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『いま魂の教育』石原慎太郎

2006年10月03日 | 教育関連書籍
 

安倍首相は、公立校の再生をはっきりとした政策の課題にしました。ひとつの大きな問題で、方向としては大賛成ですが、具体的政策を実施して、目に見える効果を上げるのは、難しいでしょうね。

教育問題が難しいのは、学校もあれば、地域もあるし、親の問題もある、すなわち日本社会全体の問題になってしまって、的が絞りきれないまま論じていることがとても多いということです。


本書の著者、石原慎太郎氏は、30年ほど前に書かれた、『スパルタ教育』 の中で、すでに当時の親はしつけができていないと指摘していました。ということは今の60歳や70歳くらいの方々を指していたわけですね。どう思われますか。

本書は、副題に “日本の崩壊を救う唯一の手立て” とあります。書名、副題ともかなりセンセーショナルなものになっており、石原氏も最後に “かなり難しい内容なのだな” と述べています。やはり議論の進め方が難しい、的が絞りにくいという告白だと私は感じました。

この著作の中では、決して教育の荒廃について深い原因探求にページを割いているわけでもなければ、極端な教育観を振りかざしているわけでもなく、国の教育制度や文部省批判を展開しているものでもありません。

最初から最後までごく常識的な教育論を、普通の親を対象にわかりやすく説明しています。

たとえば

“トマトやキュウリの固有の味を味わい知らせよう”
“親は子供に自分の愛読書を一冊与えよう”
“本を足で踏まない”
“約束を破ればかけがいの無い信頼を失うことを教えよう”
“子供のうそを咎めない”
“あいさつは人間関係の入り口であると教えよう”
“時代を越えて変わらぬ価値があることを教えよう”
“子供に意味の無い買い物をするな”
“子供が病気のときに健康のありがたさを説こう” などなど…、


昔ならどの家庭でも教えていたであろうことを、なぜそれらのことが現代において重要なのか、自分の体験だけでなく、さまざまな歴史的具体例にもとづいて主張しています。 

ルーズベネディクト、西田幾多郎、論語、川端康成、武田信玄、織田信長、ヘミングウェイ、ファーブル昆虫記、アインシュタイン、エジソンなど歴史的人物、事件からイチロー、タイガーウッズ、警備会社の社員、近所の知り合い、そして“葉っぱのフレディー”にいたるまで、実にさまざまな人、書物、事柄が取り上げられていますから展開に無限の広がりが感じられ倦怠感なく読みすすめることができます。


ただし、文体も常体があったり敬体があったりして、思いつくままに羅列している印象はぬぐえず、教育論というより、エッセーに近いのですが、全編を通じたテーマは一貫しています。教育は機関よりもまず、親が責任を持つということでしょうか。

さらに、この国の教育をあるべき姿にしなければ『自立性を欠いた日本という国家社会の蛇行はこのままいけば、日本に関わるすべてのアイデンティティを喪失し、民族の消滅に繋がっていくに違いない。』という認識を持ち、子供に知識や物を越えた世界の存在を知らせる、人間の存在はかけがえの無いものであることを説くというものです。


“極右”と呼ばれることがあり、石原慎太郎という名前だけで、ちょっと…という方もおられるでしょうが、本書には、親が利用できる、実践的具体例がいっぱいに詰まっています。 親だけでなく、先生も、社会に興味のある生徒も読んだら良いと思います。非常に読みやすい一冊で、お薦めできます。

いま魂の教育

光文社

詳  細


http://tokkun.net/jump.htm 


『いま魂の教育』石原慎太郎
光文社:283P:1260円



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