玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

参加者の感想

2021-11-22 04:29:01 | 観察会
上野泰子

<コウタ>
滑空する実が楽しかった!!どんぐりのヤジロベイがめっちゃ楽しかった。指に乗せられて楽しかった。

<カホ>
歩くの楽しかった。めいちゃんとさえちゃんが、色々、木の実を取ってくれたから。優しかったのが、嬉しかった。


 普段なにげなく歩いている玉川上水にこんなに沢山の木の実がなっているということは、ほんとに驚きです!高槻先生は、遊歩道が自然の宝庫だったことを気づかせてくださいました。ありがとうございます!!
 コウタには一緒に楽しめる仲間がいて、カホには優しくしてくれるお姉様方がいて、玉川上水が繋いでくれる人たちは温かい。
 こんな中で子育てができて幸せだなぁ。みんなありがとう。また、復習がてら、散歩に出かけよう。
 図書館に行ったらこんな本に出会いました!

 

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小山内 教弘、トウワ、シュウト

 楽しい観察会、ありがとうございました。
 身近な自然に触れて、説明があって、一生懸命に実を集め、良い体験となったと思います。年輪の話はこどもはあまりピンとこない話でしたが、大人は面白く聞かせていただき、毎回新たな発見もでき、ありがたく思います。
 ヤジロベー作りも楽しかったですが、アオギリを折り紙で最後に作って教えていただいたことを覚えて、真似て作って試していました。
 とても楽しい観察会だったんだと、改めて思いました。ありがとうございました。

++++++++++++++++++++++
佐野 みゆき、わたる、あかり

玉川上水は普段からよく歩いていますが、子どもに
「これ、何の木の実かな?」
と聞かれても
「うーん、何だろうね??」
と分からないまま、終わってしまうことが多いです。観察会では
「これ、何かな?」
と子どもたちが聞くと、
「◯◯だよ」
と先生やスタッフの方が植物の名前を教えてくださる。うちの子は、それが何より嬉しかったようで、持ってきていたスケッチブックに覚えたてのカタカナで、植物の名前をせっせと書き記していました。短い道のりの間にたくさんの種類の木や草が生えているんだなぁと改めて知ることができました。次に同じ道を通るときが楽しみです。
 風散布の種は、子どもが前々から興味を持っていたので、色んな種が様々な飛び方をするのを実際に見ることができて、喜んでいました。飛ばすときに使っていた棒が欲しくなりました(笑)
 どんぐりのやじろべえ作りは思ったよりも簡単でおもしろかったです。どんぐりでキリンを作ってらっしゃった方もいて、どんぐり工作の幅が広がりました。
 先生はもちろんのこと、スタッフの方や、参加者の方々、色々な方とふれ合いながら、色々な話を聞くことができて、子どもたちも私自身もとても良い経験になりました。
 素敵な観察会をありがとうございました!

● あの棒は昆虫採集用のネットの軸で、伸縮式です。釣竿の太いのでもできると思います(高槻)。

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新野葉子

 高槻先生の観察会、今回も温かい時間を有難うございます。親になると学びの場はとても貴重であり、学生に戻ったようなワクワク感を感じる事ができます。
 宝探しのように採取していった木の実は、それぞれが独自の進化を遂げ、まるで意志を持っているかのように工夫して種を芽吹かそうとしている事が、高槻先生のお話でとてもよく解りました。
 どんな植物でも健気に一つの目標を持って必死に生きているよだなぁ…と思うと、私達人間にも学ぶ事が沢山あるような気もします。すぐ近くの道端で壮大なドラマを感じることが出来ました。有難うございました!

++++++++++++++++++++++
関根彩衣、母麻美

 今日は種や実の観察会、親子で楽しませてもらいました。
ありがとうございました!
 今年は実が少ないとのお話で少し不安でしたが、玉川上水の道を散策すると、意外に実や種がたくさん見つかり、ホッとしました。ムラサキシキブの紫色、本当に綺麗でした。様々な実にそれぞれの美しさがあって、見ていて嬉しかったです。
 高槻先生の木の年輪のお話、興味深かったです。年輪から色々なことが分かるんですね。2400年も生きられる木があるなんて、自然て神秘ですね!
 実や種の、繁殖するための色の知恵のお話、面白かったです。鳥には赤以外に実は黒も見えやすいのは意外でした!
 娘はヤジロベー作りも面白かったとのことです。家でも遊んでいます。
また次回もぜひ参加させて下さい。
 高槻先生、リーさん、サポートして下さったスタッフの皆さん、本当にありがとうございました!

++++++++++++++++++++++
斧すずほ、ゆうな

 本日はありがとうございました。
 ひとつひとつ丁寧に教えて頂き、とても勉強になりました。普段、何気なく見ている植物が、こんなにも沢山の種類があり、それぞれに特徴も違う事に感激致しました。
 これから、道を歩くとき、いつもと違った景色になりそうでとても楽しみです。子どもたちとお散歩に行って何か質問されたら堂々と答えられるように復習して楽しみたいと思います。
 スタッフの方達も暖かく、子どもたちのこともよく理解して下さり、ご配慮の数々に本当に感謝しています。
 ありがとうございました。また機会があればぜひ参加させて下さい。

