レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

モハメド·アリと奈良の大仏様

2016-06-12 05:00:00 | 日記
モハメド·アリが先日亡くなりました。まだ七十四歳の若さでした。アリがパーキンソウン病と戦っていたことは、よく知られていますが、それにしても若すぎた気がします。

今回はアリの追悼です。なぜかというと私はアリの大ファンだったからです。

もとより私はボクシングのファンで、小学生の頃からボクシングは興味の対象でした。野球も好きでしたし、中学生以降は大のサッカー小僧になりましたが、それでもボクシングは特別な存在でした。

空手やその他の武道はまったく興味がありません。「ボクシング=名誉ある男の勝負」というイメージが幼い頃から出来上がっていた気がします。「性差別」とヒンシュクを買うかもしれませんが、女性のボクシングは嫌いです。女性が顔を叩き合うのが何で面白いでしょうか?

私がまだ小学校の高学年だった頃、アリが徴兵拒否のため三年間遠ざけられていたリングに戻ってきました。その試合は夜のテレビで放映されました。アリが王座を剥奪された頃の記憶はさすがになかったですし、子供心に「ボクシングよりも他のことで話題になってる」と気に入らない気持ちを持っていました。

1972年の四月、札幌オリンピックの後ですが、そのアリが東京へ来てエキシビションマッチをマック·フォスターと持ちました。いろいろテレビとかにも出演していた気もしますが、覚えていません。覚えているのはスポーツニッポンにアリの追っかけの写真が出ていたことです。

ロードワークの後で、都内のどこかの石段に腰掛けて沈思黙考しているアリの写真があったのですが、その写真はすごく心に響きました。いつものアジっているアリではなく、ものすごく穏やかなアリだったからです。「平安」というものを人の顔に表したらこんな顔になるのではないか、と感じました。

仏教徒の人に失礼にならなければいいのですが、その時「奈良の大仏様に似ている」と思ったのです。そしてそれからだんだんとアリびいきになっていきました。

その時のマック·フォスターとの試合は凡戦でアリの判定勝ちでした。試合後のインタビューでアリが「本当に一生懸命やったが倒せなかった」と言っていたのも覚えています。試合前のハッタリとは大違いだったからです。

その二年後、あの「キンシャサの奇跡」が起こりました。世界王者アリのカムバックです。その時はすでに相当なアリファンになっていましたので、フォアマンがゆらゆらとマットに沈んだ瞬間は「人生で最高に嬉しかった時」のひとつに数えていいと思います。

今の若い世代の皆さんには信じ難いかもしれませんが、私の子供時代には、まだテレビでも映画でも「主人公は白人、相棒は黒人」が定番でした。戦争ものの映画とかはすべて第二次大戦ものでしたからね、最近とは違います。

そういう環境の中での「刷り込み」はやはり恐ろしいもので、私は別に黒人をバカにしているとかそんな気持ちはまったくなかったのですが、事実として憧れる俳優や女優はすべて白人でした。まあ、日本の人は別にして。

そういう「刷り込まれた偏見」をぶち壊してくれたのがアリです。アリには本当に憧れましたし、本当に私のヒーローでした。




1984年、ドイツでアイスランドのサッカー選手アトリ·エズヴァルドスソンとふざけるアリ
Myndin er ur Visir/enskasafni


キンシャサの奇跡の後、すぐだったかしばらくしてからか覚えていませんが、日本版のPlayBoy(多分今はもうない?)に、かなり長いアリのインタビューが載っていました。

ちなみに日本版のPlayBoyですからね、マイルドでしたよ、中身も。私はフツーの高校生の男の子でしたからね、そういう雑誌もよく目を通しました、もちろん。(^-^;

とても良い?インタビューで、はっきり言ってインタビュアーはほとんど喋らず、アリがひとりで喋りまくるパターンだったのですが、内容は濃かったです。少なくとも私の心には訴えるものがありました。

最後の方でのアリの言葉を今も覚えています。インタビュアーの「悔いに残ることは?」という質問に「ない」と答えたアリが付け加えました。

「いや、あるかな、ひとつだけ。前にジョー·バグナーと試合をした時、もちろん俺が勝ったんだが、控え室に戻った時、リングサイドでバグナーの十歳くらいの息子が観戦していたことを知った。

それぐらいの歳の男の子ならみんなそうだから、その子も父親を崇拝していたに違いないと俺は思った。で、バグナーの控え室へ行き、その子に言ったんだ。

『見ていたように俺はお父さんに勝った。だが君のお父さんは臆病者でも弱虫でもない。君のお父さんは偉大な男の人だよ』」
 
インタビュアー:「アリ、僕はあなたがだんだん好きになってきましたよ」
アリ:「口を挟まずにおとなしく聞いていたら、とっくにそうなってたさ」

モハメド·アリ。私のヒーローです。アリの魂に平安と祝福がありますことを。


応援します、若い力。Meet Iceland



藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
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コメント (5)
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