レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

ハイヤンとアイスランドの人々

2013-11-21 05:00:00 | 日記
二週間ほど前にフィリピンのレイテ島を始めとする六つの島を直撃した台風30号ハイヤンは甚大な被害をもたらしてしまいました。亡くなった方3.700人以上、行方不明者1.200人、住居を失った人が200万-300万人と聞いています。

被災者の方々には衷心よりお見舞い申し上げます。また復旧作業に携わっている皆さんにはねぎらいと支えのありますよう。

さて小国アイスランドには約2.500人のフィリピン人が住んでいるということです。そのうち1.500人ほどは既にアイスランドの市民権を得ており、1.000人がフィリピン人として生活しているとか。

移民の第二世代は統計に現れにくいのですが、そういう二世、三世を含めればおそらくフィリピンにルーツを持つ人はさらに多くいることでしょう。

そういうフィリピン出身の人の中にカクちゃん(仮名)という若い女性がいます。彼女はフィリピン出身なのですが、日本に移って長く暮らしていました。ですから日本語は完璧。母国語のタガログ語の方が苦労する、と笑っています。

ハイヤンの被害の様子が明らかになってくるにつれ在住フィリピン人の間にもショックが拡がっていきました。日本の東北大震災の時は時を移さず津波の様子などがこちらのニュースでもずっと流されたので、時間差無く私たちはショックを受けたのですが、ハイヤンの場合は少し時差が生じてしまいました。

カクちゃんはいの一番に「何かしなくちゃ」と考えたうちのひとりでした。皮肉なことですが二年前にはカクちゃんは「日本人」として震災復興支援の活動を私たちと一緒にしたので、経験を積んでいたわけです。

土曜日の夜半から被害の状況が伝わり始めたとして、日曜日には赤十字とUNICEFが特定支援募金を始めました。カクちゃんたちは他のフィリピンの人たちと会合をしながら企業や他のアソシエーションと連絡を取り、17日の日曜日にチャリティランチを開くことにしました。

月曜日にはポスターが印刷されて上がり、同じくチケットも印刷されました。会場には市内の新築されたばかりのガラス張り高層ビルの一階にあるしゃれたレストランが決まっていました。もちろん会場提供も支援のうち。

チケットは一枚2.000クローネでしたが、用意した400枚はすぐに完売。食材はあちこちのスーパーや食品会社からの支援。紙皿やプラスチックのフォーク等も寄付されてきました。実費なしでチケット代はそのまま支援金となるようなチャリティとしては理想的な環境です。

ポスターを作る段階で慌てていたカクちゃんは連絡先に職場のメイルアドレスを使ってしまいました。日本でなら始末書ものでしょうが、カクちゃんの勤め先は全然構わない、終わるまでオフィスの電話も時間も使っていい、と言ってくれたそうです。もっともメイルアドレスは会社の良い宣伝にもなったと思いますが。

ランチイベントの前日にカクちゃんと話したのですが「やっぱり大変。寝る時間がない。ひっきりなしに電話やメイルで問い合わせが来る。答えなきゃ悪いし、こちらにいるフィリピン人の七割が被災地の出身なので、家族にまだ連絡が取れていない人も大勢いる。電話先で泣いてる人もいるしどうしていいかわからない」と相当しんどい様子でした。

そして当日は...私は他の邦人の方数人と一緒に出かけたのですが、開場30分後には法定の定員を超してしまい会場を一時閉めなければいけないか、というくらいに人が来てくれました。

予想を上回る人手となってくれたので追加の料理を作らなければならなかったようですが、50人のボランティアがフル回転で働いたのでしのげそうです。

加えて、すみやかにレストランの裏側に続くスペースを開けてくれ、さらに隣接するカフェなどにも人が入ることを許してもらえたため、会場は閉めないで済みました。

こういうところが私はアイスランドの好きな点のひとつです。レストランの会場提供やカクちゃんの職場の好意ある態度もそうなのですが、融通が利くというか、皆が何がそこで起っているのか承知してくれていてそれを良しとしてくれるおおらかさがあると思います。

チャリティランチは成功裏(こういう機会にふさわしい言葉ではないかもしれませんが)に終わりました。このイベントだけで35万クローネが集められたそうです。

チャリティランチについてのモルグンブラーズ紙ネット版


ハイヤンの被害の大きさに照らしていえばこのチャリティランチは星の数ほど支援活動の中のひとつに過ぎないでしょう。復興にはまだまだ時間も巨額な資金も必要とされるでしょう。

にもかかわらず、それはそれ。星の数ほどある支援活動のひとつとして、それを企画し運営する真摯なボランティアの人たちの献身なしに実現することはありません。世界中で行われている「星の数ほど」の支援活動のひとつひとつに「カクちゃん」が献身しているに違いありません。

カクちゃん、お疲れ様。立派な働きをありがとうございました。

被災者への慰めと支え、被災地の一早い復興を祈ります。


応援します、若い力。Meet Iceland


藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com



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