別海パイロットマラソンの終盤に吐き気が続いたことがしばらく気になっていた。そんな時にカナダさんがブログ(1)で、水泳の後にも吐き気が生じることを書いていたので興味を持って調べていたら、過剰な運動によって血液中に乳酸が蓄積される(2)と高乳酸血症となり、腹痛、嘔気、嘔吐が出現し、それが高度になると致死的な乳酸アシドーシス(3)に発展する危険性があるとの記載を見つけた。実際に私の場合にそれが当てはまるのかどうかは分からないのだが、せっかくだからこの機会に乳酸のことを多少しつこく調べてみた。
Wikipedia(4)(5)によれば、乳酸(Lactic acid,またはlactate)は、化学式はCH3CH(OH)COOHで、IUPAC名は2-ハイドロキシプロパン酸という。動物では、正常の代謝過程や運動時の無酸素過程でピルビン酸から酵素LDHを介して絶えず作られており、産生が除去よりも上回った時に血中濃度が上昇する。マラソンと乳酸との関係については、次の3点について押さえておくことが重要に思われたので、以下にまとめてみる。
① 乳酸アシドーシスとの関係
② マラソン後の筋肉痛との関係
③ 乳酸閾値の意義
<乳酸アシドーシスとの関係>
メリーランド大学医療センターのHP(2)によれば、乳酸は身体の酸素レベルが低下した時に産生され、これが血液中から除去される速度を上回った時に乳酸アシドーシスが発症するという。原因としては、強度の運動である場合が多く、またある種の疾患、例えば敗血症、呼吸不全、AIDS、癌、腎不全でも生じることがあり、さらに糖尿病治療薬であるメトフォルミンが原因となる場合もある。血液が酸性化することにより、嘔気、脱力といった症状が出現するので、このような場合には血液の電解質をチェックすることが必要である。治療は背景にある医学的問題を是正することであるとのこと。
ところで身体の酸素レベルの低下には、呼吸不全などのように組織への酸素供給が低下する場合と、強度の運動のように組織での酸素需要の増加が考えられる。マラソンのような強度の運動時には筋でのエネルギー需要が高まり酸素の供給量も増えるが、乳酸の権威である八田氏(7)によれば、ブドウ糖の分解によって生じるピルビン酸の産生量も増えるため、これをより素早く分解する経路として乳酸産生が高まるのだという。すなわち強度の運動時に乳酸が増えるのは、酸素不足というよりはエネルギー産生が増えたことによる必然的な結果であるようだ。人間の場合、安静時の血中濃度は1-2mmol/lであるが、激しい運動の最中には20mmol/l以上に増加するという(5)。
従来はこのように血液中の乳酸が増加してくることが血液を酸性化させ、その結果乳酸アシドーシスが発展してくると考えられていたが、Wikipedeiaの説明(5)によれば、ここには別な反応が関与しているようだ。というのは、乳酸にはH+を放出する能力がなく、人間の身体組織の正常環境下では酸として存在することができない(7)らしいからである。Robergsらの研究(8)によれば、アシドーシスの発展に寄与しているのは、ブドウ糖の分解によってエネルギー源として大量のATPが産生されるが、この大量のATPが加水分解によってエネルギーに変換される時に必然的に大量のH+が放出され、これがpHの低下を引き起こしその累積的結果としてアシドーシスの状態がもたらされる(5)のだと言う。
<参考資料>
(1)サロマ・アゲイン:http://ameblo.jp/knd/theme-10003144968.html
(2)University of Maryland Medical Center:
http://www.umm.edu/ency/article/000391.htm
(3)NRTIによるミトコンドリア障害:
http://www.bms.co.jp/medical/sizai/nrti-ishimuke.pdf
(4)乳酸:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%B3%E9%85%B8
(5)Lactic acid:http://en.wikipedia.org/wiki/Lactic_acid
(6)新たな乳酸の見方:
http://www.h4.dion.ne.jp/~jssf/text/doukousp/pdf/200610/0610_4750.pdf
(7)Lactic acid and running: myths, legends and reality:
http://www.time-to-run.com/theabc/lactic.htm
