蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

親族の基本構造ムルンギンの親族体系 8最終

2021年06月07日 | 小説
(2021年6月7日)ムルンギンの最終回、まとめとなります。



スライド1は交換の体系です。赤と青の水平実線は男系半族を越えての女(嫁)の交換です。Ngarit、a1はBalang、]b1とのみ女を交換する。特定サブセクション間での交換なので、限定交換。弧の破線は子の交換です。Ngarit,a1は子をBangardi,d2に渡す、こうした流れが破線で表されている。交換には方向性があり一般化となります。さらに子の流れは半族の境界を越さないから、子(男子)を半族に引き残す目的があります。

スライド2は親族形態を基盤にした族民社会の構成です。


3は個がどこに帰属するか。サブセクション、階層(クラス)、半族に帰属し(おそらく)その帰属心を持つ(と推測する)。これは男も女も同じ。


4はこの複雑系交換が部族社会に与える影響を類推した。交換の起点であるサブセクションは常に不等価交換を実行するが、階層内でかつ半族内にも不均衡状況を内包する緊張を強いられている。レヴィストロースはそれをexigences強制とする。緊張、強制とは娘を贈らなければ子(次世代)は得られない。子を手渡さなければ嫁は貰えない。


最後のスライドは本書「親族の基本構造」の原点となる親族+交換をまとめた図です(既出)。ご参考に。


親族の基本構造ムルンギンの親族体系 8の了(最終回)(2021年6月7日)

追記:今回の投稿1~8で解説した親族構造ムルンギンの基本は女交換を「限定」に、子のそれを「一般化」としています。レヴィストロースは女交換に一般化の原理をも導入しています。それはa1とb1の嫁の交換のみならず、a1がb2と交換する「規格外」交換に注目しました。報告者WarnerらはこれをOptionとして、重要視しなかった。レヴィストロースは用語をそのままに用いるも、制度に取り入れて嫁交換での限定+一般化、いわばハイブリッド型を(理念上)構築しました。時間を置いてレヴィストロースが真に目論むムルンギン族の親族構造を紹介します。

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