肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『チェ 28歳の革命』、観ました。

2009-02-01 15:22:02 | 映画(た行)
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監督:スティーヴン・ソダーバーグ
出演:ベニチオ・デル・トロ、デミアン・ビチル、カタリーナ・サンディノ・モレノ
※カンヌ国際映画祭主演男優賞

 『チェ 28歳の革命』、映画館で観ました。
1955年、メキシコ。ラテン・アメリカの貧しい人々を救いたいと南米大陸の旅を
続けるアルゼンチン人の医師エルネスト・ゲバラは、独裁政権に苦しむ故国
キューバの革命を志すフィデル・カストロと意気投合。わずか82人で海を渡り、
2万人のキューバ政府軍と戦うというカストロの作戦に、参加を決意する……。 
 “(作り手の)志の高さ”がゆえに誤解を受けやすい。きっと、この映画の
表面だけを観て、中にはこう考える人もあるかもしれない――。これはアメリカの
資本主義を否定して、共産を推奨する映画なのか。“革命”のため?、いや、理由は
ともあれ、実際に多くの命を奪った人殺しを英雄扱いするのは如何なものか、と。
確かに日本人の立場からみても、映画の主人公について、今ボクらがいる現実
社会とは違う世界にいて、違う思想を持ち、違う時代を生きた人間だったとは思う。
何の接点もない、全く別の人間だってことは間違いない。いや、それはボクら
観客だけに限ったことじゃなく、この映画に登場する、貧しきキューバの人民とて
同じこと。チェ・ゲバラとは国籍はおろか、宗教や生まれ育った環境も違うのだ。
しかし、そんな彼らが、チェの優しさに触れ、激しさを目の当たりにして、その
“人間的な大きさ”に魅せられていく。この、異国の指導者の魅力に惹かれずには
いられない。自分の部下に寄せる信頼、そして、女性や子供や病人に向かう
気配りと心遣い、捕虜となった敵兵や処刑者にも情けをかけ、如何なる時も、
如何なる人々に対しても公平に、“相手への尊厳”をもって接していく。彼は
劇中の中でこんな風に言う、「革命は、ひとりの無名の兵士の士気がその流れを
変える」と。つまり、大切なのは武器や財力ではなく、“人間の心”だってこと。
なにも監督のソダーバーグは、この映画で伝説のヒーローの、その波乱に満ちた
半生をセンセーショナルに描こうとしたんじゃないはずだ。むしろ、あえて我々とは
対極にあって、別世界の指導者を取り上げることで――、例えば、見てくれとか
偏見とか差別とか――、そういった見えざる心の垣根を越えようとしたんじゃ
ないのだろうか。(勿論、それが正しいか、間違っているかは別問題として)
リーダーの改革に向かう“揺るぎない信念”と、“清い心”に人々は導かれて
いくんだろう。
 そして、そう、その“揺るぎない信念”といえば、この映画の作り自体にも
強く感銘を受けた。いくつかある戦闘シーンでは、あえてその現実音を省き、
チェ自身のインタヴューをかぶせることで、必要以上に観客の興味が“それ
(血生くさいドンパチ)”だけに向かわない配慮が感じられる。日々バイオレンス
志向に向かう近年のハリウッド映画にあって、こういう姿勢をみるとホッとする。
そう思うと、この映画の主人公同様に、ソダーバーグ自身もまた映画の
世界に新しい流れを作ろうとする“革命家”なのかもしれないね。
 最後に、この映画でボクが特に印象に残ったワンショットから――。チェが
NYの国連会議場へと向かう際、タクシーの窓から見上げるように映し出される
《マンハッタンの高層ビル街》。果てしなく高くそびえ立つ《それ》は、今
アメリカが手にした“強大な富と権力”を感じる一方で、今にも崩れ落ちそうな
“(肥大化し過ぎた)資本主義の危うさ”を見てるようで怖くなる。皮肉にも、
まさにそれは今、ウォール街の一角から世界規模で広がった“今日の金融
危機”を象徴しているようだった。



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