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木の実、草の実、たねしらべ 2021.11/21

2021-11-21 16:08:45 | 観察会
2021年11月21日に「木の実くさの実たねしらべ」という子供向けの観察会をしました。



参加者の感想は こちら

今年は果実が少ないので、ちょっと難しいかもしれないという気持ちがありましたが、それなりに楽しくやろうと思っていました。
 コンビニの駐車場に集合しました。少し寒く感じました。前回の反省として、子供に走らないこと、柵を超えないことを伝えました。
 歩き出すと早速子供が果実を見つけました。ネズミモチでした。
「小さい果実をネズミのお餅みたいだというわけです」
「えー、ネズミのもちなんて食べたくない」と男の子。
その後すぐにナンテンが見つかりました。
「ナンテンは南天と書きます。きれいなので庭にも植えられますが、野生植物です。果実の周りに果実を支える軸があります。これは鳥が食べてしまった残りで、少し前にはもっとたくさん実が付いていたんです」
「ヘェ〜」
 あまりないと思っていましたが、ムラサキシキブ、ヘクソカズラ、スイカズラなどが見つかりました。


ムラサキシキブの果実

「ヘクソカズラなんてひどい名前だよねえ。ヘってオナラだし、クソはウンチだもんね」
「スイカズラは忍冬と書きます」
「え、そうなんだ。読めないよね」
「冬になると葉っぱが落ちて、草は枯れてしまうけど、これは冬遅くまで頑張って葉をつけているので冬を耐えるってことね」
そうしてゆっくり歩きました。
「まだ50メートルも歩いていません」
果実が少ないとはいえ、説明しながらですから、なかなか進みません。でも早く進むことが目的ではないのだからそれでいいのです。

果実の説明をする

 コナラの切り株がありました。
「今年はこの辺りのコナラの木がナラ枯れになりました。カシノナガキクイムシという小さなムシのせいです。驚いたことに、メスは背中にくぼみがあって、そこにキノコのような菌類を入れて、木の中にあけたトンネルの中でこのキノコを栽培し、それを幼虫が食べるのだそうです」
「ヘェ〜」
「オスは春になると木から出て、他の木に行き、フェロモンを出して他のオスを呼び寄せてトンネルを掘ります。そのために、樹液が流れなくなって木が枯れます」
「この切り株はナラ枯れが起きたために伐採されました。木が生きているのは樹木の外側だけで、内側は死骸なんです。夏に育って冬に休むから年輪ができます。これが2020年、2019年、・・・・、この辺で生まれた人もいます」
笑い
「お父さん、お母さんはこの辺、私はこの木と同じくらいです」
あるお母さんが聞きました。

年輪を調べる

「年輪が狭いところがあるみたいですが・・・」
「はい、木も若い時は背が低いので、林の下の暗いところで少しずつ育ちます。その時は年輪幅は狭いです」
「この部分が張り出しています。これはこの木が育つ間に、こちら側で周りの木が倒れるなどの出来事があり、枝を伸ばし葉がたくさん生えたために成長が良くなって年輪幅が広くなったのです」
「はあー」
「年輪をこの高さだけでなく、木の違う高さでとって調べると、高さによって年輪幅や向きが違うので、何が起きたかがわかります。この木の履歴書のようなものです」
「私は先週鹿児島に行きましたが、飛行場にヤクスギを切った円盤が置いてありました。直径は1メートルを遥かに超えていて、細かい年輪がぎっしり詰まっていました。なんと年齢は2400年だそうです。キリストよりずっと前です」
「すごーい!」
「熱帯の木は年輪がないんですよね?」
「はい、冬がないから木は休みなく太るので年輪はできません。熱帯では同じ木が花を咲かせるのと、果実がなるのが共存します」
とどんどん盛り上がっていきましたが、
「ねえ、もっと木の実を探そうよ」
と男の子が言ったので、
「そうだね、では切り株の話をしているとキリがないのでこのくらいで・・・」
その後、いくつか見つけた果実も追加し、鷹野橋の近くにきたときに、子供がアオツヅラフジを見つけました。
「あ、いいものを見つけたね。このタネはとても面白い形をしているので、取り出してみてください」
「あ、ほんとだ」
「私にはアンモナイトに見えます」

アオツヅラフジを見つけた


アオツヅラフジの果実と種子

 それからうさぎ橋を渡って中央公園に達しましたが、時間が経ったので津田塾大学公民館に行くのは諦めて公園で作業をすることにしました。私は公園の駐車場に教材類を置いていたので、とりに行き、その間にドングリを拾ってもらいました。

ドングリを拾う

 公園にはドーム状の丘があるので、その上で説明と作業をすることにしました。

丘の落ち葉

 初めに今日見た果実のリストをあげ、赤と黒の果実が多く、大体が直径5-10 mmの大きさであることを確認して、それが鳥に食べてもらうためであること、動物は美味しい果実を食べたと思っているが、果実が美味しいの植物が種子を運ぶためで、植物に使われているのだという話をしました。


鳥に食べられて種子を広げる果実を説明する。

 次に、持参していた3種の風散布種子を紹介しました。まずシナノキです。羽のついた果実です。

オオモクゲンジ(楕円形)とシナノキ(こげ茶色の細長いもの)の果実

オオモクゲンジの果実

オオモクゲンジの果実を分けたもの

 持ってきた「タネ飛ばし棒」で飛ばすことにしました。この棒は昆虫採集用の捕虫網で伸縮式になっています。その先端にタッパーの箱の半分を切ったものをテープで留めたものです。

「タネ飛ばし棒」の先端部

これを伸ばして私が手を伸ばすと4メートル近い高さになります。


房の先のタッパーに果実を入れて・・・・伸ばすと高くなりました。

 シナノキはくるくる回って落ちました。
「うまくいったね、ではこれはおみやげにするから一つずつとってね」
というとみんなが集中して取り合いになりました。
 次にオオモクゲンジの果実でもデモをしたら、ヒラヒラと落ちていきました。


