ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、元国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

けっこう手ごたえがあったドン小西との対談(その3)

2011年12月04日 | 地域イノベーション

 さて、ドン小西との対談も、いよいよ佳境に入ってきました。

 前回までに、ドンと私との対談の中で、「地域固有の”粋”を磨け」「淘汰される前に変身⇒国際展開⇒進化せよ!」というメッセージを投げかけました。この次は、司会者の誘導で、教育についての対談へ。掛け声だけでは、物事は変わりませんからね。遠回りであっても、教育から変えていかないと変わりません。

 ドン小西も名古屋学芸大学の講師をし、教育については非常に熱心ですし、また、私ももちろん教育者としてずっとやってきたわけですから、教育について語らないわけにはいきません。

 今回の東日本大震災で、ドンは被災地に出向き、学校の生徒に授業を受け持ったとのことです。彼が被災地の生徒たちに伝えたかったことは、「無から有を創る」こと。被災により、何もかも無くなったと嘆くだけでなく、何もない状態からどうしたら食べていけるのか、他人から支援を得るにしても、どのように訴えたら支援が得られるのか、彼自身が無から有を創ってきた人間なので、ゼロから生きる方法を子供たちに伝えたかったとのこと。ドンは、そのために、学生たちとけっこう緊張感のある授業をしたということです。

 そして、三重大学と関連して、彼が東京の桜美林大学の学生と三重大の学生のコラボで、三重の観光を現場で実際に体験して観光学を学習するプランを提案しました。これは、非常に具体的な提案ですね。やはり、理念的な掛け声だけではなく、具体的な改善策を提案して初めて、この種の講演会や学会の意義があるのだと思います。


 この桜美林大学と三重大の学生の交流プランは、まだ、案の段階ですが、うまくいけば来年早々にも実現するかもしれません。

 さて、次は例によってDr. Toyodaによる”翻訳”ですね。


 私はドンがやろうとしている教育を、「相互啓発教育による、マネジメント、イノベーション、および創業精神に富む人材の育成」(Mutually Inspiring Education of Management, Innovation & Entrepreneurship)と”翻訳”させていただきました。「無から有を創る教育」の方が、一言で本質を言い表していて、わかりやすいかもしれませんけどね・・・。

 実は、相互啓発教育による Management, Innovation & Entrepreneurshipの涵養は、まさに、私が学長の時に今回の地域イノベーション学会の会長である西村訓弘先生といっしょに創った大学院「地域イノベーション学研究科」の理念なんです。この大学院は、大学と地域との間の相互啓発教育によって、このMIE3つのを涵養することを目指しています。地域企業のやる気のある幹部が多数入学し、大学の先生方と学生(地域企業の幹部を含む)、あるいは学生間でお互いに啓発しあえる、今までにない交流の”場”が形成されつつあると感じています。

 私は、このようなManagement, Innovation & Entrepreneurshipの3つを相互に啓発することのできる教育の場を、小中学校や高校、あるいは学部教育、生涯教育へ、あるいは地域教育や産学官民連携の場へ、ドンドン広げていくべきであると思っています。

 そして、このMIE教育を三重県全体へ、そして日本全体へ広げていくことが、今回創設された「地域イノベーション学会」の目的ということになると思います。


 ドンが今回何度も繰り返した言葉は「僕は言ったことは必ず実行する人間です。」とうこと。私も、最後に、何事も実行して初めて意味があり、この学会は、掛け声だけではなく、実行する学会にしようではないか、ということを申し上げました。

対談の締めは、司会者による対談のまとめ。「三つのMIEで三重を世界に売り込め!」ということを、二人のメッセージとして伝えていただきました。ブログの読者の皆さんも、もうお気づきになっておられると思いますが、対談でお伝えしたかった3つのテーマを私が”翻訳”した頭文字が、すべてMIEになっていますね。これはドン小西流の美学である”粋”にならった、Dr. Toyoda流の”粋”のつもりなんです。

 

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けっこう手ごたえがあったドン小西との対談(その2)

2011年12月04日 | 地域イノベーション

第一回地域イノベーション学会でのドン小西と私の対談のつづきです。

前回ではドン小西の美学である「粋」(いき)について、私の学会向けの”翻訳”としては、「地域固有の”粋”を磨け」(Make sharp Intrinsic Excellency)としたことをお話しましたね。

