映画雑誌「キネマ旬報」は、毎年2月、前年1年間に日本国内で劇場公開された日本映画と外国映画の中から映画評論家たちが各自選んだ作品を集計して年間ベストテンを決めている。そしてそれは「増刊 キネマ旬報ベスト・テン発表号」として本屋さんの店頭にに並び、その増刊号だけは毎回買い求め、映画に関する「資料」としてストックしてきた。
そんな「2024年 日本映画 外国映画 ベストテン」が今年もまた発表された。
発表された日本と外国映画のベストテンを観て、心底落ち込んでしまった。あまりに情けなくて自らを恥じてしまった。
まずは、今回の「2024年キネ旬ベスト10 日本映画」を列挙してみると、第1位が「せかいのおきく」。そこから順番に「PERFECT DAYS」、「ほかげ」、「福田村事件」、「月」、「花腐し」、「怪物」、「ゴジラ-1.0」、「君たちはどう生きるか」、最後の第10位が「春画先生」だった。
それから「2024年キネ旬ベスト10 外国映画」の第1位が「TAR ター」。続く第2位が「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」。あとは続いて「枯れ葉」、「EO イーオー」、「フェイブルマンズ」、「イニシェリン島の精霊」、「別れる決心」、「エンパイア・オブ・ライト」、「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」、最後の第10位が「ウーマン・トーキング 私たちの選択」となる。
愕然としたのは、ほとんどの作品をいまだ観ていないということだった。ほとんど観ていないじゃないか!
なんという恥ずかしさ!
だいたいにして、ここに選出されている日本映画のなかで観たのは「ゴジラ-1.0」たった1本だけだ。第1位の「せかいのおきく」も「福田村事件」も「月」も青森市内の「シネマ・ディクト」でちゃんと上映していたし、外国映画に関しても、観たのは「別れる決心」と「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」、その2本だけだった。
観ようと思えば、上映後直ぐに「Disney+」で配信されていた「イニシェリン島の精霊」や「エンパイア・オブ・ライト」だって、「Amazonプライム」で観ることが出来る第10位の「ウーマン・トーキング 私たちの選択」だって、知っていながら観るのをただ先延ばしにしていた、それだけのことだ。
もちろん、ベストテンに入った映画だけが素晴らしいわけじゃないし、評論家たちに評価を浴びた作品だからといって、それが即傑作だというわけでもないけれど・・・。
なので、とにかく遅くなってしまったものの、全作品を今から探し出してちゃんと観てゆくことにした。
まずは外国映画ベストワンに輝いた、「イン・ザ・ベッドルーム」「リトル・チルドレン」のトッド・フィールド監督による、ケイト・ブランシェット主演映画、「TAR ター」を「Amazonプライム」で観る。
しっかし。この「TAR ター」だって「Amazonプライム」で現在無料配信されていて、観ようと思えば直ぐに観ることが出来たわけでして・・・。なんという生臭坊主なんだろう・・・。
で、観ました、遅ればせながらまずは「TAR ター」を。
ドイツ名門オーケストラで、女性として唯一首席指揮者として任命されたリディア・ターという同性愛者の物語だ。
彼女はその類まれなる才能から世界的な指揮者としての地位を築き、同じ楽団に属している演奏者女性と養子に貰った女の子との3人暮らしを続けていた。
ところがそんなある日、次のコンサートで指揮するマーラーの交響曲第5番への取り組みでストレスが溜まる中、彼女が昔指導したある若手指揮者が自殺したことを知る・・・。
いやいや。主人公リディア・ターを演じているアカデミー賞を2度受賞したケイト・ブランシェットがあまりにも凄過ぎる。カメラが長回しされ、そこでのケイト・ブランシェットの演技が神がかっていて、本物のリディア・ター(架空の人物ですが)が自然体で話しているような錯覚さえ覚えてしまう。
約3時間に及ぶ大作ではあるけれど、最後まで引き込まれ、すべてに圧倒される。ラストのラストの描き方には少し違和感があるけれど、それ以外に非は一切ない。
傑作ですね。