オオモクゲンジの果実が落ちるのを見る

オオモクゲンジの果実(3つに分けたところ)

 最後にアオギリでおこなったら、やはり一番大きく、ゆっくり回転するので歓声が上がりました。
 それから私が考えたアオギリ模型の作り方を説明しました。

アオギリ模型の作り方。この説明ではわかりませんが、最後のところは「スプーン」の取手の上部にあたる部分を下向きに折り曲げることで、空気抵抗を大きくするという意味です。

 まず、折り紙を半分に切ります。それから片方に5cmほど切り込みを入れ、そこを合わせるように重ねて糊付けします。これでスプーンのすくう部分ができます。そして片側にクリップをつけ、上の部分を織り込んで空気抵抗を大きくします。これで完成です。これも棒に乗せてデモをしたら、うまくクルクルと回って拍手が沸きました。これは、自然界のものの原理を理解してそれを再現させるという意味で教材として優れていると思います。そして遊び要素もあるので、楽しみながら学ぶという意味でも適しています。ぜひ使ってもらいたいと思います。
 さっきとったオニドコロもオオモクゲンジのような作りなので、種子を取り出してやってみると、回転しましたが、小さすぎて回転が速く、わからない人もいました。
 お母さんの一人がユリノキの種子を持ってきていたのでそれで行うと、回転がよく見えて歓声が上がりました。
 ここで、風散布のまとめをしました。

 最後にドングリの説明をしました。
「ナンテンなどの果実は中に硬い種子を入れています。それを動物が食べて糞を出しますが、そこに種子が入っています。ドングリは種子としては飛び抜けて大きいものです。種子だから食べられたらそれでおしまいです。ボタボタと母樹から落ちて、これをリスやカケスに運んでもらい、これらの動物は「貯食」といって地面の下などに蓄えます。その後、一部を食べますが、一部を忘れるので、それが発芽します」

 ドングリを使ってヤジロベエを作ることにしました。キリで穴を開け、竹ヒゴを通して完成です。人差し指で支えると左右にゆらゆらと揺れたので子供は喜んで
「僕も作りたい!」
「でも、キリは危ないから穴を開けるのは大人ね」
しばらくして「できた」「できた」と声が聞こえました。
中には真ん中のドングリを上下逆にして、尖ったところを木の枝のくぼみに入れている子もいました。







楽しく作業をしていましたが
「お腹がすいた」
という子もいたので、11時半過ぎでしたが、スケッチは省略することにし、観察会を終えることにしました。主催者のリーさんが
「はい、みんなでお礼を言いましょう、セーの・・・」
というと大声で
「ありがとうございました!」
といってくれました。それで解散としてもよかったのですが、ちょっと思いついて
「今日はありがとうございました。一つクエスチョン。先生の服にポケットがいくつあると思う?」

「ポケットはいくつかな?」

6つ、10といろいろな声がありましたが、数えると11ありました。そうしたら一人の子が私が腰につけていたカメラバッグにもポケットがあるというのでそれを数え、ジャケットの下に着ているシャツにもあるのに気づいて最終的に14個ということになりました。

「正解は14でしたぁ」

 自然を楽しく学ぶという意味では良い観察会になったと思います。




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玉川上水にはフン虫がいるよ 2021.9.25

2021-09-25 15:24:34 | 観察会
2021年9月25日、鷹の台のうさぎ橋に子供12人、大人13人が集まりました。昨夜少し雨が降って天気が心配されましたが、なんとか大丈夫そうでした。

糞虫トラップの説明(リー智子撮影)

少し説明してから、昨夕セットしておいた糞虫トラップ9つの確認に行きました。糞虫トラップとは直径10 cmほどのプラスチック容器で、上に割り箸をのせ、そこにティーパックに入れた犬の糞を洗濯バサミでぶら下げたものです。容器の底に少し水を入れて糞虫が飛んで逃げないようにしました。

糞虫トラップ

 ただ、このところ急に涼しくなり、昆虫は不活発になっているので、来ているかどうかわかりませんでした。1番目のトラップに行くと、ぱっとみて何匹か入っているのが見えました。

「いましたよ!」
 というと、皆さんから歓声が上がりました。子供に見せると覗き込んでいました。

トラップに入っていた糞虫を覗く(リー智子撮影)

 持参した茶こしに受けて水を流すと茶こしにコブマルエンマコガネが残りました。それをポリ袋に入れました。同時に、一人の子に終わったティーパックに入ったフンと、割り箸、洗濯バサミを回収してもらいました。

 その次のトラップも、その次のトラップも入っていました。


トラップ(右側の小さい白いもの)と覗く子供達

「ついでに説明しておくと、たくさんの木に赤いテープがついていますが、これは伐採予定の印です。去年からナラの木がナラ枯れを起こして、夏でも枯葉になっています。これはカシノナガキクイムシというキクイムシが幹にトンネルを開け、幹に水が流れなくなるためです。こうなると木は枯れてしまうので、そのまま放置すると倒れて危険だから伐採するわけです」

ナラ枯れのコナラでカシノナガキクイムシの説明(リー智子撮影)

 そう言って鋸屑のような木屑の塊を見ていたら、小さな虫がいました。拾ってみるとカシノナガキクイムシ(カシナガ)でした。

 
カシノナガキクイムシ 格子間隔は5 mm

 こうして9つのトラップをチェックしましたが、なんとゼロだったのは一つだけで合計で36匹ものコブマルエンマコガネと1匹のエンマムシが入っていました。ハエとダンゴムシも少しいましたが、これらは数えていません。

