ザ・名も無きランナー

50才から始めたマラソン。こころと身体が一つになって燃焼している感じが好きです。楽しんで走っていきたいと思っています。

カーボローディング

2008年10月18日 | 参考資料
1 伝統的なカーボローディングの方法(3)

 カーボローディングは運動能力を増強させる戦略方法のひとつで、競技を行う前の週に2段階に分けて実施されるのがふつうである。ただしその運動競技が1時間以上の高い強度の持続を必要とするようなものでなければ妥当しない。

<第1段階>
 レースの1週間前から炭水化物の摂取を総摂取カロリーの40~50%に抑え、代わりにタンパク質と脂質の摂取を増やす。トレーニングはふつうのレベルで実施する。これにより体内の炭水化物の貯蔵量が減少し、カーボローディングのための空きスペースが確保される。
<第2段階>
 レースの3,4日前からは、炭水化物の摂取を毎日の総摂取カロリーの60~70%に増やす。脂質を多く含む食物を切り詰めて、炭水化物を多く含む食物を摂るようにする。トレーニングを縮小し。グリコーゲンの貯蔵量の減少を避ける。レース前の1,2日は完全休養とする。

2 カーボローディングの理論的仮説

 擬人化した表現で言えば、前半の3日間に炭水化物の少ない食事をとることで、身体は自らのグリコーゲン貯蔵量に不足が生じていて、通常よりもグリコーゲンを多く貯蔵しなければならないと考えるようになる。後半の3日間は、炭水化物を多く摂取することにより、身体はグリコーゲン貯蔵を回復させ、その際いくらか余分に補充しようとする、ということである。(1)
 カーボローディングは1967年にスウェーデンのSaltinとHermansonによって発表された研究に由来する概念である。彼らは、持久系運動の数時間ないし数日前に炭水化物の摂取量を増加させることによって、筋肉のグリコーゲンを有意に増加させることができることを、筋生検による調査によって明らかにした。また筋肉のグリコーゲンの貯蔵量を減少させるような長時間の激しい運動の直後に炭水化物を多く摂った場合に、筋肉のグリコーゲンレベルが最適になることを示した。しかしながら、1939年同じくスウェーデンのChristensenとHansenは、激しい運動の直前に炭水化物を多く摂るとパフォーマンスが低下することを報告している。これは炭水化物の負荷により低血糖反応が引き起こされるためと推測される。(2)

3 カーボローディングの副作用(1)(2)(3)

 カーボローディングに効果があるとされるのは1時間以上の高度な持久系運動に限られる。実施の際にはいくつかの注意点と副作用についても理解しておく必要がある。

� 注意点
・前半の3日間においても、毎日の身体の主要な機能を維持するためには、1日約60gの炭水化物が必要であり、全く摂取しないというわけにはいかないこと。
・後半の3日間の高炭水化物食の時に食べすぎは禁物であることと、同時に適量のタンパク質、ミネラル、ビタミン、水分の摂取が欠かせないこと。またこの際ふだんよりも水分の摂取量が増える傾向にあること。
・あらかじめカーボローディングを行っていたとしても、レースの間中、血糖値を一定に維持し続けるためには、途中で果実を摂取したりスポーツドリンクを補給したりするなどが必要であること。

� 体重増加
・グリコーゲン1gにつき3gの水が一緒に貯蔵される。したがって最大限にカーボローディングをした場合にはレース開始前に2~3kgの水を体内に抱え込んでしまうことになる。1,2kgであっても体重増加がパフォーマンスを妨げる可能性があるならば、カーボローディングはやめた方が良い。

� 消化不良
・レース前の1,2日は繊維質を含む食物は制限した方がよい。豆類、シリアル、ブロッコリーを摂取すると腹痛が生じたり,お腹が張ったり、軟便になったりする。

� 血糖値の変化
・カーボローディングは血糖値に影響を与え、血糖値が上がると反応性にインシュリンの分泌量も増える。それによって脂肪の貯蔵が増加し、脂肪の分解過程が干渉を受けると、ランでのエネルギー産生機構にも影響が及ぶ。またその他のホルモンバランスにも妨害が生じ、血圧は上昇し、血中のコレステロールと中性脂肪のレベルも上昇する。
・血糖値の上昇に反応してインシュリンの分泌量も増えるので、これにより低血糖が生じてしまう場合があり、糖尿病の人は開始前には必ず医師に相談するべきである。
・カーボローディングによる低血糖反応は、判断能力の低下、集中力の低下を引き起こし、パフォーマンスを測定する能力に影響を与えるとともに、無気力になったり、気持ちが滅入るような場合も見られる。

