My Library

気まぐれ読書・映画・音楽の記録。本文に関係のないコメントについてはご遠慮させていただきます。

湯木貞一「吉兆味ばなし」

2008-11-01 | エッセイ

日本料理「吉兆」の初代の親方湯木さんが季節の食材と料理についての語りを暮らしの手帖に連載したもの。1982年発行です。

細かい調味料や材料の分量は一切出ていないし、写真も1枚もないし、料理の手順も何を何分やって次にどうしろなどという指示は一切出ていない。また一つの料理もかっちりとレシピが決まっているのではなく、その日に手に入る材料や気分、天候などによって自由な発想で書かれています。

作り手は、自分の感性、好みで自由に料理すれば良いのである。

懐石を基本としながら、家庭で作るという点に配慮してさまざまな補助的アドバイスを備えており、またどのようにして食べると旨いのかという事も、盛りつけの考え方、季節感の出し方などに気配りしつつ、さり気なく示されています。

 

吉兆のおかみにこの本をじっくり読んで欲しかった。

「日本料理に限らず世界中のどこの料理でも、人の食べる物は、作ってから食べるまでの距離が近いほど、値打ちがある。丁度頃合いをみて、良いときにだしをひく…」

まさか、他人に出したものをまたお膳に出すなんて…。湯木さんがっかりですね。

 

私も、最近は、どこに行ってもやっぱり、自分で作る、地元の食材で、シンプルな和食に優る料理はないなあと、感じるこの頃ですが、味付けとか、家族の体調とか、そんな細やかなところなんかも、家庭でしか作れない味なんだろうなとしみじみ感じました。

 

木の芽と田楽、揚げなす、焼きなす、ふろふき大根、雑炊、あんかけ豆腐、高野豆腐、かぶら蒸し、けんちん汁、蕗のとう味噌、ぬた、親子丼、煮付け、ぬか漬け、こいもの炒り煮、梅椀、だし巻き卵、筑前煮、さつま汁、煮しめののっぺい汁、お雑煮、練り味噌、煮小豆、おろし大根、お弁当、天ぷら、かき揚げ、鯖寿司、サンマご飯、かやくご飯、かき玉汁、おじや、おかゆ、雑炊、筍のわかめ煮、蒲焼き、うなぎのとろろ蒸し、鰻とゴボウの煮合わせ、吸い物、卵豆腐、酢の物、卯の花、柳川なべ、いんげんの胡麻あえ、かぶら蒸し。などなど。

 

ごくごく、我が家の家庭料理に通じる料理ですが、野菜のアクを取る処理は、昔に比べ野菜のアクが少なくなっているし、アクがあるからこそ本来の野菜の味であるので、今は、随分手を抜いた方が美味しいと思う。

 

気になったのは味の素の化学調味料を使うところ…。

グルタミン酸は糸昆布を使うことで、わざわざ、化学調味料を使わない方が良いと思いました。この本が出版されたときは、随分使われていたのでしょう。

 

また、調理用具で圧力鍋、5層鍋、テフロン加工など、そういう器具により、油などの調味料もぐんと少なく、手間や時間が省いた調理が出来て、このころより楽に美味しく出来るのではないかとも思いました。

 

ハンバーグ、カレー、オムレツ、スパゲッティなど、手軽で季節感のない料理はファミレスなど、外食でもどこでも食べられる訳ですが、

本当の家庭料理って、こういう感じだよね。って私は、そんな母の料理で育ったからやっぱり季節の食材を見つけては、その時々の味を楽しみたいなあとあらためて思いました。

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