「皆さん、考えてください。これだけいたということは、玉川上水にはどこにでも糞虫がいるということです。一体、どうやってここにたどり着くのでしょう?」
「それは匂いです。糞虫は飛びながらパトロールして、少しでも匂いがあれば、そちらに飛び、さらに強い匂いの方に飛ぶということを繰り返して、昨夜か今朝、ここにたどり着いたはずです。すごいものです。人は嗅覚が悪い動物だから、我々にはできないことです。大したものです」

トラップに入った糞虫

「今日はほとんどがエンマコガネですが、これをもう一晩おいておくと、ダンゴムシが増えます。ダンゴムシは飛べないから、匂いを捉えてもトラップの壁を登ったりして時間がかかるということもあるかもしれません。でも、私はネズミの死体を置いておいたことがありますが、最初はハエが飛んできて、その後シデムシがきて、最後にダンゴムシがきます。多分、新鮮な糞や死体と<熟成モノ>とでは出す匂いが違い、ダンゴムシは最終的な分解をする役割なのだと思います」
と子供そっちのけで大人に説明していました。



 最後の9番目を回収し終わったとき、右足にチクリと痛みを感じました。何が起きたかわからなかったのですが、もう1箇所別の痛みがあったときにハチに刺されたとわかりました。ジバチ(クロスズメバチ)です。


私を刺したクロアシナガバチ

ジバチは地下に巣を作るので、どうやら私がその上を踏んだために、ハチが怒って攻撃してきたようです。名前はスズメバチですが小さいハチです。ただ痛みはかなりきついです。一人の男の子も刺されたようです。それで慌てて、
「ハチに刺されたから逃げて!」
と言って移動してもらいました。私も歩いて行きましたが、その後も左足を刺され右足は複数箇所刺されました。どうやら私とその子だけが狙われているようです。刺された男の子はハチがズボンの下に入って刺したようで、服を脱ぎました。リーさんがポイズンリムーバーという吸い取り器で吸引しましたが、効果があったかどうかわかりません。本人は冷静で「痛いけど、我慢できる痛さです」と言っていました*。アレルギー反応はないようでしたが、緊急医療室に行ってもらうことにしました。私は移動しましたが、その後も少しまとわり疲れました。間違いなく、さしたハチが何らかの液を出し、その匂いが私についていて、それを狙って攻撃をしているようでした。

* 後で聞いたら、診療所で大丈夫と言われたそうで安心しました。

 そんなアクシデントはありましたが、予定していた丘の上に行って、ポリ袋に入った糞虫を手に握ってもらうことにしました。
「あ、動いている」
「すごいパワーだ」
といった声が聞こえました。

 教材を入れた袋を持っていた人がハチに刺された子を診療所に連れて行くために隣の恋ヶ窪の駅まで行っていたので、彼女が戻るまでスケッチをしてもらいました。
 それが届いたので、説明をしました。一つは紙粘土で作ったコブマルエンマコガネの模型です。大きいので迫力があり、歓声が沸きました。

糞虫の模型を見せる(撮影小野さん)



 もう一つは昨夜作ったタヌキの模型です。

タヌキの模型

「うちの近所に角上という魚屋があって、発砲スチロールをくれるのでもらってきてこれを作りました。それでね、口から食べ物を入れますね」
と言って毛糸の玉を入れて、棒で押しました。この模型は厚さ3cmくらいの発泡スチロールの板を3枚重ねにしてあり、中央の「胴体」の部分は中空になっていて、口からお尻までが「筒」つまりトンネルになっています。



棒を押しながら・・・・
「そうするとね、ほらお尻から出てきた」

タヌキの模型の口の側から「糞」を棒で押すと・・・(リー智子撮影)

 子供はもちろん大人も大声で喜びました。
3、4回繰り返しました。結果はわかっているのに、その度に皆さん大喜びしてくれました。

お尻から糞(毛糸玉)が出て来た(リー智子撮影)

 「動物ならなんでも、人間でも偉い人でも誰でも、口から食べ物を入れて、お尻からウンチを出す、これは皆同じです。だから自然の中にはどこにでもウンチがあり、だからそれを食べる糞虫がいる。糞というのはとても栄養があるからそれを食べて、分解するわけです。そのおかげで糞はすぐに分解されて土に環(かえ)り、植物の栄養になるわけです。だから<糞虫なんて汚い>と思うでしょうが、自然界で重要な働きをしているわけです」
「では玉川上水では糞虫の食べ物、つまり糞はどうなっているでしょう」
「私が思うに、犬の散歩で糞をしたら、草むらに残す人もいると思います。それにすぐそこの津田塾大学には確実にタヌキがいます」
「へえーそうなんだ」
「はい。そして玉川上水と行き来していることもセンサーカメラで確認しました」

「玉川上水は一時は埋めてしまおうとか、今でも道路を付けようとかいう動きがありますが、残そうという人もいたおかげで今こうして緑が残っています。玉川上水の中でも小平にはいい林が残っており、いい林があれば鳥もタヌキも昆虫もいます。玉川上水の自然を楽しむのにもいろいろあって散歩をして緑を見るという楽しみ方もあるけど、私はもうちょっと突っ込んでその生き物がどう暮らしているかを調べています。調べてみれば、いることさえ知られていない昆虫がいて、しかも重要な働きをしていることがわかる。そうすると、また玉川上水が違って見えます。そういうことを伝えたいし、特に子供に知ってもらいたいと思っています」

