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気まぐれ読書・映画・音楽の記録。本文に関係のないコメントについてはご遠慮させていただきます。

嵐山幸三郎「文人悪食」

2009-10-27 | エッセイ

「何か喰いたい」臨終の漱石は訴え、葡萄酒一匙を口に、亡くなった。鴎外の好物は、ご飯に饅頭を乗せ、煎茶をかけて食べる「饅頭茶漬」。鏡花は病的な潔癖症で大根おろしも煮て食べたし、谷崎は鰻や天ぷらなど、こってりした食事を愉しんだ。そして、中也は酒を食らって狂暴になり、誰彼構わず絡んでいた。与謝野晶子、北原白秋、江戸川乱歩、三島由紀夫ら文人たちの意外な「悪食」の数々

三十七人の文士の食卓それぞれに物語があり、それは作品そのものと深く結びついている。

漱石。鴎外、子規、藤村、一葉、鏡花、晶子、荷風…。冒頭から衝撃的で、過食、拒食、暴食、飽食、粗食…。食べることは、何故か食と色の欲とも結びつき。もの悲しい。藤村か武郎にいたりもの哀しく。茂吉の歌でほっと一息。人は愛なくして生きることが難しいのと同じく、食べないと生命維持ができないのだ。

それにしても、嵐山さんは、食に関して沢山の文人たちを洞察し、その生きざまを暴くということに興味を持ったのは、やはり、食に関心があるからだろう。

文人とは?日々、汗を流し働く人間とは違い。ものを考える言葉にする人々?そのような精神世界を職業とする人々の食生活は、驚くことがいっぱいであると同時に、どうしてこうももの悲しいのだろうと。

一日に5人分読んでしまえば、頭が飽和状態になってしまいました。少し怖く、少し哀しく、何故か切ないのは、作品をとおしてまた、リアルな生き方の反映を垣間見るからかも知れません。



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