淳一の「キース・リチャーズになりたいっ!!」

俺好き、映画好き、音楽好き、ゲーム好き。止まったら死ぬ回遊魚・淳一が、酸欠の日々を語りつくす。

シネ・スイッチ銀座でトルコのファティ・アキン監督「そして、私たちは愛に帰る」を観る。

2009年01月07日 | Weblog
 「シネ・スイッチ銀座」は、年末の休みということもあるのか、ほぼ満員の盛況。
 それも、どちらかといえば中高年の映画ファンが多いようだ。

 映画「そして、私たちは愛に帰る」は、2007年カンヌ国際映画祭で最優秀脚本賞と全キリスト協会賞を授賞した。
 「愛より強く」でベルリン映画祭金熊賞を受賞したファティ・アキン監督によるドイツ・トルコ合作のドラマである。

 「愛より強く」は、とても濃い映画だった。
 並みの恋愛映画の粋を超えていた。濃い目の珈琲を飲んだような深みと苦さがあった。そこに、甘美や哀愁はない。ひとつの凄まじい愛のかたちが、全編に燃え滾っていた。

 新作の「そして、私たちは愛に帰る」。
 3部構成でこの映画は語られてゆく。
 余生を娼婦と暮らそうとしている父と、ドイツで独り暮らす真面目な大学講師の息子。それから、娼婦の母と、トルコで反政府活動家をしている娘。また、ふとしたことからトルコで反政府活動家をしている娘と友人となり、その娘を救うためにイスタンブールへと向かう娘と、娘の身を案じる彼女の年老いた母。
 ドイツとトルコを舞台にしながら、交錯する3組別々の親子の人生の軌跡を丹念に描いてゆく・・・。

 3組の物語は繋がっているようでありながら、それぞれが別々な物語としても進んでゆく。
 そして、何処かのある地点でそれは一瞬交わり、また別々の道を辿って行くのである。
 しかし、だからと言って、この映画は複雑な構成をしているわけではない。とても解りやすく、次の展開を早く知りたくなる。

 「愛より強く」は、激しくて力強い映画だった。
 この「そして、私たちは愛に帰る」には、そこまでの強さや情念はない。そのかわり正反対の、静かな悲しみと、静謐な質感が全編を覆っている。

 映画は、紆余曲折を経ながら、最後には美しいエンディングを迎える。
 ストーリー自体は、三つの物語が絡み合いながら進んでゆくので、波乱に満ちていると言えなくもないけれど、別にその展開そのものがこの映画の売りではない。

 すべてが収斂する。あらゆる苦悩が最後に解かれてゆく。
 大団円というわけではない。ここにストーリーを書けないのが歯がゆいけれど、ネタバレになるので御勘弁願いたい。

 ラストは万感胸に迫る。
 最後のシーンは余韻が残っていて、とても美しい。
 いい映画だと思う。




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