蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

鬼灯を遠くに投げよの後半です

2008年10月19日 | 小説

前半は一昨日にブログしました。

母と娘、幼い子(弟)が死んだ。鬼灯を夕焼けに向かって投げれば
その子は再生すると娘が母に迫る。遠くに投げてと…

 3
娘が続ける
お母さん、私はいまでも思い出します
去年の秋のこの時この場所
弟いれてあたし達三人
忘れはしない人気ない河原
あの時赤い鬼灯摘みました
その赤が夕焼けに染まり
目の前の空が突然に赤く染めかわり
弟はアカボーと泣きました
そのあと十日二十日たって
弟は
遠くに旅立ついまわの時に
唇青く頬青白く手先が震え
励ましの一言を聞き取れず
眼だけが赤く腫れていた。
あの赤い空の先には弟がいる
投げられた鬼灯が向かうのは
 一人眠りについている私の弟
 あなたに投げられた鬼灯を唇で捉え
 きっと頬が赤く染まり蘇るでしょう

 いつの日か再会を果たすその時に私は弟を見分けられるだろうか。一年と十日も経った今だって横顔を忘れてしまった。
鬼灯色の再会を待ち唇の赤さ頬の赤さで見分けつけよう。

この世で生きる私たちは死者への思いを祈りにこめて、再会の瞬間を生きる間待ち続け、鬼灯をあの青く赤く染まった西の空に投げよう。

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