蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

レヴィストロースを読む 神話と音楽 第二楽章良き作法のソナタ5

2017年11月07日 | 小説
(11月7日)

写真説明:獲物はオオハシ4羽、自慢げにぶら下げている。(ナンビクワラ族、同氏の著作から)


前回(11月3日)の写真は本書le cru et le cuitの104頁の表をデジカメ化した。その結論たる105頁初段の別表を手書きにして掲載する(下)。下図を参照してください。M16,20,21は「野生豚の起源」「文化財」起源を語る神話で、互いの符号、符号展開(code,codage)の近似から一つの神話群としてまとまる。codeが”acoustique”=音です。
上引用の訳;operationsは104頁で展開したelements(自然の資源、血族姻族の離反、嫁の贈り手受け手など)をその思想であるproprietes(特質)に変換させた作業。その全体を俯瞰すると音声コードを浮き上がった。


<Puisque la transformation des hommes en cochons dans M21 resulte---al’inverse de ce qui se passé dans M16---d’une disjunction d’epoux qui se heurtent, et non de keur union charnelle>(105頁)
訳;人が豚に変身する過程はM16とM21では真逆である、(しかし音を介している)。注:M16では俗神が「汝等の肉を喰らえ」と呪いをかけたら、野豚が「交尾の唸り」をあげるかに姻族員が辺りにも人、性にも構わず交合に狂いだした。M21では食事にカラシを盛られた夫が「唸り」野豚に変身した。

次頁でレヴィストロースは意味深い質問を提起します。
<ils sont partiellement ISOMORPHES (大文字は投稿子) et supplementaires puisqu’ils posent le problem de l’allience matrimoniales ; et, partiellement aussi, ils sont HETEROMORPHES (同) et complementaires, puisque de l’allience matrimonial, chacun ne reticent qu’un aspect>(106頁)
訳;それら(第一神話群「鳥の巣あらし」とそれに対する「野豚の起源」神話群)は部分的にISOMORPHESで補充的である。なぜなら母系社会の同盟での(特定されている)問題を等しく提起しているからである。その上、部分的にHETEROMORPHESで補完的である。なぜならその同盟から、それぞれはある一つの様相しか引き止めないからである。
「これ分かるかな」レヴィストロースの声が聞こえてきそうだ。

これまで遭遇した事のない言葉、isomorpheの意味を調べると「化学用語;異質同像」とある(白水社大辞典)よく分からないからrobertを開く<propriete que posedent deax ou plisieurs corps de constitution chimique analogue d’avoir des formes cristallines voisines> 類似した(analogue)組成を持つ複数の物体の結晶の像が近似(voisine)する事とある。analogueは「一部が類似する」との意味が強い、voisinは「全体として近似する」のでanalogueよりは同質に近いと言える。しかし「同質」までには行かない。よって「何となく似通う物体が結晶化するとかなり近似する像を見せる」が正しいだろうが、長すぎる。その意を含んでの「異質同像」と理解する。
HETEROMORPHESはその逆として「同質異形」と訳す。この訳にも「近似する2の物質は異なるけれど似通う像を見せる」の含意を持たせるとしよう。
そして鳥の巣あらし、野豚の起源の神話群に共通するのはあの問題(le problem)だそうだ。それは母系社会の同盟に端を発すると。

M1(基準神話、ボロロ族鳥の巣あらし)を思い出そう、主題は母系同盟の「連続」の固執である。成人の通過儀礼を迎える子がヒーロー。この儀礼とは母系からの分断である。分断を拒否して(母子の相姦)、父と母の同盟を破断させた。子との相姦と広い意味での兄弟(同じ部に属する男子)との相姦もM2以降に語られている。これらは母系の連続を希求する行動である。母系の連続が自然、放任、放縦につながるとは(前の投稿で)述べた。
別の様相を見せる問題がある。それは姻族関係の破局である。レヴィストロースの言葉で(嫁の贈り手受け手)<des liens avec des etre do’t la nature lui parait irreductible a la sienne>贈り手は自身の立場と妥協できないほどに対立する側(受け手)との同盟を結ばなければならない。
妥協できず対立してしまった例とはM16以下の神話である。
ヒーロー俗神の行動を見よう。
サルカルイベが子を連れて姻族(姉妹を嫁がせた受け手)近くに居を構え、ウズラ一羽と野豚一匹の交換を要求する。社会慣習に沿った理のある行動。姉妹は「夫が狩った」野豚ではあるが不等価故に拒否する。サルカルイベは呪いをかけて姻族全員を豚に変えた。この贈り手受け手の行動には、母系社会の連続を優先するか、姻族との同盟を優先するのかの相克と、結局は前者をとるとの意識が働く。これが問題、豚の起源である。
一つの問題le problemeではあるが、母系内部の問題と姻族同盟の否定という2の様相が見えた。
ではその結果としての崩壊に目を向けよう。
鳥の巣あらしではヒーローの彷徨、部族の破滅(ヒーローが霊に化けて父母を殺す)。最終には「不連続の社会の創造」となる。これが骨格(armature)でschemeは自然から文化への移行である。
一方、野豚の起源では非礼な行動をあからさまにした姻族側が豚と果てる。人間が動物に、それは社会から自然への逆転である。
異質とする処とはその発端が(母系内部の放縦性=対=姻族同盟を要求する俗神)に分かれている点である。そして同形の結晶体とは(連続性を否定し常に分断を意識するschemeスキームである)これが異質同形。
では同質異形をなんと説明するのか?

神話と音楽第二楽章良き作法のソナタ5の了

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