子供たちのスケッチもできたので(こちら)、記念撮影をし、挨拶をして解散としました。何人かはコブマルエンマコガネを飼育すると言って持ち帰りました。


参加者からの感想は こちら

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感想 スタッフ

2020-12-06 23:27:25 | 観察会
足達千恵子

子どもたちは木の実をたくさん見つけていましたが、他の生きものもいろいろと見つけて楽しそうでした。土の中で見つけた幼虫を手にしてはしゃいだり、向こう岸にいる猫に呼びかけてみんなで盛り上がっていたり、ヤモリを2匹捕まえたと言って自慢げに見せてくれたり。先生が説明しようとすると子どもがいないなんていうこともあったようですが、あまりうるさく言わずに楽しく公民館まで行けたのはよかったと思います。

高槻先生は「木は100歳でも200歳でも子どもを産む」とドングリの説明をされ、なるほどと思いました。植物は人間とは違った生き方をしていて、すごい能力をもっていると感じます。黒い実は人間の目には地味で目立たなくても鳥には見つけやすい色で、そのため赤だけでなく黒い実も多いというお話もなるほどと思いました。ゴンズイの実は赤と黒で、すごく見つけやすいのでしょうか。

 ムラサキシキブの実はきれいな紫色をしていて、とくに黄色い葉っぱが残っているとコントラストが鮮やかでとても魅力的に見えました。美しいな~とぼんやり眺めていて、あ!と思いました。今読んでいる『植物と叡智の守り人』(ロビン・ウォール・キマラー著)という本の中に「アスターとセイタカアワダチソウ」という話があり、その色の組み合わせと同じだったのです。ネイティブアメリカンの著者が大学の森林学部の導入面接で「どうして植物学を学びたいんだい?」と訊かれ、「植物学を選んだのは、アスターとセイタカアワダチソウを一緒にするとどうしてあんなに美しいかが知りたいからだ」と答えると、指導教官は「それは科学的じゃないよ。植物学者はそんなことには興味がない。美について学びたいなら美大に行くべきだね」と言います。でも、後に著者はこの二つの花の色、紫と黄色は補色で、互いに引き立て合う関係にあり、人間だけでなくミツバチの目にも似たように見えることを知ります。つまり一緒に生えていることでミツバチ(受粉者)を惹きつけるとしたら、科学的な疑問と言えるのではないか?と思うのです。紫と黄色の組み合わせは鳥も惹きつけるのでしょうか。鳥や虫の目にはどう見えるのかという視点も面白いですね。

 アオギリの果実が、くるくると空高く上昇していった光景は忘れられません。やじろべえの工作は懐かしく、カラスウリの種を出してみたり、シカの角を頭につけてみたり、盛りだくさんの内容でした。子どもによって興味のあるものが違うでしょうから、何かひとつでも惹きつけられるものがあったらいいなと思います。そこから興味を広げていけるような、心の種まきになっていたら素敵ですね。楽しい時間をみなさんと一緒に過ごさせていただきました。ありがとうございました。
(ムラサキシキブは葉が落ちてきていて、あまりよくとれていませんが、一応写真を添付します。)



坂本有加
 事前のスタッフ連絡の中で、木の実を採ったことのない子供もいるはずということが書いてありました。そうなの?と考えてみれば、私も草の実とか木の実を気にして採るようになったのは大学生になってからでした。「採り方を教えた方がいいのかな?」とも思いましたが、玉川上水では子供たちはナンテンやムラサキシキブなどをプチプチと外して、こぼさないようにチャック袋に入れていたし、ドングリを拾うときは穴の開いていないものを選りすぐっていて、慣れているようだったので、採り方は教えなくても大丈夫そうでした。
 後で気付いたのは、− 玉川上水には無いかと思いますが−ウルシなど触ってはいけないもの、とげのあるもの、季節によっては毒のある虫に気を付けないといけないでしょうから、そちらに注意して見守ることで、これは私の次の課題となりました。そして私だったら、「外で摘んだこの実は食べてもいいのかな?」といつも考えます。子供たちは普段そんなことは考えないようで、その場で食べようとする子はいませんでした。
公民館の教室では、前もって採集しておいた木の実たちも並べられました。高槻先生から、「この実は食べてもいいよ。」と私が多めに持って行ったフユイチゴの紹介があると、早速おいしそうに食べる子供たち。それも何度も取りに行く女の子を見て、「持ってきてよかった!」と思いました。きっと初めての経験となったでしょうし、これからは野イチゴを見つけたら素通りはできないと思います。「しめしめ」。でも食べるのは大人に確認してからにしてほしいです。
 実からタネを取り出して数を数えるときに、子供同士がピンセットを巡ってケンカしていたので、止めに入りました。ピンセットは先が尖っていて危ないので、「やめなさい」と私が子供の手から取り上げた形になりました。スタッフとしてしたことといえばそれだけですが、よその子供に注意するという普段ないことをして緊張したのと、何より二人の手が温かかったことが、今回いちばん印象に残っています。最近は体温と聞くと、検温や発熱の方に考えが向きますが、ほんとうは人は体温があって当たり前で、元気な証拠なんだということを再認識しました。
 公民館でのアオギリパフォーマンスとても面白くて、アオギリの羽根(実とタネ)がまさか上に飛んでいくとは思わなかったのでびっくりしました。後日、麻布大学に行く機会があったので、私も高槻先生と同じアオギリの木から拾ってきました。
 全体を通して、子供たちが楽しそうにしていることと、子供たちと同じくらいお父さん、お母さんたちも楽しんでいることが嬉しかったです。お父さん、お母さんたちは子供たちよりも興味があって、採集やメモに夢中になっていたかもしれません。大人が楽しそうにしていると、子供にも伝わるのだと思います。

