蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

レヴィストロース「食事作法の起源」を読む(続き) 1

2019年01月07日 | 小説
(2019年1月7日)
平成31年西暦2019年の新年を迎えるに、本ブログ・部族民通信に来訪いただく皆様のご健康を心より祈念いたします。
昨年10月22日から始めて11月16日に終了した第一部(レヴィストロース神話学第3巻「食事作法の起源」を読む)全10回では基準神話(M354狩人モンマネキの妻問い譚)の紹介とその意味するところを、投稿子なりの解釈で展開しました。基準とその派生となるいくつかの神話の大成として、レヴィストロース自身が社会、天文、地理などのコード進行に分解して表としてとりまとめています(同書137頁)。
この表に経時進行の概念(=dialectique性)を加味して「モンマネキ神話の周期性パラダイム」なる図を作成しました(2018年11月12日投稿)。神話が伝える周期性の意味合いとはHumanite人間社会の形成と維持であります。旧約聖書モーゼの十戒ならぬモンマネキ老母の預言でした。
ここまでは本書の前半。訳本「食卓作法*の期限」(みすず書房渡辺公三など訳)を借りると;
序 第1部 バラバラにされた女の謎 I 犯罪の現場で II つきまとう半身 第2部 神話から小説へI 季節と日々 II 日々の営み 第3部 カヌーに乗った月と太陽の旅 I 異国的な愛 II 天体の運行 までとなります。それらの舞台は主として南米、アマゾン上流のTukuna族、下流のWarrau族などからの引用が多い。

本投稿から「続き」を連載するのですが、対象は
第4部 お手本のような少女たち I お嬢様であるとき II ヤマアラシの教え
第5部 オオカミのようにがつがつと I 困難な選択II マンダン風臓物料理
第6部 均衡 I 一〇個組 II 三つの服飾品 となります。
(第7部 生きる知恵の規則I 傷つきやすい渡し守 II 料理民族学小論はとばし)
神話学1~3巻の結語とも思える III 神話のモラル (原題はLa morale des mythes=あらゆる神話の共通する精神性=と訳したい)を最後に取り上げます。
そして;
対象は北米先住民**です。
図1(168頁)に主たる先住民とかつての居住域が表されています。
図の右下から左に上がる曲線がアメリカ西部を潤すミズーリ川です。民族名Blackfoot, GrosVentre, Cheyenne, Hidatsa, Mandan, Arapahoなどが本書引用の神話群を伝承していた部族、いずれもロッキー山脈の東側に位置します。
図2(190頁)で北米大陸全体での部族配置が明瞭に見えとれます。
図3はネットから拝借しました。
ロッキー、プレーンズ、プレーリーの位置関係が分かります。地誌をひもとくとロッキーが岩山なのは字義とおり。プレーンズとは乾燥、タケの低い草の繁茂。プレーリーとはより湿潤、草タケは高いが区別する基準。プレーンズは大平原、プレーリーは大草原と覚えればよろしいらしい。両者を分かつは西経100度ラインだそうです。図2と重ねるとGrosVentreやHodatsaなど部族がプレーンズ、プレーリーに棲み分けしている様が読めます。
なお投稿子は大平原と大草原の区別がつきませんので「両地域ともに森林、高木は育たない」と勝手解釈しました。
図4(220頁)は神話で活躍するヤマアラシ(Porc-epique)の分布図です。この齧歯類は木登りが得意で住みかは大木上方の木穴。神話の担い手の部族は大平原、大草原で森林まばら域に住むから、この分布で判断する限り、ヤマアラシを普段見かける事がない。しかし神話の筋回しでは重要な仲介役として登場する。
これも本書のテーマの一つとなります。

レヴィストロース「食事作法の起源」を読む(続き) 1の了
(次回投稿は10日)

*みすず訳書ではmanieres de tableを直訳して「食卓作法」としている。投稿子はフランス語のtableには空間としての食卓のみの意義を超え、食材の選択、調理方の基準、食べ方の儀礼を含む「思想」としての料理作法が現れると思う。モンマネキ神話では上記作法を遵守せよとの老母の言辞が伝わる。
tableとは「そこで食べる料理」の換喩(metonymie =辞典LeGrandRobertより)です。日本語の「食卓」は物質、空間の意が強く換喩の機能はありません。食事作法を訳としている理由です。

**北米先住民、投稿子は西部劇、インディアンを思い起こしてしまう。駅馬車、コマンチェロ(映画の題名)などで組織作りにたけ勇ましく、時には残酷な彼らの振る舞いとBororo族的世界創造の「神話」が結びつかなかった。いざ読み始めたら世界観、精神性に感銘を受けるまで彼らに心酔した。個人的感情でした。

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