玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

1月の観察会

2020-01-12 20:29:55 | 観察会
1週間前の天気予報では降水確率60%だったので観察会は無理かなと思っていたのですが、3日前には30%になりました。場合によってはできるかもしれませんが、今回は一年で最も花も果実のない時なので、スケッチをすることにしました。そうなると歩かないので、小雨決行はちょっと現実味がありません。延期にすることになるかもしれないと思っていました。ところが昨日になると天気予報によっては5%というものもあり、希望をつなぎました。今朝6時半くらいに見ると0%になっており、空を見ると明るい感じでしたので、できると判断してブログにそのことを書きました。

 今回は参加者が少なく、笹川さん、大西夫妻と小太刀さん、それと豊口さんの私を入れて5人でした。
 鷹野橋から上流に向かい、創価高校のあるあたりを歩きました。ナツグミの葉裏の星状毛を実体顕微鏡で観察したりしました。そのほかにはこれといって説明することもなかったのですが、常緑樹が目立ったので次のような話をしました。

 「見ると林の上にある木はコナラやイヌシデのように落葉のものばかりですが、下にはアオキ、マサキ、イヌツゲ、シロダモ、ヤツデ、ネズミモチなど常緑のものがたくさんあります。落葉するということは、葉をつけているよりも落としている方が都合がいいということです。葉は光合成をするのが最大の役割です。同時に呼吸をしますし、蒸散もします。低温や乾燥は光合成にマイナスです。光合成をしないで、呼吸をすると植物には「赤字」になります。地球が温暖多湿だった時代には植物は常緑でしたが、寒冷化すると季節が生じ、この「マイナス季節」が生まれました。これに対する適応が落葉で、危険な時期を休眠することでやり過ごすわけです。この林ではやはり樹冠は風もあるし、気温も低くなるので、落葉しないといけないのだと思います。林の下の方はそれが緩和されるということでしょう。常緑樹には低木や亜高木が多いですが、中にはシラカシ、タブノキ、ネズミモチなど高木になる木もあります。雑木林は30年くらいの間隔で伐採されたので速く成長できる木が多かったので、ナラやシデが多かったのですが、この半世紀は燃料革命で伐採をしなくなりました。そのために雑木林で常緑樹が増えています。今の所は林の下の方にありますが、徐々に高木層にも入っていくと予想されています。現状でも雑木林にいる鳥の種類が変わってウグイスのような藪を好む鳥が多くなっているそうです」


玉川上水では下の方に常緑樹が多い


 果実は少なかったのですが、目についたのはノイバラ、キヅタ、ネズミモチくらいで、ついこの前まで付いていたムラサキシキブ、ナンテンなどは無くなっていました。マユミはピンクの果皮はありましたが、種子はほとんどなくなっていました。ゴンズイはわずかに残っていました。


ノイバラ


ネズミモチ


キヅタ


マユミ


 上水公園に着いたので、落ち葉を拾ってスケッチをすることにしました。コナラ、クヌギ、ケヤキはたくさんありましたが、木はたくさんあるのにイヌシデの葉はなかなか見つかりませんでした。ベンチに座ってスケッチをしてもらうことにしました。


小太刀さんと笹川さん


高槻と大西さん


 全体の形、縁の鋸歯の形、葉脈の状態など、普段はあまりよく見ないところも、スケッチをしてみるとよく観察します。イヌシデは二重鋸歯なので描こうとするとなかなか大変でした。



 皆さんの作品も見せてもらいましたが、どれもそれぞれの特徴を捉えていて、「これは何の葉だかわからない」というものはありませんでした。

 「スケッチだと目に見えるレベルしか見えないけど、それでも葉脈があるのがわかるし、スケッチには描かないでも、その間にさらに細かい網目模様の葉脈があるのがわかります。考えてみると、この1枚の葉の中に東京の人口の何倍だか何十倍だか知らない数の細胞があって、その細胞の中で葉緑素が光合成をしているわけです。その生産物を運ぶために葉脈があって、その目に見えない細い葉脈が合流して少し太い葉脈になり、それが合流して、もう少し太い葉脈へと、次々と合流して目に見えるような太い葉脈に集まってそれがこの軸に集まって葉から枝に流れるわけです。枝にはこういう葉がたくさん付いていて、それぞれから合成物が流れて枝を遡っていきます。
 あっちを見てください。たくさんの樹木がありますが、枝があり、小枝がありますが、小さな沢が集まって川になり、大河に注ぐのと同じことがあの1本1ほんの木で起きているわけです。これはすごいシステムです。今、たとえた川もそうですし、人の血管なども同じです」

 時間も経ったので、いこい橋を渡って玉川上水の南側を鷹野橋に向かって歩くことにしました。センニンソウやキヅタを観察しました。大西さんのご主人は樹木に詳しいようですが、話をすると、何にでも興味があるようで、名前を覚えて終わりではなく、生き物のいきている様子や巧みさを知るのが楽しいと語っておられました。そんな話をしていたら
「あ、いた」
というので木の幹を見ると、白と黒の幼虫のようなものがいました。持参したファイルの写真を見ながら
「チャバネフユエダシャクのメスです」
とのことでした。羽が全く退化していて、フェロモンを出してオスを誘き寄せるというのは本で知っていましたが、見たのは初めてでした。


チャバネフユエダシャクのメス


エダシャクを覗く



 歩いているうちに薄日だった太陽も雲に隠され、肌寒くなりました。それでも雨は降らず、私の「天気男」はなんとかメンツを保つことができたようです。
 今回も豊口さんに写真の協力をいただきました。ありがとうございました。

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