ギャップに振られた僕はスロットルを閉じて減速し始めた。
が…
NSは加速を止めなかった。
その先のS字は100前半では曲がれると思うけど
その速度では曲がれない。
なにしてるんだ!?コーナーが見えてないのか?
そう思ってるうちにNSは1つ目の左コーナーへ進入する。
ちょうどその時を見計らっていたように
大型トラックがS字を下ってくる。
車体をバンクさせる素振りも見せずコーナーを無視して道路を横切り
NSはトラックの正面へ吸い込まれていくように見えた。
間一髪
NSはトラックのフロントをかする様にすり抜けていきトラックの陰へと消えた。
トラックにぶつからなかったからと言ってTとNSが危機的状況から絶望的状況になった事には変わりなかった。
なぜなら
彼らはあの速度で30センチばかり高い歩道の段差へぶつかって吹っ飛んでいるのは間違いなかったから。
今まで自分を含め
仲間内でどんな事故があっても死人は出なかったし
こりゃダメだな なんて思った事はなかった。
けど今回ばかりは…。
現場の歩道へコブラを乗り上げ
サイドスタンドを出してメットを脱ぐまでの数十秒間
慌てる事もなく
蘇生は効くかな?四肢がちゃんと付いているといいなぁ。
などと考える位冷静だった。
目撃して止まってくれた車に救急車をお願いしてTを探しにいく。
そこは建物は建っていない広い更地で
僕の背丈位ある草がびっしりと生えていた。
もしまだ息があるなら早く見つけ出してやらなければならない。
飛びこんだと思われる場所の目星をつけて草むらへと足を入れる。
すると目の前の草々がガサガサと揺れ
草をかき分けながらTがヒョイと現れて一言
「しりの肉が削げた」![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyob_eye.gif)
しり以外は特に痛めているトコはなさそうなので
数分後にきた救急車へ一人で乗せ、バイク屋とTの家へ連絡する。
不思議と警察は来なかった気がする。
後日バイク屋に引き上げられたNSを見る。
丸まったダンゴムシみたいになってた。
まぁあの速度からだもんねぇ。
Tのケガは大した事もなく即日家へ戻れた。
あれから数十年
Tはまだ2スト250に乗っている。