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『光の帝国-常野物語』 恩田陸

2006年10月05日 | 小説

  
生徒が 『センセーこれ読みました~?』 と、興奮気味に持ってきてくれた一冊です(笑)。恥かしながら、ネット上ではよく目にする、恩田陸氏、読んだことがありません。

あらためて、アマゾンで確認すると、著作が80ほどもあるし、本書 『光の帝国』 には、なんと50近い書評があり、びっくり。しかも…、正直に申し上げれば、男性だと思っておりましたので二度びっくり…。

で、さらに調べてみると、恩田氏の作品は、高校入試にも出題されているではないか!というわけで、さっそく読みました。


生徒が興奮するのもわかる気がする、出色の作品でした。短編連作集というのですね。短い話が10あるのですが、何の予備知識もないまま読み始めましたので、正直、半分読むくらいまでは、なぜこれが連作なのかわからず、確かにひとつひとつの短編も読ませるのですが、どことなく落ち着かない読み物のように感じていました。

ところが、表題作の『光の帝国』が出てきて、そこから一気に引き込まれました。徐々に、これまでの物語がつながっているということがわかります。ひとつひとつのお話は、かつて、常野(とこの)にいた一族の血縁者に起こったできごとだったと…。

その一族とは、みなそれぞれに、不思議な能力が与えられており、ひっそりと集落を形成して普通に暮らしていましたが、ある不幸な事件によって、一族は離散、おのおのが一般の社会で暮らしていくことになります。

しかし、その能力ゆえに、世間からあやしまれたり、数奇な人生を送らざるを得ない状況になったりしていました。 ひとつひとつの話はそのエピソードだったのですが、そこには、ファンタジーもあり、ミステリーあり、ぞっとするような話、涙を誘うような感動もの、戦争があったり、学校や会社が出てきて、現代人を風刺したように感じるものもあります。読み方はいろいろでしょうが…。

それらが、ラストに向けてつながっていく、暖かいお話でした。 こういう一冊に仕上げる構想力自体に舌を巻きます。実に見事です。枯れることのないイマジネーション、教養の豊かさもうかがえます。

言葉遣いも難しくなく、中学生以上ならお薦めできます。まだまだここから発展した物語があるようですから、さがして読んでみたいと思います。良い本を教えてくれました。本当にありがとう。


http://tokkun.net/jump.htm 

光の帝国―常野物語

集英社

詳   細


『光の帝国-常野物語』恩田陸
集英社:283P:520円


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