4 カーボローディングに対する誤った考え方

�筋肉のグリコーゲンだけがランのエネルギー源なのか?(2)(3)
 筋肉のグリコーゲン貯蔵量は少量であり、5~10kmのランには十分量であっても、90~120分を越える強度の運動では、筋肉のグリコーゲンは使い果たされてしまう、と言われることがある。しかしこれは正しくないだろう。先にグリコーゲンを消費し尽くしてから次に脂肪酸の分解にエネルギー産生の主役が交代するわけではなく、実際には両方のエネルギー産生機構は、運動の強度や持続に応じて滑らかに連動して同時に作動しているものと考えられる。多くの持久系運動、例えばトライアスロンやフルマラソンの場合では、65~75%が有酸素運動で行われており、実際に半分以上は脂肪の分解で得たエネルギーが利用されているという。脂肪はふつう体内に十分量貯蔵されており、それを上手く燃焼させていけばエネルギー源として不足することはないはずである。重要なことは高品質のスポーツドリンクなどで、ランの間中、血糖値を一定に維持していくことである。

�カーボローディングによって良好なパフォーマンスが得られるのか?(2)
 カーボローディングの理論的仮説によれば、低炭水化物食を3日間続けた後、高炭水化物食を3日間続けた場合に、筋肉のグリコーゲンが増加すると考えられていたが、炭水化物50%食の後に、炭水化物70%食を3日間続けても同様のグリコーゲン増加が認められ、また単に炭水化物50%食を1週間続けただけでも、ある程度のグリコーゲン増加が認められたという。またその際のパフォーマンスに有意な差は認められなかったという。さらに、貯蔵されたグリコーゲンレベルが持久系運動のスピードの差に影響を与えるというエビデンスは、残念ながら今のところ無いようである。

5 より現実的なカーボローディングの方法(4)

 レースの前週にバランスの良い食物を摂取しておけば、それだけですでに筋肉には十分なグリコーゲンが貯蔵される、というのが最近の考え方である。
 マラソンの前週にはトレーニング量を徐々に減少させ、炭水化物を60~70%含むバランスの良い食事を摂るようにし、過剰な減食はしないのが良い。もし体重制限食を行っているならば、基礎代謝量まで摂取カロリーを上げたほうが良いようだ。
 もしパスタパーティ(レース前夜にパスタをたっぷり食べること)をしたいのなら、レース2日前の夜にした方がよい。しかし決して大食いはしないこと。この時カフェインとアルコールは極力ひかえ、飲むなら水にする。食物繊維を大量に摂ることは勧められない。中庸に徹することが肝要だ。
 1日前には、豆類、ブロッコリー、シリアルといったお腹が張る原因となる食物や高繊維質の食物は摂らない。乳糖不耐症の人は牛乳も飲まない方が良い。香辛料の利いた食物は腸管の動きを亢進させるので避けた方が良い。低残渣食がお勧めであり、基礎代謝を満たす程度の食事とする。アルコールは避け、カフェインは最小限にとどめる。
 多くのランナーはスタート前には何も口にしない。当日の朝食には、薄味で炭水化物に富んだ消化の良い物を摂取すべきである。コーヒーが欲しければできるだけ少量とする。
 スタートの1,2時間前には水を多めに摂っておき、その後スタートまでは水分を摂らない。それによって水分が十分に補充され、余分な水分を排泄する時間も確保される。

<参考資料>

(1) Brian Mac: Carbohydrate Loading:
http://www.brianmac.co.uk/carbload.htm

(2) L.Lee Coyne. Carbohydrate Loading. Con in the “carbo-loading argument”: Centralhome.com.
http://www.centralhome.com/ballroomcountry/carbohydrate-loading.htm

(3) Mayo Clinic.com. Carbohydrate loading: Can your deit boost your athletic performance?:
http://www.mayoclinic.com/health/carbo-loading/HQ00385

