おかんのネタ帳

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その街の子ども

2015-01-24 23:06:36 | 舞台・映画・ドラマ
京都の旧立誠小学校にある、立誠シネマに行ったのは、
「その街の子ども」劇場版を見にいったんですね。

5年前に放映された、NHK制作のドラマの劇場版ですけど、
当時も見たし、先日も放映されたので見ました。



15年目の2010年、明日が1月17日、という日に、新神戸駅で、
森山未來くん演じる勇治と、佐藤江梨子さん演じる美夏が、
偶然知り合ったところから始まります。

美夏は、東京から東遊園地でその時を迎えようと神戸に来ました。
勇治は仕事で広島へ向かう途中、思い立って新神戸で降ります。

新幹線の中で、「次は新神戸」というアナウンス。
足の長いモデルのような美夏がドアの方に。
車窓から神戸の街を、ぼんやりと眺める勇治、
車内の電光掲示板に、「阪神淡路大震災から15年・・・」
という文字が流れると、急に席を立って降りてしまうんです。

美夏が声をかけます。

「あのう、三宮って、ここから近いですか?
 歩いていけますか?」

「そうですね。ボクも行くんで一緒に行きますか?」

「・・・それって、ナンパですか!」

なんていうようなくだりがありつつ、結局、二人で歩きます。
お互い関西弁なのに、神戸の人間ではなく東京在住やってわかり、
一緒に、居酒屋でご飯を食べるという状況に・・・

当時、神戸に住んでいたというふたり。
ふたりには、抱え続けてきた震災の記憶があった・・・

東遊園地の追悼のつどいに出るという美夏。

「やっぱり、東遊園地に行かはるんですよね?」

「行きませんよ」

「ほな、なんで神戸に来はったんですか?」

「なんでって・・・観光・・」

「はぁ~?」

今まで行けなくて、今年こそは行こうと思った、
そうしないと、行けないと思う、そういう美夏。

「辛いんやったら、行かへんかったらええやないっすか」

「それでも、行かなあかんのです」

震災の話から、、焼き芋を一本2000円で売ってた焼き芋屋の車に、
石を投げた、なんてことをことを話す美夏。

「みんなが困っている時に、
 一人だけもうけようとしている奴は許せへんかった。」

勇治は父親が建築関係の「屋根や」をしていて、
修理代を10倍ぐらいふっかけてぼろ儲けしたことを話し、

「結局、頭が良いもんがうまくやっていく、別に悪うないですよ」

美夏が、むっとして、席を立つ・・・

結局、終電を逃して、
御影のおばあちゃん家に歩いていくという美夏に、
引っ張られるように、つきあうことになる勇治。

暗い神戸の街を、ふたりがただただ歩きながら話す、
そんなドラマやねんけど、二人の、あまりにナチュラルで、
あまりにリアルな会話に引き込まれます。

未來くんも、サトエリも、本当に震災の経験者であり、
脚本を書いた渡辺あやさん(「カーネーション」の脚本も)は、
学生時代を神戸で過ごした人やそうです。


当時中学生だった美夏は、幼なじみを亡くしてた。
何度も、その話をしかけては口ごもる。

勇治は、かつて住んでいた灘のあたりに来て、
当時小学生やった自分の悲しい記憶がよみがえる。

「あかんわ。このへん、ちょっと、きつい」

父親が値段をふっかけて修理した家がそこかしこにある、
同級生の家もある・・・父親のせいで孤立した思い出が・・

「確かに、材料はは無かったよ。
 でも、相場の、2倍か3倍ぐらいにしてたらえんのに、
 10倍なんてするから、神戸におれんようになって・・・
 オレの友だち関係を台無しにしあがって~」

美夏は、亡くした同級生の思い出がよみがえり、
ひとりぼっちになった父親にちゃんと挨拶できなかった、
そのことを悔やんでるという。

「おっちゃん、泣いてぼろぼろになってるから、
 会わんと東京に行ってしもてん」

御影のおばあちゃんの家に荷物を置いて、
再び、三宮を目指すふたり。

大きな公園の近くで、友だちの父親がいるという、
マンションの1室に電気が灯っているのを見つける。

「やっぱり、今夜は起きてはるんやなぁ。
 会うてきたらええやん」

勇治に言われて、会いに行く美夏。

震災の時、子どもだったふたり。
それぞれの記憶、思い、いろんなものが混じり合って、
15年目のその日を、神戸で迎えようとするふたり。

広島に行くという勇治は、建設会社勤務。
「ぜったいに安全です」と言うために、
始発の新幹線で周辺住民への説明会に行くという。

「こっちは商売なんで、上手くだませたらそれでええのんで」

「じゃぁ、なんでここにおるん?」

神戸にいた自分やからわかること、震災に遭ったからわかること、
建築設計をしてるものとして考えたかった・・・

「・・・そう思っているんちゃうの?」

ところどころ、関西人らしいボケとツッコミがあったり、
ふふって笑えるような会話もあって、よけいリアルな二人やった。

「間に合わへん~」

まだ暗い早朝の道を走っていくふたり。
印象的なシーンです。

東遊園地の、ほんまの追悼のつどいをロケにつかってます。
ちょうど、ラストにくるように撮影されたんですね。

「一緒に行かへん?」

「・・・う~ん・・・やっぱり、やめとく、今年は。
 また、来年」

信号のところで、握手しようとして、
勇治を抱きしめる美夏。


本当に翌年、そこへ行ってるんかな、勇治。
ふたりは、再会するんかな・・・
そんなことを思ってしまうラストでした。

泣けるところはあったけど、
でも、なんかさわやかな気持ちにもなった。

神戸の住人ではないし、被災した人の辛さや悲しさは、
想像できても、ちゃんとわかってないかも知れない私です。

でも、勇治や美夏の気持ちに、
寄り添えるような気はするんですよね。

演出は、「ちりとてちん」や「あまちゃん」を演出し、
当時、NHK大阪放送局にいた、井上剛さん。

夜の神戸で、終始暗い画面のドラマでいいのか、
不安だったとか言うてはりました。
放映後の反響が、これほどあるとは思わなかったそうです。
NHKが、映像を足して劇場版を制作というのも、
異例のことらしいです。

それだけ、見た人の心に残る作品でした。




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