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一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『キング・コング』、観ました。

2005-12-18 19:45:38 | 映画(か行)

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 『キング・コング』、映画館で観ました。
時は1930年代、野心的で無謀な映画監督カールは、史上最大の冒険映画を世に
送り出すため、最も危険な航海に出る決意をする。疑うことを知らない誠実な
脚本家ジャックと、ひとりの女優アンと従えて…。荒れ狂う波、照りつける太陽。
やがて運命は彼らを幻の孤島「髑髏島」へと導いていく‥‥。
 思うに、ピーター・ジャクソンは『王の帰還』ではなく、この『キング・
コング』で“オスカー監督”になるべきだったのではなかろうか。映画序盤は、
華やかなNYの街並みと、その裏側で息を潜めて僅かなチャンスを待っている
“貧しき者の人間ドラマ”が展開する。一転、中盤では、これでもかこれでもかと
スリリングで押しまくる“アドベンチャー活劇の面白さ”。そして、最後には
胸引き裂くような“痛切なるエンディング”が待ち受ける。ぶっちゃけ、
映像自体は、オールCGだと思えば、別段驚くことはないのだけどね。今作が
『ロード~』3部作と圧倒的に違うのは、単純な“善悪の対決”だけに終わらせず、
コングの内なる部分で…、その哀しみや愛の深さにスポットを当てて描かれて
いる点だ。コングに動きを持たせ、実像化するのは、きっとCGクリエイターの
仕事だろう。しかし、そこに命を与え、感情を持たせるのは、まさに監督である
ピーター・ジャクソンにおいて他ならない。実際、オイラはこのCGで作られた
コングに、これまでにはない“感情移入”をしてしまった。まったくもって、
今作だけは自分が自分で信じられなかったよ。
 さてさて、とどのつまりを言えば、「コング」は“ゴリラ”。人より3本
毛が少ない「エテ公」だ(笑)。しかし、ボクがこの映画を観て感じたことは、
人間と猿、果たして本当に“野蛮”なのは、どちらなのかってこと。果たして
本当に“凶暴”なのは、どちらなのかってこと。映画を観れば、現代人が
足を踏み入れた途端に、未開の地は“ビジネスの対象”へと変わっていく。
そこで殺戮は繰り返され、コングもまた“人間のエゴ”のために利用され、
ついには力尽きて死んでいく‥‥。一方で、コングは、その最期になって、
何を思ったのか?、ヒロインを連れ、高層ビルのてっぺんに登っていく。
ボクは思うんだ。単にそれは逃げ場が無くなったからではなく、もう一度、
あの美しい‥‥太陽が水平線を赤く染める景色を、愛する女性と2人きりで
見たかったからなのだと‥‥(涙)。結局のところ、コングの怒りは“人間の
身勝手さ”に…、コングの愛は“ヒロインの優しさ”へと向けられていた。
そういう意味では、エゴにまみれ、薄汚れた我ら人間よりも、キングコングは
遥かにずっと“愛の美しさ”を知っていたのかもしれないね。

 



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