(4) Wendy Bumgardner. Shold I carbo load before the marathon?: About.com.
http://walking.about.com/od/marathontraining/f/carboloading.htm


3つの疑問(カーボローディング、給食、給水)

2008年10月12日 | 自己分析
★別海パイロットマラソンでの、カーボローディング、給食、給水について

 今年は昨年に比べて走れていない。理由はいくつかあるが、言い訳にはならない。そんな明らかな練習不足の中で臨んだ別海パイロットマラソン。なんとかしなければと思って、今回もまた懲りずに姑息的なことを考えてしまった。それはカーボローディングである。だがそのための食事の準備は自分ではできない。そこでいつものように女房に協力を依頼した。あとは食事量をどれだけ管理できるのかという自分の意思次第となった。

★自験例呈示

 1週前の日曜日に26kmのLSDをこなしてからご飯を少なくして肉類を多くする食事内容に替えてもらった。月・火・水曜日とランはお休み、というか時間の都合がつかなかった。これで前半は体重56kg台をキープ。身体はなんとなく皮膚がつっぱり、動作が硬くてぎこちない感じがした。思考もなめらかさを失い、どこか根気がなく「まあいいかっ」というような調子であった。一番の大きな変化は便が柔らかくなって毎日出づらくなったことであった。
 木曜日の朝に20kmのLSDを済ませてからは、ご飯を多めにして肉類よりも野菜を摂るようにした。ランはせず休養に努めた。思考には柔軟性が戻ってきたように感じた。しかし身体は重く、お腹がもたれる感じが続き、明らかに便秘となった。レース前夜には体重が+3kgとなっていた。これは食べ過ぎの結果と言って良いのかどうか分からず終いであった。排便は無く、非常に気がかりであった。
レース当日の朝、朝食にご飯を2膳、大福を1個食べた。他にサプリメントとしてL-カルニチン(170mg×)3錠、コエンザイムQ10(30mg×)2カプセルを服用。時間をかけてポカリスエット500mlを1本飲む。念じた甲斐あって、レース前に排便有りホッとした。
 レース最中の給食は、パワーバーのジェル(120kcal×)3本、サプリメントとしてアミノバリューBCAA200mg(12.9kcal)1本、シトリックアミノ(23.5kcal)1本、そして途中でバナナ1本分(110kcal)をいただいた。給水は、各ポイントで水ないしスポーツドリンクをコップ2杯分程度いただいた。
 レース中の走りとしては、30km地点までは平均5分30秒/kmのペースで進むことができたが、その後徐々に足が重くなり、ゴール手前では7分/kmにまで減速した。一番困ったのは、35km地点あたりからお腹に水が溜まったように気持ちが悪くなり、吐きそうな気配が続いたことであった。スタート時には丁度良かった、ウエストポーチの締まり具合が最後にはとてもきつく感じられるようになっていた。吐かずに済んだのが何よりの幸いであった。
 レース後、自然排尿があり、心配していた血尿はなく安心した。なお便の性状がふつうに戻ったのは2日後であった。身体のむくみがひけたと感じたのは4,5日後、体重が56kg台に戻ったのは1週間後であった。

★カーボローディングについての疑問

 一番大変だったのは、私のわがままに付き合って食事の準備を担当してくれた女房だったと思われる。まず女房に心からの感謝を申し上げておきたい。次に体験として最も難儀したのは、便の性状が軟らかくなり、毎日スッキリと出なくなったことだ。レース前日に排便が無かった時は心配したが、当日のレース前になって排便がありようやく安心できた。カーボローディングの後半、ご飯中心の食事になってからは、十分に気をつけていたはずなのだが、リバウンドが生じて知らず知らずのうちに食べ過ぎていたのかもしれない。レース前夜にふだんより+3kgも増加していたのにはビックリした。結果的に体重管理の面では逆の効果が出てしまったようだ。レースに対しての影響という点からは、客観的な評価尺度が無いのでなんとも言えない。主観的にはレース終了後にはいつもと同じように強烈な疲労がやってきた。レース中にハンガーノックを経験しないで済んだのは良かったが、実は一度も体験したことがないので、ハンガーノックがどんなものかが分からないというのが正しいところだ。
 今回のカーボローディングは正式・確実なものではなかったが、実際に体験してみて、途中から排便に難儀を感じたこと、レース前夜にかえって体重増加を招いたこと、レースでこれぞという効果を実感できなかったことなどを考えると、果たしてカーボローディングにはそれほどの価値があるのか、私には疑問である。