豊口信行
今日はありがとうございました。
天気に恵まれ、事故もなく、アオギリが空の彼方へと吸い込まれていく様を目撃することができ、楽しい一日となりました。

長﨑 薫
観察会では子供たちの果実を見つける速さに驚きました。走り回っているだけかと思いきや、戻ってきたときにはチャック袋にたくさんの種が入っていました。自分も探していたのですが、だいたい先を越されてしまい、子供たちの探索眼には脱帽でした。
 また、集合場所から公民館までの短い道のりで思っていた以上に多くの種類の果実が集まったことにも驚きました。都市部の中の一部に玉川上水のような環境が残されていることで生育できる植物が多くあるのだと気づきました。開発等を行うとしても、元ある自然環境を少しでも残すことが重要であると感じました。
 室内での作業で印象に残っているのはアオギリの種子が風に乗って揚がっていったことです。自分以外にも多くの参加者の方々が印象に残っているのではないでしょうか。ゆっくり落ちることは想像していましたが、上がっていくのは予想外の出来事でした。風に乗って種子を飛ばせるとはいえ、下に落ちるだけではそこまで遠くまでは飛ばないと思っていましたが、上に揚がることで数キロ離れた地にも生息地を広げられる可能性を感じました。
 ドングリを使った工作も非常に良い経験になりました。自分が子供のころには近くにドングリの生る木があったので、ドングリごまやヤジロベイを造って遊んでいましたが、都会に住む子にとっては当たり前ではない体験になるのだと知ることができました。今後、都会の子供と遊ぶ機会があれば一緒に作ってみたいと思います。
 フユイチゴやカマツカを食べている子もいました。フユイチゴは採取の際に一口食べたのですが、野生の植物がこんなにも美味しいのか!と驚きました。人間にとっても美味しい果実ばかりではないですが、目立つ色で美味しくなることにより動物に食べてもらうことで、種を運ぶことを実感できたように思えます。
 最後に部屋を出る際に「マンリョウ落ちてたよ」といって拾ってきてくれた子がいました。自分の目には先生の話はそこまで聞いていないように見えていましたが、ちゃんと名前を覚えて帰ってくれる子がいることに感心しました。自分も仕事で小学生相手に解説するときには聞いていない様で実はしっかりと吸収している子もいることを考えながら話したいと思います。

藤本 優
先日は観察会に参加させて頂きありがとうございました。
私自身もたくさん勉強させて頂きました。
特に黒い実の意味に納得しました。ついつい自分の見え方だけで物を見てしまいますが、もう少し違った視点で考えてみたいと思います。

外での活動では、子どもたちがどんどん木の実を見つけるので、こんなにいろんな実があるのか、と驚きました。子どもの目ってすごいですね。そして元気ですね。
他の子より早く木の実を見つけたくてどんどん走って行っちゃうのですね。
私にも覚えはありますが、私のお母さんはどうやって私を止めていたのだろうと思いながら追いかけていました。

途中、先に行っちゃう子に、「先生の話きこうよ」と言ってみたら、「もういい」と言っていました。「それよりシジュウカラがいっぱいいる!」と言ってきたので、(よくシジュウカラ知ってるなぁと思いつつ)「鳥の方が好き?」と聞いてみました。すると「うん!」。
そこで、「シジュウカラも木の実食べてるんだよ?何食べてるか気にならない?」って言ってみたら、「気になる…」と言って先生のところに走っていきました。
あ、素直だな、と思いました。
子どもって、自分の気持ちとか興味に本当に素直なのですね。もっと関心を引けるように子どもと話せるようになりたいです。

スタッフとして疑問に感じたことがあります。
子供にやっていいことといけないことの基準が不徹底でした。
例えば、「柵を越えちゃいけない」はみんなわかりましたが、「柵を上っていいのか」がわかりませんでした。みんなと離れて上る子を、止めるべきが止めないべきが迷いました。
散歩やランニングの方が沢山いたので、観察会を見て迷惑に思うのではなく、微笑ましく見物してもらえるように開催できるといいな、と思います。

全体としては、子どもたちが本当に楽しそうだったので、良い会だなと感じました。
ありがとうございました。

リー智子
 今回の観察会だけではなく、高槻先生と一緒に木の実草の実を探すということを始めてから、玉川上水にこれほど多様な実がなっているのだということを知り、とても驚いています。こどもたち、お母さんたちにも知ってほしいという願いが、今回の観察会になりました。
 普段歩いているだけでは、これほどまでに多様な植物がここにあるということに気がつく人は少ないと思います。実は小さく赤いものが多いのですが、割ってみると中身はそれぞれ違います。色も、朱、深いえんじ、紫がかったもの、青、くろ、茶色様々で、時には水色から青、紫に変化していくものもあり、本当に綺麗です。歩きながらみんなで探して回るのはとても楽しそうでした。こどもたちはいつも玉川上水を散策しているのに、これほどの実が見つかることに面白さを覚えたのか、先へ先へと探しにいってしまいます。フィールドでの時間はあっという間にすぎてしまいました。 
 室内での、体験を通じた解説も、遊びを通じて大事なことを学ぶという工夫に感心しました。詳しくは先生が報告にまとめられていますが、大人も勉強になる会だと私はとても満足な気持ちでした。
 これは特別な不思議体験でしたが、高槻先生の実験で、アオギリの実がおちてこなくなったことです。同じ場所でくるくるまわっていて、そのうち舞い上がり始め、ゆっくりゆっくりと高く舞い上がり空に消えてしまいました。その日は無風だとおもったのですが、わずかな上昇気流があったのかもしれないです。こんなに不思議な体験を、こんなに身近でできるんだなと思いました。
 高槻先生の観察会は、いつも学ぶことが多く、今度はどんな工夫があるのかなと毎回楽しみです。


