玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

2018年10月の観察会

2018-10-21 09:35:47 | 観察会


10月は第3日曜日の21日に観察会をしました。ずっと雨や曇りが続いていたのに、カラッと晴れてとても気持ちの良い日和になりました。気温もちょうどよく、少し風もあってとても快適でした。
 今回は果実を観察し、倒木のようすを見ようと思ったので、集合をいつもの9時半ではなく9時にし、鷹野橋から2.3km下流の小桜橋までを往復することにしました。

<倒木>
 鷹野橋から下流に向かって歩き始めましたが、鷹野橋のすぐ西側(上流)に太さ50cmくらいのコナラが倒れているのがありました。玉川上水をまたぎ、さらに歩道を塞いでいたようで、倒れた10月1日のうちに片付けられていたようです。
 その東にも幹が折れたコナラがあったので太さを測定してもらいました。周が119cm(直径38cm)ありました。


木の周囲を測定する


「9月31日の深夜に台風24号がきて強い風が吹きました。南風だったので私は玉川上水の南側の木が根返りをして北側に倒れただろうと予測しました。それで、私たちが進めている花マップという活動(こちら)で玉川上水30kmの範囲の倒木を調べることにしました。調査の内容は橋に番号をつけて橋と橋の間の区画になんという木が倒れていて、それの太さと向きを記録しています。倒れるといっても根返りだけでなく、幹が折れたものもあるので、その区別もしています」



「実は私は昨日、明治神宮で調査をしたのですが、驚いたことに明治神宮では枝は落ちていましたが、倒れたり幹が折れたりした木は全くありませんでした。全部を見たわけではないですが、ほとんど無傷だという印象でした。木がまとまった林を作っていると、それが面となって風が吹いてもお互いに守りあうのだと思いました。それに比べれば玉川上水は東西の壁のようなものですから、南から風が吹けばまともにダメージを受けるわけです」
 花は少なく、わずかにヤブランが咲いていたくらいでした。久右衛門橋を超えると大きなコナラが倒れており、これは根返りでした。その木がフェンスを直撃してフェンスも壊れていました。







この木の周は195cm(直径62cm)ありました。

「こういう大きな木が倒れると、これまで複数の木が覆っていたところに穴が空きます。そうすると光が射して下の植物が育ちます」


できた隙間(ギャップという)


他にも木が倒れて、玉川上水をまたいでいるようなのがありました。



<秋の果実>
 この辺りはもともとやや木が少なく明るいので、ムラサキシキブ、ガマズミなどの実がありました。


ムラサキシキブ、ガマズミ


この後で見たのですが、ヤマコウバシやシロダモも果実をつけていました。


ヤマコウバシ、シロダモ


「ヤマコウバシはクロモジの仲間のヤマコウバシがありました。みなさんの食べる羊羹には付いていないかもしれないが、高級な羊羹にはクロモジの爪楊枝が付いています。ほんのりといい香りがします。これもクロモジほどではないが、ほら、こうして枝をおるといい香りがします。<コウバシ>は香ばしいですね」
「常緑ですか?」と関野先生
「いや、落葉樹ですが、ただ冬の遅くまで茶色い葉をつけていて、冬の方が目立つ木です」

 サンショウもありました。先月も体験をしてもらったので、今回も葉と少し果実をとって
「この葉っぱを手のひらにおいてパンと叩いてください」
「あ、ほんといい匂い」
「それからこの赤い果実をちょっとでいいからかじってください。これが<サンショは小粒でもピリリと辛い>です」


サンショウの実をとる


ちょっとかじってみてください


 ヤマノイモの果実があったので、中に入っている種子を取り出してクルクルと回転して落ちる様子を見てもらいました。


ヤマノイモの果実


ヤマノイモの果実が落ちる様子を実験


それからコセンダングサ、キンミズヒキ 、ヌスビトハギ、イノコズチなどの果実があったので、男子学生のシャツに、いかに巧みに果実が付着するかをデモンストレーションしたら、みなさん喜んでいました。


コセンダングサの果実


 そう言いながら、私自身も藪から出てきたらズボンにヌスビトハギの果実がたくさんついていました。


ズボンにヌスビトハギの果実がたくさんついた


秋は植物がいかに工夫して種子を散布しようとしているかを観察する良い機会になります。

<さらに歩く>


大きなケヤキがあったので記念撮影をしました。直径は1mに少し足りないくらいでした。


ケヤキの前で記念撮影


ホトトギスが咲いていました。
「10月になると夏の花の残りがあるという感じですが、これとヤクシソウはこのくらいから咲きます。あまり訪花昆虫がいないだろうと思うのですが、逆に限られた花を探して集中するということがあるのかもしれません」


ホトトギスとホトトギスを観察する関野先生


林の下にフユノハナワラビがありました。



「これはシダですが、普通のシダが葉の裏に胞子嚢という胞子の入った袋をたくさんつけていますが、これは葉には胞子嚢がなく、地下で繋がった<胞子茎>という株を伸ばします。光合成する葉と胞子を作る葉が別れているということで、原始的なシダです。ツクシはスギナというシダの胞子茎で。これと同じです」

それから先では倒木はありませんでした。

 それからチャノキがありました。今日はビギナーが多いので
「この白い花、大きめの果実がありますが、なんだと思いますか?」
「・・・・・」
「お茶です。名前はチャノキと言います」
「え?あの飲むお茶ですか?」
「はい、この辺は畑の生垣などにもよく使われるから、なんかの機会にタネでも飛んできたのかもしれませんが、時々見かけます」


