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『宿命-「よど号」亡命者たちの秘密工作』 高沢皓司

2006年10月24日 | ノンフィクション


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ある北朝鮮専門家が『北朝鮮関連の中でとにかく最高に面白い』と絶賛していた本をご紹介します。そのとおり、臨場感あふれる、読み応えのある一冊で、以前ご紹介した、『北朝鮮に消えた友と私の物語』に勝るとも劣らぬ一冊、双璧だと思っております。

講談社ノンフィクション賞を受賞し、ある雑誌の編集長は「これこそが本当のドキュメンタリーだ」と言って、社員に配って読ませたそうです。

1970年、日本赤軍の9名が日本航空機ボーイング727“よど号”をハイジャックし、北朝鮮へ向かいました。本書はその事件の経緯から、その後の犯人たちの北朝鮮での生活を実に丹念に追ったものです。

いくつも驚愕の事実が見えて来ます。(週刊誌風ですね、でもそう表現したくなる内容です) 彼らが北朝鮮へ着き、そこでの生活や待遇、洗脳のされ方、そして、日本に対する工作へ協力し、拉致にまでかかわるようになる様子などなど。きっと拉致された方々の状況もこれに近いのかなという気がします。そういえば彼らの娘たちは、堂々と日本に来ましたね。



著者は北朝鮮に出向き、よど号ハイジャック犯のリーダー田宮高麿と何度も会ううちに、友情とも同情ともいえる、ある種の共感を持つにいたります。

一方、北朝鮮では当時、日本では全く想像を絶するような計画が実行に移されていました。そこでも田宮は中心的な役割を演じ、金日成の絶対的信任を得ているわけです。

ゆえに筆者に対しても、明らかなうそ、北朝鮮のすばらしさを宣伝をするのですが、度重なる筆者との接触の中で、徐々にマインドコントロールが解かれ、著者には隠しきれない田宮氏の本音が読み取れるようになります。

かつての世界革命の旗手として日本中を騒がせた若者は疲れ果て、とうとう「日本に帰りたくても何もできない」旨を語るようになるのですが、もしそれが、北朝鮮当局に知られてしまったら、即、死を意味します。そして実際、彼は謎の急死をしてしまいます。


他のメンバーとその妻たちは有本さん拉致にかかわっていることはわかっているのですが、妻たちの中にも拉致同然に連れて来られた人物もおり、その一人一人を慎重に分析し、世界中を駆け回って情報を集め、ありとあらゆる彼らのうそ、謀略を暴き出しています。この取材の丹念さ、執念はすごいです。

本書は小泉訪朝(2002年)で拉致問題がクローズアップされる前(2000年)に出版されているわけですから、すでにかなりの証拠が一ジャーナリストの手にあったことがわかります。

金正日、金日成は本気で日本の「北朝鮮化」を画策しており、そのためには手段を選びません。対日工作は多岐に渡ります。 それに乗せられたマスコミ、政治家、知識人が日本に溢れていることを思うと背筋が寒くなります。

拉致被害者がいったい何人いるのかわかりませんが、彼らを北朝鮮から取り返せば、その口からさらなる驚愕の事実が次々に語られることは間違いないと確信しました。 



http://tokkun.net/jump.htm 

宿命―「よど号」亡命者たちの秘密工作

新潮社

詳  細


『宿命-「よど号」亡命者たちの秘密工作』高沢皓司
新潮文庫:685P:900円 



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P.S.
 どういうわけか、よど号ハイジャック事件や浅間山荘事件イスラエル・ロッド空港襲撃事件は入試には出ないんですよね。知らない人も増えました。北朝鮮といえば、不審船のイメージがあるためか、当教室の川柳で数年前、『よど号は ずっと船だと 思ってた』という川柳まで…。助けて~。