肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『フィクサー』、観ました。

2009-01-24 19:31:16 | 映画(は行)
フィクサー [DVD]

東宝

このアイテムの詳細を見る
監督:トニー・ギルロイ
出演:ジョージ・クルーニー , シドニー・ポラック , トム・ウィルキンソン , ティルダ・スウィントン

 『フィクサー』、観ました。
NY大手弁護士事務所に勤めるマイケル・クレイトンの専門は不始末をもみ消す事。
そんな仕事に嫌気が差していた時、大規模集団訴訟を担当中の同僚弁護士
アーサー・イーデンスが、依頼人の農薬会社U・ノース社を裏切る行動に出る。
マイケルは事態の収拾に乗り出すが、アーサーは訴訟を覆す恐るべき秘密を
握っていた。一方、U・ノース社の法務部本部長カレン・クラウダーは追い詰められ
非情な手段に出るのだった…。
 ダンディズムとセクシーさ“だけ”を売りとしてたのは今や昔――、いつも間にか
“社会派”のイメージが板に付いてきましたな、ジョージ・クルーニー。最近は
すっかりオスカーの常連にもなって、次から次へとクオリティの高い作品を
生み出してくる。今、まさにノッてる感じがします。今作もそんな彼の近況を
象徴するような良作で、(ま、もっとも今作に限っては後世にまで語り継がれるよな
傑作じゃあないが)、“製作者”クルーニーならではのクールな視点と、スパイスの
効いた味付けで、やはり“らしい”佳作に仕上がっている。観ていて作り手の
”強い意志”を感じると共に、映画に対するスタンスの取り方というか、それに
向かう姿勢にブレがない。ますます円熟味を増し、役者として、また監督として、
魅力的な“映画人”になりつつあるね。
 では、もう一歩、映画の内容にまで踏み込んで言及すると、単純に“善悪の
対立”を軸にして、社会に蔓延(はびこ)る悪にメスを入れるタイプのドラマじゃない。
むしろ、ここで主人公の置かれたポジションは、正義の側というより“灰色掛かった
闇”の方に近い。そして、ある時、同じ狢(むじな)にいた同僚が“良心の呵責”から
正義の側の向かうを阻止せんと、ダークサイドから使命をあずかっているのだ。
つまり、この映画の視点は、一方的に正義の側から社会の悪をみるのではなくて、
ニュートラル(中立)からやや悪の側に寄ったところで、現実と更なる闇の奥で
糸を引く悪の中枢の、その両岸を見ている。ギャンブルにのめり込み、報酬の
為だと割り切って“組織のコマ”となって動く主人公は、およそ“完璧な人間”とは
程遠い。“人間的な欠陥”の方が目立っている。そんなチョイ悪な主人公が
“自分の、本当の正体”に気付いたとき――、何を信じれば良いのか、そして
何と向き合えば良いのか。恐らく、それがこの映画で監督が描きたかった部分だろう。
でも、誤解しちゃいけない。この映画における“絶対悪”は、巨大企業の陰謀や
その背後で糸を引く黒幕じゃない。我々一人一人の心の中に住む《小さな悪》の
方なんだ。《それ》は日々、我々の気付かないところで成長し、ある日突然腹を
食い破っておぞましい顔を出してくる。その時、唯一それに立ち向かえるのは、
“自分の良心”しかない。映画のプロローグとエピローグ、主人公が夜明けの
野原の車を止め、一頭の、けがれなき野生の馬と向き合う。主人公がその野生の
馬に見たものは、かつて理想を掲げ進んでいた頃の自分の姿であり、自分の良心
だったのかもしれない。


楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

DMM.com DVD通販CD予約販売


DMM.com CD&DVDレンタル



最新の画像もっと見る

コメントを投稿