チャノキ

「思えばこの植物のためにインドの歴史が変わり、イギリスの歴史、したがってアジアの歴史も変わったんですね。アジアでは古くからお茶の飲んできたし、イギリスでは紅茶を飲むことが生活の一部になっていますが、あの時代に熱帯から船で運ぶのは大変なことでした。ヨーロッパ人が嗜好品として飲むために、熱帯雨林を伐採してお茶畑を作り、刈り取るための奴隷もいたし、工場を作って社会も大変化をしました」
「あれは中毒性はないんですかね。私はお茶が大好きで飲まないではいられないけど、考えてみたら依存症みたいなもんですよね」
と言ったら医学博士でもある関野先生がお茶の成分と人体に与える効果について専門用語で説明してくれましたが、よく覚えていません。


お茶の成分や薬効の説明をする関野先生

ともかく、1つの植物が世界の歴史を変えたと思うと感慨があります。この植物が普及した以降は人間が当たり前のように飲んでいますが、「それ以前」があったわけで、何を飲んでいたのだろうかと思います。
「いろんなハーブがありますから」
と関野先生。

小平の玉川上水では林が立派で、武蔵野の雑木林の植物がよく残っていますが、橋があると林が切れるので、明るい場所に生える植物が出てくる傾向があります。

<明るい場所の植物など>
 橋の近くにイヌタデが咲いていました。ピンクの可愛らしい花です。花には中に雄しべや雌しべがあるわけですが、この時期のイヌタデの「花」は中にパンパンになるくらい大きい種子が入っています。だから普通の虫媒花が、訪花昆虫を惹きつけるために花を目立つ色にしていることを考えると、いまの時期のイヌタデの花はその機能は持っていないことになります。種子を取り囲んでいるという意味では果実の果皮の働きをしているということになります。では多肉果のように、その色で動物に食べさせて種子散布をしているかといえば、なんともいえません。動物にとっては外見が同じピンクの花では区別がつかないはずだからです。
「これを見てください。1ミリくらいの小さな種子ですが、ソバと同じ形をして、断面が三角形です。ソバはタデの1種です」


イヌタデの花と種子


「はい、指紋までバッチリ撮れました」と棚橋さん。

 商大橋の近くではセンニンソウがまだ花をつけていました。暖かかったせいかハチなどがたくさんきていました。よく見るとカマキリがいました。カナヘビの小さいのを見つけた人もいました。それにクモの巣があってツマグロヒョウモンが死んでいました。明らかにクモに襲われて体液を吸われたようです。


クモに捕まって死んだツマグロヒョウモンとクモ(ジョロウグモ?)


カマキリ


よく見るとクモの巣がいくつもありました。クモはこの花に今シーズン最後の機会とばかり、昆虫が吸蜜にしようと集中していることを知っていて巣をかけているようです。皆さん、興味深げに観察していました。


センニンソウやクモを観察する


 小桜橋まで行く予定で、気持ちの良い空気の中をのんびりと歩きました。この辺りは南岸に野草保護観察ゾーンがあって、時々訪花昆虫の調査をするのに訪れていますが、今日は倒木をチェックするためにずっと北側を歩きました。北側は林が続くのですが、桜橋が近づくあたりには木が少なく明るいところが多いようでした。
「ここを見ると、ツルウメモドキ、ヤマノイモ、ヘクソカズラ、ノブドウ、クズ、エビヅルと、色々な植物がありますが、今言ったのは全部つる植物です。こういう明るい場所は草本類が育つのに都合がいいのですが、玉川上水の場合はすぐ隣に木もあるので、草本のうちでもツル植物にとって都合がよく、伸びては他の植物に絡まったり、覆ったりして上に上に伸びます」
「今回、台風でかなりの木が倒れ、枝もたくさん落ちて明るくなりました。だから、今後こういう場所につる植物が増えるという形で群落の変化が起きるはずです。玉川上水の植物は常に変化しているということで、それが今私たちが花マップ(こちら)を記録している理由でもあります」
 ツル植物といえば、津田塾大学の近くでツタがあったので説明しました。
「これはツタという植物で、ナツヅタとも言います。もう1つキヅタという常緑のものもあります。ツルとツタはどう違うと思いますか?」
少し間があって、
「ツルは絡まるけど、ツタはなんかへばりつくという感じ」
と関野先生。
「そうですね。ツルは絡まる植物があってそれにぐるぐると巻きつきますが、ツタは吸盤を持っていてくっつきます。だから棒のようなものでなくても、岩や壁のような面的なものでも伸びることができます。ツタの吸盤があるので見てください」


ツタの説明をする


エビヅルを見る関野先生


<締めくくり>
 小桜橋に着きました。
「予定ではここまでの往復でお昼くらいまでとしていますが、すでに11時40分です。いつもながら時間の見積もりが悪くてすみません。色々出会うものがあるので、それはそれでいいと思います。ここからは一橋学園駅が近いので、そちらで帰る人もおられるので、ここで一応シメとします。ありがとうございました」
 ほとんどの人はここで駅に向かいましたが、私と棚橋さんはUターンして南側を歩いて鷹野橋まで戻ることにしました。南側には野草保護観察ゾーンがあるので、アキノノゲシ、ノコンギク、ナンテンハギ 、オミナエシなど草原の花が咲いていました。


アキノノゲシ、ノコンギク、ナンテンハギ 、オミナエシ

倒木はほとんどなく、鎌倉橋の東におそらく大きな木が根返りになったようで、跡がありましたが、片付けられていました。


倒木の跡


 今回は、24号台風の影響を軸に、植物群落は、構成種の違いが環境の変化に応じて変化することで常に変化しているのだということを実感できたと思います。天気にも恵まれて楽しい時間を過ごすことができました。

 写真は主に棚橋さんが撮影してくださいました。リーさんの写真も使いました。ありがとうございました。

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