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木の実 草の実 たねしらべ

2020-12-06 21:20:57 | 観察会
木の実 草の実 たねしらべ(2020.12/6)作成中

感想 スタッフ こちら
感想 保護者 こちら
かんそう こども こちら



前の日が小雨の寒い日だったので、天気が気になっていましたが、予報では晴れとのことでした。実際、当日は朝は少し寒かったのですが、良い天気で、子供たちは元気に動き回っていました。
 9時過ぎにスッタフは集まり、9時半には子供たちも集まりました。主催者のリーさんから挨拶があり、玉川上水に移動しました。

 初めに、散歩をする人も多いから、人がきたら道をあけるように説明しました。


それから
「みんなポケットはあるかな?」
「ある」
「3つある」
などと答えが返ってきました。
「では今からこういう袋を一人5枚配るからね」
と言ってジップ式のポリ袋を配りました。
「これはこうして開けるんだよ。そうして木の実を入れたらこうしてぎゅうとすると、もう落ちないから、それをポケットに入れてね」

実は今年は果実が少ないので、子供たちにどれだけ紹介できるか心配でした。それで少し長めに歩いて果実を見る確率を高くしようと思っていました。ところが、歩き始めてすぐに、ネズミモチを、もう少し行くとナンテンを見つける子がいて、驚きもし、安心もしました。子供たちは喜んで先に先にと進んで、マユミ、マサキ、ムサラキシキブ、イヌツゲと次々に見つけてくれました。



 日差しが良くて、コナラの黄葉に光が当たってきれいでした。そこで記念撮影をすることにしましたが、たまたまその木がナラ枯れをしていました。



 しばらく行くとコナラの若木がまとまってあったので、説明をしました。
「人のお母さんは二十代くらいから子供を産んで、そうですね50歳くらいまで産むでしょうか。でも木は100歳でも200歳でもずっと実をつけます。実は木の赤ちゃんです。その赤ちゃんが芽を出してこういうふうにたくさん生えてきます。これがずっと大きくなって高い木になるわけです。でも大きな木にまでなるのは少しだけで、多くのものは途中で死んでいきます」


「ここにはコナラのどんぐりがたくさんあるので、一人が5個拾ってください。できるだけ大きいのと小さいのを拾ってね」


「たかつき先生、これなんですか?」
と植物にくわしいとうわ君がいろいろ聞いてきました。コマユミ、ヘクソカズラ、センニンソウなどでした。それから
「先生、オニドコロがありました」
と大人顔負けの発言もしていました。
 
鷹野橋でアオキの果実を説明

イヌツゲ

ノイバラ

ムラサキシキブ

ヤブラン

ゴンズイ

コマユミ

カマツカ

ナンテン

ネズミモチ

 木の実が多かったのですが、ウサギ橋のところにヤブランの黒い果実が少し残っていました。

ヤブランの果実をとる

そんな調子で歩いていたらリーさんが焦ったように
「公民館での時間がなくなるから、そろそろまっすぐ歩きましょう」
「今、何時?」
「10時半」
「おや、もう1時間もたっちゃったのか!?」
まだ見せたいポイントもあったのですが、少し急ぐことにしました。子供たちは仲良くなって一緒に走ったりしていました。保護者の皆さんは子供に解説を聞かせたかったようですが、野外に出た子供はそうはいきません。一緒にいることが嬉しくて仕方ないようでした。

 津田公民館の部屋は広めの和室でした。もう11時になっており、時間が1時間しかないのですぐに説明を始めました。まず天秤ばかりです。これは針金を「へ」の字型にし、両端に紙コップをぶら下げるものです。中央部分は木の棒の先に打った釘に架けました。そしてその棒は木箱にテープで固定しました。
「左のコップにドングリを1個入れてみて」
子供たちはそうしました。


「左が下がったよね。重い方が下がるんだよ」
「そうしたら次に左側に大きいドングリを2個、右側に小さいドングリを3個入れてみて」
子供たちは自分の秤にドングリを入れて傾きを見ていました。
 今は学校の理科の時間でも家庭でも電子ばかりを使うようになったので、重さとは電子ばかりに載せて測るものだと思っているので、重さの原理を知ってもらいたいと思いました。重い方が下になるという当たり前のことを体験することが大事だと思います。

「さて、次はやじろべえを作ります」
「やじろべえってなあに?」
「やじろべえはね、今説明するよ。初めに穴を開けたドングリがあるから、これに竹串をつけます。それからドングリにキリで穴を開けて、竹串のはじを差し込みます。これを右と左につけると、ほら、ブラブラと動くね。これがやじろべえ。みんなも作って」
「でもね、これがキリで、先が尖っているからね」
と言って頬に当てました。
「刺さると大変だから、気をつけてね」

ドングリに穴を開ける(撮影、石橋)

ドングリに穴を開ける


これに20分くらいかけました。うまくできたようでした。

やじろべえができた(撮影 石橋)