★給食についての疑問

 今回のフルマラソンで消費したエネルギーはFR301の計測によれば約3000kcalであった。エイドでの給食および携帯食は、レース途中でのエネルギー枯渇(ハンガーノック)への予防対策と考えられる。
 今回のレースでは、私は携帯したパワーバーのジェルを計3本(360kcal)、25km、30km、35kmの各地点で摂取した。また35km地点でバナナを1本(110kcal)いただき、さらに途中でサプリメントから合計36.4kcalのエネルギーを得た。またレース前のカーボローディングで約2000kcalのグリコーゲンを体内に蓄えていたと推測されるので、ブドウ糖に変換されたエネルギーは合計約2500kcalだったと推測される。
 以上を勘案すると今回のレースでは約500kcalの不足となるが、途中で特に空腹を感じたとか、急激に足が動かなくなるとか、意識が遠のくような感じになったということはなかった。
 別海のレースには約1000人のランナーが参加したということであるが、見たところ補食を携帯していると思われるランナーの数は非常に少なかった。先にも述べたが、私自身ハンガーノックというものを経験したことがないので、それがどういうものか分からないが、果たして現実にハンガーノックで倒れる人はどのくらいいるのだろうか。人はランで使用するエネルギーを全てブドウ糖で賄っているわけではなく、有酸素運動で脂肪を分解することによって大量のエネルギーを得ているわけだから、途中でブドウ糖エネルギーを補給する必要が本当にあるのか、私にはちょっと疑問に思えてきた。
 ところでハンガーノック(hunger knock)という言葉だが、和製英語だという説がある。英語ではhit the wall、またはbonkingと言うらしい。

★給水について疑問

 これまでのレースで私は終了後に血尿が出たことが2回ある。今回は各ポイントで毎回コップ1,2杯の給水を意識的に摂った。そのせいか途中でひどい口渇に見舞われることはなかったし、給水が十分であったことの証拠としてレース後に自然排尿が生じ、また幸い血尿も見ずに済んだ。しかしそれ以上に困ったのは、レース終盤にお腹に水が溜まったように苦しくなり、吐き気が続いたことである。ウエストポーチがきつく感じられるほどお腹のあたりが張っていたのは確かだ。このことは給水が過剰だったことを示しているのか、それとも何か他に理由があるのか、分からない。気象条件にもよるのだろうが、フルマラソンの間に果たしてどの程度の給水が望ましいのか、私には疑問となって残った。

08別海パイロットマラソン

2008年10月05日 | 完走記

 今年初めてのフルマラソン。今年はこれまで最長で38kmしか走っていない。本来は自己記録の更新を目指したいところだが、4時間30分以内での完走を目標と定めた。

 いつものように完走記のために経過を記憶しようと思っていたが、途中でやめた。なぜなら性能が良いとは言えない身体の維持と操縦に神経を使っているうちに、経過の記憶が困難になってきたからである。記憶力が落ちてきたのは加齢によるせいだけなだろうか。

 コースは下図のようである。このコースかなり平坦であるが、それでも約30m程度の高低差があり、前半は上りで後半が下りとなる。ほとんどが酪農地帯。それでも沿道には地域の方々がたくさん集合して応援をしてくれる。

 

 

 帰宅後スポーツトラックのデータを見てみると、30km以降に明らかにペースが落ち、心拍数も減少している。やはり人間の身体はふつうにフルマラソンを走れるようにはできていないのだと確信する。フルマラソンを一定のスピードで走り切るには30km以降をペースを落とさずに走り切れるような日々の鍛錬が必要なのだ。私の元来の素質と現在の練習では、その域に全く達していない。残念だが今のところこれが限界だ。

 

 

 今年のレースはこれで終了。来年以降のレース計画はどうしようかな。

 レースのスタート直後の姿とゴール間近の姿を並べてみた。当たり前だが、元気度が全く違う。フルマラソンの後は本当に疲労困憊である。(記録:4時間10分02秒)