(8)Biochemistry of exercise-induced metabolic acidosis:
http://ajpregu.physiology.org/cgi/content/abstract/287/3/R502
Wikipedia(4)(5)によれば、乳酸(Lactic acid,またはlactate)は、化学式はCH3CH(OH)COOHで、IUPAC名は2-ハイドロキシプロパン酸という。動物では、正常の代謝過程や運動時の無酸素過程でピルビン酸から酵素LDHを介して絶えず作られており、産生が除去よりも上回った時に血中濃度が上昇する。マラソンと乳酸との関係については、次の3点について押さえておくことが重要に思われたので、以下にまとめてみる。
① 乳酸アシドーシスとの関係
② マラソン後の筋肉痛との関係
③ 乳酸閾値の意義
<乳酸アシドーシスとの関係>
メリーランド大学医療センターのHP(2)によれば、乳酸は身体の酸素レベルが低下した時に産生され、これが血液中から除去される速度を上回った時に乳酸アシドーシスが発症するという。原因としては、強度の運動である場合が多く、またある種の疾患、例えば敗血症、呼吸不全、AIDS、癌、腎不全でも生じることがあり、さらに糖尿病治療薬であるメトフォルミンが原因となる場合もある。血液が酸性化することにより、嘔気、脱力といった症状が出現するので、このような場合には血液の電解質をチェックすることが必要である。治療は背景にある医学的問題を是正することであるとのこと。
ところで身体の酸素レベルの低下には、呼吸不全などのように組織への酸素供給が低下する場合と、強度の運動のように組織での酸素需要の増加が考えられる。マラソンのような強度の運動時には筋でのエネルギー需要が高まり酸素の供給量も増えるが、乳酸の権威である八田氏(7)によれば、ブドウ糖の分解によって生じるピルビン酸の産生量も増えるため、これをより素早く分解する経路として乳酸産生が高まるのだという。すなわち強度の運動時に乳酸が増えるのは、酸素不足というよりはエネルギー産生が増えたことによる必然的な結果であるようだ。人間の場合、安静時の血中濃度は1-2mmol/lであるが、激しい運動の最中には20mmol/l以上に増加するという(5)。
従来はこのように血液中の乳酸が増加してくることが血液を酸性化させ、その結果乳酸アシドーシスが発展してくると考えられていたが、Wikipedeiaの説明(5)によれば、ここには別な反応が関与しているようだ。というのは、乳酸にはH+を放出する能力がなく、人間の身体組織の正常環境下では酸として存在することができない(7)らしいからである。Robergsらの研究(8)によれば、アシドーシスの発展に寄与しているのは、ブドウ糖の分解によってエネルギー源として大量のATPが産生されるが、この大量のATPが加水分解によってエネルギーに変換される時に必然的に大量のH+が放出され、これがpHの低下を引き起こしその累積的結果としてアシドーシスの状態がもたらされる(5)のだと言う。
<参考資料>
(1)サロマ・アゲイン:http://ameblo.jp/knd/theme-10003144968.html
(2)University of Maryland Medical Center:
http://www.umm.edu/ency/article/000391.htm
(3)NRTIによるミトコンドリア障害:
http://www.bms.co.jp/medical/sizai/nrti-ishimuke.pdf
(4)乳酸:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%B3%E9%85%B8
(5)Lactic acid:http://en.wikipedia.org/wiki/Lactic_acid
(6)新たな乳酸の見方:
http://www.h4.dion.ne.jp/~jssf/text/doukousp/pdf/200610/0610_4750.pdf
(7)Lactic acid and running: myths, legends and reality:
http://www.time-to-run.com/theabc/lactic.htm
(8)Biochemistry of exercise-induced metabolic acidosis:
http://ajpregu.physiology.org/cgi/content/abstract/287/3/R502
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