会場の様子

 ホワイトボードに樹木から落ちるドングリ、赤い実をつける低木を描いて、親植物が果実を作り、動物が運んで種子を運ぶという話をし、
「こういうふうに植物はタネを広げようとします。動物を使う植物もあるけど、風を使う植物もあるんだよ。今日はその代表のアオギリという植物の果実を紹介するね」
と言って部屋の外にある狭い庭のようなところに出ました。
 アオギリの果実はとても変わっていて、大きな中華料理のスプーン(蓮華)のような形をしています。その付け根のほうに数個の種子がついています。これが空中に放たれると重さで付け根の方が下になって落ちていきますが、先端部が広く上に凸にカーブしているので空気を孕んで空気抵抗で止まろうとします。種子は片側が重いので落ちようとする力と左右のバランスのズレで回転が生じます。

アオギリの果実


アオギリ果実が回転する原理

 捕虫網用の金属のつぎ棒(釣り竿みたいなもの)の先にタッパーの箱をつけた道具を使って、アオギリの果実が回転しながら落ちる様子を見る実験をする事にしました。つぎ棒は高いところから落とすためで、さらに高くするために私が脚立の上に乗りました。棒を掲げると高さ3メートル以上になりました。

アオギリの果実を飛ばす実験

そこからアオギリの果実を落とすとクルクルと回って漂うようでした。皆さんから歓声が上がりました。

「あ、飛んでる」

「ではもう一つやってみよう」
もう一つを落としたら、驚いたことにその高さで回転して下に降りるようすがありません。それどころか、しばらく旋回してから逆に上に昇って行くではありませんか。徐々に高さを増して5、6メートルのところをゆっくりと回転して公民館の建物のほうにきました。これには驚きました。
「すっげー!」
「マジックだ!」
と子供たちは大喜び
「みんなにもアオギリをお土産にあげるからね」
「やったー!」


それからもう一度部屋に戻って最後の話をしました。センリョウを示しながら
「今日、いろいろな実があったけど、赤いのが多かったでしょう。なんでかなア」
と言ってクリアファイルに赤い丸いシールを貼ったものを見せました。その背後に手持ちのホワイトボードの裏側のコルクの面を置きました。
「これだけと目立たないけど、こうしたらどうかな」
とホワイトボードに緑色の葉を貼り付けたものを背後に置くと、目立って見えました。

 

「私たちが見ても緑の葉に赤い実があるのはきれいです。だからナンテンやマンリョウは正月の床の間に飾ったりします。これはいかにも日本の伝統的習慣に思えます。でもこれはヨーロッパでも同じで、クリスマスには緑の木に赤い飾りをつけて、緑と赤をクリスマス・カラーと言ったりします」
とこれは大人向けに話しました。
「ただ、木の実は人のために赤いわけではなく、自分の種子を取りに運ばせるための仕掛けなわけです。確かに緑の中の赤い実は目立ちます*。でも、イヌツゲやネズミモチのように黒い実もけっこうありました。黒は人の目には目立つようには見えませんが、研究によれば鳥の目は感じる波長が違って黒も目立つんだそうです。だから植物は鳥に向かってアピールしてるんですね」

* この文章の最後に、赤い実を集めてみました。
「ナンテンみたいに赤くて小さい実が多かったけど、花はいろいろです。大きいのもあれば、小さいものもあり、形もさまざまです。それは系統が違うからで、それでも同じようになるのは、それが有利だからと考えられています」
「今日はいろいろな果実を集めたけど、そのほかにもスタッフの人が色々集めてくれたので、あちらの机の上におきました。どれでもいいから選んで、実の中にどういうタネが何個入っているか調べてみて」
と言ってピンセットを配りました。
 しばらく作業をしていましたが、カラスウリの7個から11個までとか、ジャノヒゲの1個とかいろいろな結果がありました。

カラスウリの種子を数える

その間にカマツカの実をかじってもらって、リンゴのような香りがするのを体験してもらおうとしたのですが「まずい」という子がいたので、食べない子の方が多くてこれはうまくいきませんでした。多分いまの子供は飴とかお菓子しか食べないので、「不純物を含んだ」味というのを知らないからそういう味は「まずい」と感じるのだと思います。

 
手作りの箱に入れた果実(撮影 高槻/ 石橋)

 時間がなくなってきたので、忘れていたサプライズを紹介しました。
「あのね、先生はシカの研究をしているんだ。それで今日の内容とは関係ないんだけど特別にシカの角を持ってきました」
と言って頭に1対の角を掲げて
「みなさんこんにちは」
とお辞儀をしました。


「うわ、すごい!」
と大人からも歓声が上がりました。
「これが春になるとポロリと落ちて、またニョキニョキと伸びるんだよ。不思議だよね。さっきのアオギリの果実がクルクル回ったとき<マジックみたい>と言ってる子がいたけど、シカの角も不思議なもので、自然界にはたくさんの不思議なことがあるんだよ」



 時間が押してきて11時55分になったので、片付けをすることにしました。感想文を書いてもらい、果実をお土産にしてもらって解散としました。
 
 野外で果実を採集し、遊びながら学ぶという狙いからすれば、まずまずのものになったように思います。ただ慌ただしくてやや消化不良気味になったのは反省点でした。この観察会が子供たちにどのくらいのものを残したかはわかりませんが、植物っておもしろいなと感じてくれれば嬉しいことです。

 準備をされたリー智子さん、協力いただいたスタッフの皆様*にお礼申し上げます。多くの写真は豊口信行さんの撮影です。ありがとうございました。

*スタッフ:足達千恵子、豊口信行、平沼みなみ、坂本有加、長崎 薫、伴かなこ、藤本 優、山岡信貴

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玉川上水以外の場所で採集したものも含め、赤い実とその種子を並べてみました。


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