次は司会者の誘導で、三重県人をもっと積極的な県民に変えるにはどうすればいいのかという話の流れから、ドン小西の激動の人生の話へ。

彼の著書「逆境が男の”器”を磨く」のスライドを投影しつつ、ドンに激動の人生を自由にしゃべってもらいました。

ドンは、理工系の大学からファッション系の専門学校へ。いったんはアパレル・メーカーに就職するが、31歳の若さで独立し、フィッチェ・ウオーモというブランドを創る。余った布切れをつぎはぎして創ったファッションが受け、一躍ファッション界の寵児へ。そして、ニューヨーク、ロンドンという世界のファッションの中心へ、ドンドンと海外展開(下のスライドの赤字の部分)をしていく。

一時は高級外車を6台も乗り回し羽振りの頂点へ。しかし、気が付いたら大きな借金を抱えて、事業は挫折。

その困難の中で、あるテレビ局の番組での辛口ファッションチェックが受けて「ドン小西」が誕生する。そして、借金を返して、現在、教育活動や公的活動を含めて第二の挑戦をつづけている。

さて、引き続いて、Dr. Toyodaによる地域イノベーション学会向けの”翻訳”ですね。

彼の人生の中で、私は、まず彼の"Metamorphosis"に着目しました。Metamorphosisは生物学的に短期間に自らの形を大きく変えるという意味で、日本語では"変態"と訳されます。昆虫の幼虫⇒さなぎ⇒成虫への変化や、オタマジャクシがカエルに変わる変化などを指します。でも、日本語の”変態”には、このような学問的な意味以外にabnormalという意味でも使われているので、私は”変身”と訳すことにしました。


上の写真の左端は、三重大学付属中学校の時の卒業アルバムを私の家の隅から探し出してきて、自分で撮ったものなんですよ。この写真を見ていただければ、Metamorphosisがイメージできますよね。


彼の人生を私になりに整理をしてみると、まずMetamorphosis(変身)がなされ、International enterprise(国際展開)がなされ、困難に出会った時には、先ほどのMetamorphosisとともに、Evolution(進化)することにより乗り切って、さらにEvolution(進化)し続けている。

Don Konishiによる鳩山元首相に対する辛口ファッショチェックは、世界的なメディアであるCNNによって”Japan’s prime minister under fire for fashion choices"(ファッションの選択で砲火を浴びる日本の首相)という見出して、世界に紹介されました。最初の国際事業展開に挫折したドン小西ですが、次には辛口ファッションチェックの技に徹することで、再度世界から注目されるようになったということですね。

今、日本の、そして世界の経済状況に閉塞感が漂い、TPP参加問題をはじめとして、さらなる自由化、国際化の流れの中で、日本に何を選択するかが迫られています。

このような状況で、日本人が旧来の制度を保守し、日本の中に閉じこもっていても、淘汰されるだけではないのでしょうか?ドン小西の人生は、たとえリスクを伴っても、淘汰される前に変身⇒国際展開⇒進化するべきであるということを教えてくれています。(Metamorphosis, International Enterprise & Evoluton)

”コラボ産学官”という信金が中心になっている産学官民金連携組織があるのですが、私はその顧問をやっています。昨年、青森支部にお邪魔した時に、メンバーの零細企業の方々が、研究会の後の2次会で本音のトークをして、異業種のビジネスマッチングが積極的に行われているとお聞きし、その2次会とやらに陪席させていただきました。ちょうど私の隣に座った方に、何をやっておられるのか聞いたところ、10数個の農家を束ねて農業生産法人をつくり、ブドウを栽培して、海外に輸出しているという。そして、他の醸造技術を持っている零細企業とコラボして、今度はブドウのビールを創ろうとしている、とのことでした。

果たして、ブドウのビールが成功するかどうかはわかりませんが、この事例などは、まさに、農業生産法人という生産形態の変身⇒ブドウ事業の国際展開⇒ブドウビールという新製品の開発という進化、を地でいっていますね。

そういえば、国立大学も2004年に”法人化”という経営形態の変身がありました。三重大学も”地域に根ざし、世界に誇れる独自性”というミッションを掲げて、様々な改革を行い、現在私の後任の内田学長のもとで、更に進化中です。

どのように三重大学が変わったのかということは、私のブログ本「ある地方大学のつぼやき」に書かれていますよ。(申し訳ありませんが、このブログ本は、現時点では市販されておらず、希望される方に個人的に差し上げています。)

次回につづく。




 

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