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【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『日経新聞の黒い霧』 大塚将司

2006年10月19日 | ノンフィクション

 

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日本経済新聞といえば、創立130年の老舗という歴史だけでなく、その記事内容次第で、上場企業の株価やマーケット全体を大きく変動させてしまう影響力がありますね。経済に関心がある人、ビジネスマン、あるいは就職活動をしている大学生の愛読紙です。

最近では、昭和天皇に関する、いわゆる“富田メモ” のスクープで、注目を集めましたが、それ以前の大スクープといえば、東京銀行と三菱銀行の合併のニュースです。

日本の経済界だけでなく、世界にも衝撃を与えましたが、本書の著者こそ、そのスクープをものにし、新聞協会賞を受賞したご本人です。

その日本経済新聞社の誇る、花形記者が、日経新聞社内で子会社の不正経理があったことを隠しているのではないかとして、自分の会社の経営陣との戦いを決意したのですから、おだやかでありません。というより、そこらの経済小説をしのぐ、緊迫した現実です。


当時の社長による経営の公私混同や、イトマン事件コスモ信組事件TCW事件などで、自社に有利な社説や誘導記事に憤り、最後は株主総会で、社長引退の提案をたたきつけ、社の幹部全員に自分の提案に賛同するように求めるメールを送るなどして、【エース記者VS大新聞社】 という、前代未聞の戦いを描いたドキュメンタリーです。

これが実に臨場感あふれる、抜群におもしろい一冊になっています。


とにかく、スクープを狙う手法で、自分の会社の社長を追い詰めていくのですが、何と言っても相手は超大物。社内のどこから情報が漏れるかわからないし、仲間であっても計画を明かせば、そこは、サラリーマン記者、みな尻込みすることは目に見えています。

失敗すれば、ジャーナリストとして抹殺されかねません。 それでもやる、と決意する段階から、実行に移し、決着をつけるまで、信頼できる友人や仕事上の人脈を綱渡りでたどりながら、時には自分で、現場に足を運んで確認するなど、まるで上質の探偵小説です。途中でやめられずに一気に読んでしまいました。


小説ならまだしも、実際に日本の経済界に大きな影響力をもった、メディア内のできごとですから、臨場感が違います。何と大胆にも、ほとんどが実名で登場しますので、日経をしっかり読んでいる方なら、なじみの記者の名も見つかるでしょう。


また、単に緊迫感や高揚感で読めるだけでなく、新聞が作られるしくみや、記者の活動様式など、いろいろ知ることができて有益でもあります。

本書同様に衝撃的だった 『日本がアルゼンチンタンゴを踊る日』 を書いた、ベンジャミン・フルフォード氏も、日経新聞の記者時代“住専とヤクザ”について書こうとしたところ、上層部からもう書くなと言われたと述べていますが、そのつながりも理解できました。


常に、政権を批判し、世論形成をし、世の中をリードする立場の新聞社ですが、自らの業界が一番古いということに気が付く記者は、実は少ないかもしれません。仮に気付いても、ジャーナリストの使命感に燃えて、首をかけて上司に訴えるという行為に及ぶには、想像を絶するリスクが伴い、人並みはずれたエネルギーが必要です。

それを成し遂げた、大塚氏の戦いの様子、関心のある方は、ぜひお読み下さい。すばらしいと思います。 



http://tokkun.net/jump.htm 

 
『日経新聞の黒い霧』大塚将司
講談社:351P:1890円


P.S. 大塚氏の『スクープ』 という新書を以前ご紹介させていただきました。そちらも、新聞記者の活動がよくわかる、非常に興味深い一冊です。記事をご覧いただければ幸いです。

日経新聞の黒い霧

講談社

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