいわね」
キャンディに借りた家は丘の中腹に位置していて眺めが良く、もともとはオーナーがゲストハウスとして経営していた大きな家です。宿泊客が使うことを想定して作られたダイニングは広々としていて明るく、陰湿なイメージは全然ありません。
しかしながら、ゲストハウスとして開店して以来我々が借りることになるまでの1年半の間、実は宿泊客がまったくおらず、誰も泊まったことがない、という事実がちょっと気になるところでありました。
帰りの車中で妻が言うには、
* 実は最近妙な気配を感じている。
* 例えば他の部屋に入る時、ドアを開けた途端に目には見えない何者かが出てきて、その気配がスルリとすぐそばを通り過ぎるのを感じたりする。
* 視界の隅に黒い人影が見えることさえある。
* 先日は、娘のブランコがひとりでに揺れているのを目撃した。
キャンディの家の庭には私が娘のためにこしらえたブランコがあり、ある日の夕方、それがまるで誰かが乗って漕いでいるかのように揺れていたと言うのです。もちろん無人のまま。
(この話をすると決まって、風で揺れたんだろう、と疑うヒトがいるのですが、通常ブランコの板は地面に水平で風の抵抗をほとんど受けないので、強い風が吹いてもヒトが乗っているようには揺れません)
うわ、それ、やばいでしょー!
お昼のワイドショーなんかで紹介される心霊体験のエピソードそのものじゃん。
あんた、そんな怖い体験しといて、なんで今まで黙ってたの?
「心配かけるといけないと思って」
・・・俺、立場ないじゃーん・・・。
その後、キャンディの家でも三週間に渡って毎日、農場の家と同様にランプを点しました。
霊は静かに出て行ってくれたようで、ブランコがひとりでに揺れることは二度とありませんでした。
時々考えるんですが、キャンディの家にいたというその霊、ひょっとしたら農場の家から私が連れてきた霊だったのかも知れませんよね・・・。