なんか“こせこせ”したことばかりで、気が滅入るので、ギリシア神話について読んでみよう。
引用元は呉茂一『ギリシア神話』(新潮文庫)である。
その神話の最初の部分の解説を読む。
なお原文のカッコ部分をかなり省略した(原文に失礼であるが、煩雑なため)
★ ヘーシオドスは彼の創世記を、詩歌の女神たちへの呼びかけと主神ゼウスの讃頌(さんしょう)ではじめ、ようやく116行目から「いかにも最初にまずできたのはカオス」で、それから今度は「広い胸をしたガイア(大地)ができた、万物のとわに揺るがぬ座であるところの」と歌いだす。このカオスというのは、ふつう無秩序な混沌と解されているが、本義はギリシア語の「口を開ける、隙間を作る」などいう語根Cha-にもとづき、空間や隙間の、何もない拡がり、あるいはもやもやと煙霧の立ちこめた無限とここでは解すべきようである。
★ この一段は先に神々の誕生を述べるオリエント系の創世記よりもやや哲学的な、フェニキアなどに見る、世界の初めを一面の煙霧と暗闇とし、その混和から引き続いて「あこがれ」ポトスが生じた、とする別な創世説話にそっくりである。すなわちここでも、このガイアとともに、地底にあっておぼろにかすむタルタロスと、神々のうちでももっとも美しい神「愛」エロースとができたとし、一方また別にカオスからエレボス(幽冥界)と、か黒い「夜」ニュクスとが生まれたという。
★ 以下は大体順調に運び、この「夜」がさきの「幽冥」エレボスと愛において結ばれ、逆説的に高空の光と輝きに満ちた灝気(こうき)アイテール(エーテル)と、昼日へーメラーを生んだとする。一方「大地」ガイアはまず、星をちりばめた「天空」ウーラノスを産み、これを「不死なる神々の確固たる御座(みくら)」として、くまなくおのが身の上を覆わしめた。それから高い山々、波の逆巻く海原ポントスなどを、ひとりでもって産んだが、その後ウーラノスと一緒に寝て、深く渦巻くオーケアノスや、コイオス、クリーオス、ヒューペリーオーン、イーアペトスらの息子、およびテイアー、レイアー、テミス(法、掟、慣例)、ムネーモシュネー(記憶)、ポイベー、テーテュースらの娘を産み、さらに最後に、いちばん年若ながら「狡智に長けた」クロノスを産み落とした、という。これらがいわゆるティータンの一族、英語のタイタンどもである。