ちょっと間が空いてしまいましたが、スリランカの幽霊屋敷の話、続編です。
前回は、頻繁に霊障が起こる家を借りた私が、お経のカセットテープとお香の煙で対抗する、というところまで書きました。(参照:「俺にかまうと後悔するぜ」と「閉め出さないで」)。
週末には妻子が待つキャンディの家に帰りました(私が勤務する農場周辺は人口が少なくて不便なので、妻子は島中央部の町・キャンディに借りた家に住んでいたんです)。
キャンディに帰った時、私はかなり憔悴していたと思います。毎晩焚きこめるお香の濃厚な煙にあたって目が充血していましたし、更に恐怖心を紛らわすために飲むウィスキーのせいで喉がガラガラに荒れていました。
キャンディは島の中央部の丘陵地帯にある、コロンボに次ぐスリランカ第二の都市です。
町からちょっと離れた静かな丘の中腹に借りた家は風光明媚で開放感があり、気分の良い場所でした。
週末は久しぶりにぐっすりと眠ることができました。深酒せずとも、またお香の煙がなくとも、安心できる平和な夜でした。
そんな楽しい週末はあっと言う間に過ぎて月曜日の朝。農場に戻らなくてはなりません。また恐怖の日々が始まるのです。
当初、心配させるといけない、と思って妻には黙っていたのですが、もしかすると事態が悪化する可能性も考えられ、結局は相談することになりました。
そしたらさすが我が妻。悪魔払いが得意なシャーマンが市内にいるらしい、というのです。
おお! そんじゃそのヒトに頼んで霊を追っ払ってもらおう!
と、勇んで立ち上がりかけた私を妻は止め、
「あたしが行って相談してくるから、とりあえずアンタは仕事に行きなさい」
忙しい時期でもあり、泣く泣く農場に戻る私でした。
その後、妻はスリランカ人の知り合いに教わったシャーマンの家を訪ねます。
妻の顔を見たシャーマン(女性)が開口一番、
「あなた、家に得体の知れないものが出て困っているんでしょ?」
と、何も相談していないのに、言い当てたんだそうです。
顔を見ただけでこちらの悩みがわかっちゃうなんて、さすがシャーマン!
ビックラこいた妻は、
そうそう、それで相談しに来たの。
と、うなづくと、シャーマンは妻の顔をしばらく眺め、
「・・・大丈夫。私が見たところそんなに悪い霊じゃない。家の中でちょっといたずらをする程度。それでも良い気持ちはしない、というのも理解できる」
そう言って油が入った壜を渡し、
「家の中で日没直前から30分間、この油を使ってランプを点(とも)しなさい。家屋の中心になるべく近いところで、毎日忘れずに三週間やること」
油は単なる燃料ではなく、何か特殊な「気」を込めるなどの処理が施されていたのだと思います。
次の週末、妻から油を受け取った私は農場の家で毎日ランプに火を点しました。私が留守の時には使用人のニマルに頼み、とにかく三週間、愚直に毎日、点灯作業を続けたのです。
気のせいもたぶんにあるかとは思いますが、ランプの灯りを点すことで恐怖心が薄れ、煙幕作戦も深酒習慣もせずに安らかな夜を迎えることができるようになりました。
家の中はもちろん、屋外にも霊の気配はありません。
おー、やったー! いなくなったー!
ようやく安心して生活できるようになったのでした。
しかし、話はまだ終わったわけではありません・・・。
(この項続く)
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