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『遺品整理屋は見た!』 吉田太一

2006年10月12日 | ノンフィクション


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扶桑社(出版社)の、本書の担当の方から、読んでもらえないかということで、お贈りいただいた一冊です。別にこうして記事にする義務はまったくないらしいのですが、衝撃的な内容で、大いに考えさせられましたので、取り上げたいと思います。


筆者の吉田氏は、“遺品の整理” ということを生業にしていらっしゃいます。人は家族に看取られ、普通に亡くなれば、別に問題はありません。仮に遺産相続でもめたとしても、弁護士なり裁判所で、遺品に関してそれなりの結論が出ます。

問題となるのは、たとえば身寄りのない独居老人が亡くなったり、一人暮らしの人が自殺してしまったり、あるいは殺人事件で同居の家族が逮捕されてしまったりした場合です。しかも、それが賃貸の物件で起これば、それこそ、貸主(大家)は困り果ててしまいます。

実際にそういうできごとが頻発しているそうで、だからこそ、筆者の仕事が成り立つわけですね。しかしながら、その遺品整理という仕事は、引越しの後片付けとはわけが違います。整理と言っても、そこは殺人現場であったり、死後かなりの時間がたっていたりする場所です。

想像を絶する現場に日々出くわし、興奮している遺族や、逆に、かかわりたくないと冷淡な関係者を相手にしなければなりません。筆者はビジネスとはいえ、そこで故人の人生を思い、人間というものの割り切れなさを嘆かざるを得ません。

筆者が、実際に扱った46の壮絶な現場や、故人や遺品整理の状況が紹介された一冊です。


■■■■■■ ここからは、グロテスクというか、死体現場に関する内容ですので、苦手な方は、次の■■■■■■ まで飛ばして下さいね。

よくニュースなどで死体が発見されたきっかけが、“死臭” であったと報じられます。私は死臭を知りませんが、本書を読みますと、腐乱した死体の臭いというのが大問題なようです。周りの住民からは苦情の嵐、大家は途方にくれるという場面が何度も出てきます。

また、夏場だと、部屋から廊下にまで、うじ虫がわいてしまうこともあれば、部屋中がゴキブリの巣と化して、壁一面にはりついているなどという、ホラー映画まがいの話まで出てきます。

死を前に投げやりになって、動けなくなってしまったのか、いわゆるゴミ屋敷と化している状況も珍しくなく、その中で遺品を整理するわけですから、作業員は相当な覚悟が必要だと、容易に想像できます。

それが、殺人現場であっても、警察がきれいに掃除してくれるわけではありませんから、時にはまだかわいていない血がべっとりと付いたところでの作業となります。刃物で自殺をし、のたうちまわった人の場合も同様です。腐敗した死体から、体液が染み付いていたりする場所に入るなど想像を絶します。


こういった、その場での苦労に加えて、遺族とのトラブルなどに対する苦悶があります。親だとは思っていないから、さっさと片付けてくれ、と怒鳴られたり、逆に遠くはなれた一人息子の死に直面している家族たちと日々接するわけですから、強い信念がなければとても続けられる仕事ではないでしょう。

ここまで
 ■■■■■■ 


今の日本では、一人暮らしの老人の数は増える一方ですし、自殺の数も年間3万人を超えるという事態ですから、これからもこのような出来事は続くと予想されます。

すべての人が自分の死後の準備を万端整えて、旅立つわけではありません。介護付きの老人ホームはとても費用がかかると聞きます。

自殺でなくとも、死というのは突然訪れることも多いですし、事故や病気はいつ出くわすか分かったものではありません。

本当に考えたくなくても考えておかなくてはならないことというのは、人生には多いと思いますが、最大のものが自分の死後のことでしょうか。


普通なら、自分とは無関係と思いたい悲惨な事例が次々と続きますので、読みたくもない内容なのですが、筆者の、優しく、心のこもった書き方で冷静に読み進めることができました。

内容が内容だけに、他人に勧めるというのは、どういう意味?なんて聞かれると困りますが、こぎれいな街並みの中に住んでいても、人間社会には、常にこういう問題があるということ、そして筆者のような人々が必要とされていることが分かって、私には衝撃を受けると同時に、勉強になりました。

きつい本ですが、興味をもたれた人はそのつもりでお読みになったらどうでしょうか。



http://tokkun.net/jump.htm 

遺品整理屋は見た!

扶桑社

詳 細


『遺品整理屋は見た!』 吉田太一
扶桑社:222P:1260円


P.S. 扶桑社の○○様、拙ブログをお目に留めていただいただけでなく、現代社会に問題提起するような一冊を、献本いただき、ありがとうございました。心よりお礼申し上げます。
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